2019年9月20日金曜日

一昨年にあった多核種除去設備(ALPS)の不具合を、今でもあるように騒ぎ立てる前に

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福島第一原発の災害・事故処理で生じた大量に蓄積されたトリチウム水の海洋投棄を巡って色々と議論があるのだが、多核種除去設備(ALPS)がトリチウム以外の核種を取りきれていないと疑惑がネット界隈で拡散している。だいたい放射脳と揶揄される類のいつもの反原発派が声を大きくしているのだが、吹聴する前に事実誤認が無いか、そして目標と整合的な主張なのかよく考えて見て欲しい。

2019年9月19日木曜日

国民経済計算(SNA)至上主義者は一度は読むべき『GDP―〈小さくて大きな数字〉の歴史』

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パフォーマンス評価の測定基準は基準ごとの癖があるのだが、普及すると指標として乱用されてしまう傾向がある。国民経済計算(SNA)の中の一つGDPも例外ではなく、GDP成長率が国政の重要な評価基準のように扱われている。しかし、一般に思われているほど完璧なツールではないし、経済構造の変化により問題点の影響が大きくなってきている。ダイアン・コイルの『GDP―〈小さくて大きな数字〉の歴史』は、SNAの歴史を振り返った上で、このようなGDPの性質と問題点について説明してくれる本だ。

2019年9月13日金曜日

無理な理屈を使っても日本統治は悪く言いたい『植民地朝鮮と日本』

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韓国併合後の日本の朝鮮統治について知るための文献としては、木村光彦『日本統治下の朝鮮』と趙景達『植民地朝鮮と日本』をあわせて紹介していることが多い。前者は以前に拝読した*1ので、社会学者など左派の人々が好んでいるらしい後者を確認してみた。マルクス史観どっぷりと言うわけでもないが、意地でも大日本帝国を悪く書かないといけないと言う教条主義に取り付かれた本であった。

2019年9月7日土曜日

日刊ゲンダイの財務省“インチキ統計”記事に関して

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日刊ゲンダイが「財務省また“インチキ統計” 計算方法変更で設備投資「増」」と言う記事で、法人企業統計の設備投資の推移に関して「コッソリと統計手法を変更して、「うまくいっている」ように見せ」ていると財務省、安倍政権を批判している。しかし、この記事を書いた記者、急いでネタを探していて、資料を空目したのでは無いであろうか。

韓国政府、韓国国民へのメッセージは具体的かつ明確に

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韓国の文在寅大統領がASEAN訪問で各国に協力を求めると言い出し、韓国の康京和外相がBBCのHARDtalkと言う番組に出演したり、文在寅大統領の政策ブレーンとして知られる延世大学の金基正教授がThe National Interestと言う雑誌に寄稿*1したりと、日韓関係の悪化に関して韓国首脳は自己正当化に余念が無い。さらには福島第一原発のトリチウムを含む処理水の投棄や旭日旗の問題など次々に話題をつくってくれるわけだが、おかげでちょっと困ったことなっている。皆さん、日本政府の主張が何であったか覚えているであろうか?

2019年8月29日木曜日

偉い人にぜひ読んで欲しい『測りすぎ—なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』

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人事にしろ投資にしろパフォーマンスは評価せざるをえないし、客観的に見える測定基準の指標に頼ってしまうのが世の常だ。しかし、往々にして指標をつくるためには時間も労力がかかるし、指標を報酬や罰則に連動させると評価される方は組織の目標と乖離した結果になっても指標にあわせて行動を最適化しだす傾向がある。

2019年8月25日日曜日

フェミニストの江原由美子さん、指標の大小の意味はよく確認しましょう

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横浜国立大学の江原由美子氏が、「フェミニストの私は「男の生きづらさ」問題をどう考えるか」と言うエッセイの3ページ目で、「日本では男性よりも女性のほうが、幸福度が高い」ことを、男女共同参画局の調査レポートにある生活満足度の集計値*1では男性の方が指標が高いことから、信憑性が低いと主張している。確かに、男性の方が指標が高い。しかし、これ、(すもも氏のツイートの請け売りなのだが)指標が低い方が生活満足度が高くなっているので、調査結果の読み間違いである。

2019年8月24日土曜日

『ヒトラーとナチ・ドイツ』を読んで、ヒトラーの出世街道を確認しよう

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国際政治史が専門の板橋拓己氏が、ヒトラーとナチについては知りたい人々向けに、石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』とリチャード・ベッセル『ナチスの戦争1918-1949 - 民族と人種の戦い』を推奨していた。ナチス・ドイツ好きでは無いのだが、色々な人が言及したがるドイツ史なので、常識的なことは知っておきたい。『ナチスの戦争』は以前、拝読したことがある*1ので、『ヒトラーとナチ・ドイツ』をざっと拝読してみた。

2019年8月23日金曜日

どこに行きたいのか文在寅

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対日批判を続けてきた韓国の文在寅大統領だが、2019年8月15日の光復節のスピーチではそれをトーンダウンさせ、日本が対話を望めば「喜んで手を結ぶ」 と柔軟な態度を見せた。しかし、日韓請求権協定に規定された、日韓で協定解釈が異なったときの対話手段である仲裁委員会の設置については拒絶し続けているし、日本国民を挑発するかのように、福島第一原発の災害・事故から8年以上経った今頃になって、日本産食品の放射線検査強化をはじめたり*1、韓国も海洋投棄を行っているトリチウムの廃棄に関して日本政府に説明を求めだしている*2。昨日はとうとう、GSOMIAの破棄を決定した。文在寅政権は、一体どうしたいのであろうか?

2019年8月18日日曜日

社会学者の卵の古谷有希子さんの日韓関係への認識について

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社会学者の卵の古谷有希子氏が「日韓関係の悪化は長期的には日本の敗北で終わる」と言うエッセイを書いていて、色々とツッコミどころがあるのではてなブックマークのコメントが賑わっている。既出な問題な気もするが、大きな無理解が4つあるようなので指摘しておきたい。

2019年8月17日土曜日

徴用工問題で日本は韓国に落としどころを示しているハズ

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荻上チキ氏のラジオ番組*1で、朝鮮半島を専門とする政治学者の木村幹氏がインタビューを受けていて拝聴した。社会学畑の荻上チキ氏が振り回す日本人の植民地主義が日韓の軋轢を生み出したかのような話を、木村幹氏が日本人の植民地主義を否定し、日本側は変わっていないのだから韓国が原因で発生した問題とやんわりと全面否定していて面白い。しかし、木村幹氏の説明にも、ちょっと謎なところがある。

2019年8月14日水曜日

日韓外交の専門家は、もっと安倍政権を褒めるべき

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韓国に限らず地域研究全般に言える事だとは思うが、韓国政治の研究者は日韓の相互理解を深めて日韓関係を良好に維持したいと願っているもので、日韓の軋轢に対して否定的な感情を抱いてしまい、直観的にネガティブな評価を下し、日本政府に対して穏便な対応を求めてしまう。ネット界隈で知名度のある木村幹氏も浅羽祐樹氏もその例外ではないようだ。

2019年8月12日月曜日

小泉進次郎衆院議員、政府の役職につくまで国会質問はして来ていますよ

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Twitterで小泉進次郎衆院議員が10年間の議員生活で一度も国会で質問を行っていないと言う噂が駆け抜けた*1のだが、国会会議録検索システムで確認したところ、野党時代も与党時代も国会質問をしていたのでガセであった。内閣府大臣政務官と言う謎の役職についてからは、政府側の人間になるので政府に議員としては質問していないと思うが、代わりに両院に呼び出されてあれこれ発言をしている。忙しい方では無いであろうか。

2019年8月4日日曜日

開催側の配慮の足りなさ、根性の無さが伝わる「表現の不自由展・その後」

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国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の中の「表現の不自由展・その後」の一部の展示物が物議を醸し、開催側の愛知県知事の大村秀章氏と芸術監督の津田大介氏が中止を決定する事態に至った*1。そして一部の展示中止を求めていた河村たかし市長が関係者に謝罪を要求している*2のだが…この芸術祭の運営会議・会長代理は誰であったか忘れてしまったのであろうか。

2019年8月3日土曜日

求められる査読付き新書レーベル

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文学者/エッセイストの池内紀氏の『ヒトラーの時代』の記述に多くの誤りがあると歴史研究者から指摘されており*1、特にある章は正誤表での訂正が困難なレベルであるそうだ。歴史を題材にした文学者の随筆だと捉えればよい気もするのだが*2、良質の歴史書が並ぶ中公新書が出してしまったので失望が大きい。中央公論新社が既刊への批判をどう処理するかが注目されるが、もう少し制度的に製作過程を改善すべきかも知れない。

2019年8月2日金曜日

申叔舟「願わくは国家、日本と和を失うことなかれ」文在寅「協定や合意は守ってやらないし、日本側の要請では対話してこなかったが、全責任は日本にある」

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李氏朝鮮の時代、『海東諸国紀』を記した申叔舟は「願わくは国家、日本と和を失うことなかれ」と成宗に残したとされる(邦訳版後書き;p.409)のだが、朝鮮半島では伝統的に地続きの中国によった外交が展開され、対日関係は後回しにされがちだ。

2019年7月28日日曜日

女性の性感染症の増減と雇用環境に相関があるように見えるグラフは、統計を使った嘘だから!

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マルクス経済学者の松尾匡氏の『不況は人災です!』の図1-3(p.35)をひいて、本の一節のコピペな気もするが、「雇用状況が悪くなると、性的なサービスによってお金を得る女の人が増え、雇用状況がよくなると減るということを表しているのではないでしょうか」と主張するツイートが注目を浴びていた。いや、それ、『統計でウソをつく法』の典型例だから!

ワクチン忌避は集合行為問題ではないよ

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哲学者のジョセフ・ヒースが「ワクチン接種は集合行為問題だ」と言い出して、それを真に受けているような人がいたのだが、この議論においてはヒースさんの勘はよく働いていない。実際のワクチン接種の集団免疫効果はそれに依存できるほど高いものではないし、反ワクチン派の振る舞いは集合行為問題からは説明し難いから、安易に合理的な人々によるフリーライダー問題だと結論を出すべきではない。

2019年7月27日土曜日

ジェンダー社会学者の皆様、無根拠・無条件にDV防止法の保護命令は役に立たないと言うのは、DV被害者の利益にならないですよ

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社会学者の千田有紀氏が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)にある、加害者が被害者への接近を禁じる「保護命令なんて、なかなかなかなか出ませんよね」と主張し、「保護命令の申立ての約8割、取下げを除けば9割以上が認容されている」から事実誤認だと批判され、「保護命令のハードルは高く、却下されたときのリスクを考えて、みんな申請を控えている」「保護命令自体が、加害者を刺激する割に使い出がない」と反論している。千田氏の主張は根拠やそれが当てはまる条件が明示されておらず*1本当は保護適当なのにDV被害者にその申請を躊躇わせる可能性があるのだが、弱者女性の不利益になる可能性について考慮されているのであろうか。

2019年7月26日金曜日

野党もそこそこ普通にできた第25回参院選挙

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目だった争点がなく投票率が低くなった2019年7月21日の第25回参院選挙は、野党が良い意味で平常に戻ったことが分かる選挙でった。建前に拘らず、現実を見据えた展開ができた。レベルの低い基準ではあるが、小池—前原の希望の党騒動の結末を考えれば効果が確認されていることを実施するだけでも上出来だ*1。議席数が少ないと政党に所属する政治家の経験値が増えず、組織としてジリ貧になってしまう現実を考えれば、小手先技でも議席数を確保するのはとても大事である。

2019年7月22日月曜日

『社会学はどこから来てどこへ行くのか』の計量分析への言及について

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対談をまとめたもので語弊はやむを得ない気もするが、ネット界隈でよく見かける社会学者4名の対談本『社会学はどこから来てどこへ行くのか』にある計量分析への言及について、これを読む社会学徒に信じて欲しくない点を記しておきたい。なお、本の主題としては今後の社会学研究をどうやっていくかのような話であり、本題の社会学に関する部分は社会学徒が批判を加えている*1

2019年7月20日土曜日

北田暁大さん、山岡重行『腐女子の心理学2』はオーソドックスに分析していますよ

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社会心理学者の山岡重行氏の『腐女子の心理学2』(以下、山岡本)の統計解析について、社会学者の北田暁大氏が色々と批判している*1のだが、地に足が着かない批判になっている。山岡本を流し読みだが確認してみたのだが、後半の統計概念の説明に難が無いわけではないが、山岡氏の分析手順はオーソドックスな範囲のものであり、大きな問題がある部分は見当たらない*2。利用した分析手法で言える範囲のことしか言っておらず、大きな問題だと主張するのは無理である。そもそもこの手の実証研究は分野ごとの慣習に習うものなので、下手に難癖をつけてもなかなか的を得た批判にはならない。

2019年7月14日日曜日

「大韓民国向け輸出管理の運用の見直し」は警告、そして日本政府は次の手を打つことになる

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大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて、日韓のメディアが大きく報じている。建前は韓国の貿易管理体制や日本との連絡体制の機能不全への不信であり、本音は韓国が日韓の合意を遵守しないことへの不信と言うことになるのは明白で、実際問題、韓国側に本音を理解してもらいたい官邸の計算が見える。日韓の合意事項を守らない韓国に、何らかの措置をとるかもよと言うメッセージを十分に伝えた。

2019年7月13日土曜日

山岡重行が批判する北田暁大『社会にとって趣味とは何か』の標準得点の問題点について

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社会心理学者の山岡重行氏が、社会学者の北田暁大氏が『社会にとって趣味とは何か*1で行った、「夫は外で働き、妻は家庭を守るほうがよいと思う」*2などの質問に、あてはまる(4点)/ややあてはまる(3点)/あまりあてはまらない(2点)/あてはまらない(1点)の4択で答えてもらったアンケート結果の集計方法について、批判を通り越した非難を展開している*3。分析手法はすべて公開されているのだから、不適切な分析であっても捏造とは言えないと思うのだが、それはさておき標準得点は使わない方が良かった。

『答えのない世界に立ち向かう哲学講座――AI・バイオサイエンス・資本主義の未来』

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ネット界隈で人工知能や生命科学に関する哲学的議論はよく見かける気がするのだが、過去の倫理的議論との整合性まで踏み込んだ哲学者の議論まで紹介されていることは少ない。紹介されている場合でも、妙に断片的な引用になっていたりして要点を抑えていない感じもある。軽い読み物で何か紹介が無いかなと思っていたら、『答えのない世界に立ち向かう哲学講座――AI・バイオサイエンス・資本主義の未来』と言うのがよさげであったので拝読してみた。

2019年7月10日水曜日

稲葉振一郎『社会学入門・中級編』の期待効用理論の説明について

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社会学者の稲葉振一郎氏の『社会学入門・中級編』を読みかけてしまって気づいたので、経済学に関する説明について問題点をひとつ指摘しておきたい。全体の議論には大した影響は無いと思うが、気づいてしまったので。ドナルド・デイヴィッドソンの著作の影響で意志決定理論に踏み込みかけたものの、うまく消化できないまま説明を試みたような雰囲気が漂っている。

2019年7月8日月曜日

元財務官僚・高橋洋一の教科書にある中心極限定理の説明について

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東京大学理学数学科卒で、常日頃、文系の経済学者は数学や統計が分からないと罵ってまわっている元財務官僚・高橋洋一氏の著書『図解 統計学超入門』の中心極限定理の説明「相互に独立な確率変数X1、X2、X3、…、Xnがあるとき、これがどのような確率分布であっても、nが大きくなればなるほど、正規分布に近づいていく」がデタラメだと話題になっている。確かに、初学者向けの説明としても、2点、看過できない誤りがある。

2019年7月7日日曜日

稲葉振一郎『社会学入門・中級編』の計量経済学に関する説明はデタラメなことを社会学徒に知って欲しい

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第1章の内容で全体がどうこうと言う話ではないのだが、社会学者の稲葉振一郎氏の『社会学入門・中級編』の第1章にある計量経済学に関する説明はデタラメなので、他の社会学徒の皆様は騙されないように注意して欲しい。ネット界隈の印象に過ぎないが、社会学者の集団はサークルをつくって思い込みを共有しだすので、由々しき事態である。ミクロやマクロの計量分析をしている経済学者たちに草稿をチェックしてもらうなりすれば、ここまで露骨に変なことにはならなかったと思うのだが。

2019年7月6日土曜日

山岡重行の統計的仮説検定の説明に対する北田暁大の批判について

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社会心理学者の山岡重行氏の『腐女子の心理学2』の巻末の統計学用語の説明に関して、社会学者の北田暁大氏が色々と批判している*1。しかし、あれこれ経緯がある*2からだと思うが、全般的に勇み足になっているので指摘しておきたい。山岡氏の記述にも問題が無いとは言い切れないのだが、統計学を学んでいない人向けの説明であろうことを念頭に置くと、山岡氏が統計学に無理解であるかのような批判は適切ではないと思われる。

2019年7月1日月曜日

「トランスジェンダー女性は女性なのだから、女性として取り扱わないと差別」にどう反論すべきか

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ネット界隈で保守的な人々が、トランスジェンダー女性とそうではないシス女性を区別して取り扱うべきと言う主張をし、どちらも女性なのだから同じように扱うのが筋ではないかと言う反論を受けていた。「トランスジェンダー女性は女性なのだから、女性として取り扱わないと差別」と言うのは、トランスジェンダー女性と言う表現における女性の意味と、単に女性と言ったときの女性の意味が異なるのを無視した詭弁なのだが、なかなか巧妙なのでとっさに反論を行うのは難しい。

2019年6月30日日曜日

∂が出てくる高校数学で熱力学と統計力学を紹介する『高校数学でわかるボルツマンの原理』

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経済物理学と言う統計力学を使って経済現象を説明しようとする分野がある*1ので以前から統計力学に野次馬的な興味があったのだが、なかなか手を出せずにいる。大学の統計力学の教材は物理学徒向けに書かれており、文系には予備知識の欠落でなかなか読み進まない*2し、そもそもそんなに本格的に勉強したくない。こんな我侭のための教材などこの世に無さそうではあるのだが、普通にブルーバックスから『高校数学でわかるボルツマンの原理 : 熱力学と統計力学を理解しよう』と言う本が出ていた。

2019年6月24日月曜日

戦争を語るおっさんは『補給戦』は読んでおけよ

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ファンタジー小説を書く前に『戦闘技術の歴史』を読んでおけと言う話で、クレフェルト『補給戦―何が勝敗を決定するのか』が勧められていたので拝読してみた。近世から第二次世界大戦までの兵站に関する風説を検討していく本で、『戦闘技術の歴史』では兵站についてはほとんど言及されていないので補完関係にあり、確かに一読の価値がある。本文だけではなく、訳者後書きの前に付録的についている著者マーチン・ファン・クレフェルトの紹介記事が面白い。原著は1977年の古い本なので現代戦については別の本で補完する必要があるし、兵站で勝敗が決した事例を選んで分析しているわけでは無いので副題が不適当な感じはするのだが、そこは御愛嬌と言うことで。

2019年6月19日水曜日

物理学徒がマクロ経済学を俯瞰した『経済数学の直観的方法』

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物理数学の直観的方法*1で名を馳せた物理学徒の長沼伸一郎氏が、経済数学についての解説本『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』を出していた。経済学や経済思想史を体系的に学んだことが無い人が書いているためか、経済学全体をよく俯瞰できていないので誤解や偏見を引き起こしそうな見落としがあるので、これで経済学を語られるとちょっと困るところもあるし、内容が最近のカリキュラムとやや乖離しているのだが、誤解や偏見があることを踏まえて読める人には、物理学と経済学を対比した記述が面白いものとなっている。

2019年6月9日日曜日

原理から見た製鉄の歴史が分かる「人はどのように鉄を作ってきたか」

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金属が文明に与えた影響は大きく、歴史区分に鉄器時代を使うこともあるし、創作物で鍛冶のシーンが出てくることも多く、製鉄はモノ造りの象徴とも言える存在だ。鉄鋼業界の変動や再編は今でも大きなニュースになる。しかし、製鉄の原理や歴史を学んだ人は少数であろう。ヒッタイト起源だと世界史で習ったぐらいであろうか。しかし、それでは文明を語る老害にはなれない。

2019年6月5日水曜日

MMT教祖Mitchellの日本経済への理解はこんな程度

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話題の非主流派経済学MMTの教祖や信奉者から日本の過去20年間の経験がMMTが正しいことを実証しているような言説をちょくちょくと聞くのだが*1、MMTの教祖たちの日本経済への理解はかなり雑なので真に受けてはいけない。

2019年6月3日月曜日

三兵戦術の集大成がわかる『戦闘技術の歴史4 ナポレオンの時代編』

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戦闘技術の歴史」の第4巻は、ナポレオン・ボナパルトの時代を取り上げていた。戦闘技術がテーマだけに、オラニエ公マウリッツ~グスタフ2世アドルフ~ナポレオンと続いた歩兵/砲兵/騎兵と兵科を分けて運用する三兵戦術の発展に関わる記述が大きな比重を占めている。ナポレオン時代のフランス陸軍が強力なのは、野戦砲の性能向上が実現されたところに、軍の機動的運用が実現されたためであったことがよくわかる。

2019年6月1日土曜日

北朝鮮の核・ミサイル開発問題で、日本が蚊帳の外でよかった

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…と、安倍総理が思っているかは定かではないが*1、文在寅劇場が打ち切りになりそうである。

2018年4月の板門店での南北首脳会談では、朝鮮半島問題の専門家の木村幹氏に「大国に従いながら、その力を利用することで、自立に向けて一歩ずつ進もうとしている」と褒め称えられていた*2のだが、その後、交渉を積み重ねた後の2019年2月のハノイの米朝首脳会談は物別れに終わった。

2019年5月27日月曜日

痴漢されたら安全ピンで刺すのは、運用上の問題がある

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痴漢されたら安全ピンで刺して対抗することの是非が議論されている。寡聞にして知らなかったのだが、twitterで寄せられた体験談および情報によると*1、1980年頃の東京でそのような行為が一般化していたという証言もあり、マンガの中でもそのような描写があるようだ。2004年の朝日新聞の記事にも、同様の行為を行ったと言う証言がある。誇張もある気もするのだが、やっている人はやっているとしよう。しかし、真似するべきとは言えない。

2019年5月17日金曜日

アメリカの自然派ママは高学歴で裕福な家庭の母親

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自然派ママと言うと、食材にこだわるぐらいから始まって菜食主義者になり家族を栄養失調にする*1だけではなく、アトピーの子供にステロイド剤を使うのをやめて痛々しい状態の皮膚をつくりだし、子供にワクチン接種をせずに先天性風疹症候群や子宮頸がんを増やす社会悪なわけだが、もちろん日本だけの存在ではなく先進国で広く問題になっている。どういう人がそれになってしまうのか気になるところだ。

トランスジェンダー女性はスポーツにおいて女性ではない

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トランスジェンダー女性は身体的には男性なので先天的にシス女性とはまったく異なるし、スポーツを見ていたら疑いの余地のない事実なのだが、どうもジェンダーの問題だけを追いかけていくとこの明白な事実を見失いがちのようだ。

トランスジェンダー女性は女性なのだから女子スポーツに参加できなければ差別されていることになる…と言うような主張を見かけたのだが、スポーツにおける女性とは身体的な女性であるシス女性を指しており、性自認が女性であるか否かは問題ではない。

2019年5月16日木曜日

『最貧困女子』で学ぶ不細工で知的障害を抱えるデブで粗暴な家出少女たちのセックスワーク

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貧困問題や売買春に関しても上澄みと澱みがあるのだが、澱みが濃い部分については忘れさられがちな面がある。経済学徒であれば合理性、もしくは行動経済学で扱える範疇の一般的な不合理性で説明されないものは説明困難な世界になるし、社会運動家も世間の同情をひけないような事例は隠しがちである。しかし、それが少数とはいえ、澱みの部分を無視していて良いかというとそうではない。そこに切り込んでいく勇者も必要だ。

2019年5月10日金曜日

「男女間における暴力における調査報告書」の「異性から無理やりに性交された経験」の被害率を補正してみた

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江口某氏がジェンダー法学者の谷田川知恵氏『暴力からの解放』にある数字について、計算がおかしいのではないかと言う議論をしている*1。谷田川氏は「男女間における暴力における調査報告書(平成23年度調査)」の直近5年間の被害率を5で割って、女児から後期高齢者まで日本の女性全体の人口にかけて毎年の被害者数を出しているようなのだが、この方法は精度を欠く。回答者の年齢分布と母集団の年齢分布が違うので、被害率は補正しないといけない*2。これが江口某氏の指摘なのだが、実際に被害率を修正したらどうなるか…と言うのをやってみよう。四則演算で頑張れる。

2019年5月8日水曜日

大和民族の正体不明感が分かる「日本人の起源」

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自分が属する民族がどこから来たかについては気になるもので、ネット界隈でも考古学は人気の話題の一つだ。周辺国への憎悪から、無理な自説を構築している人々もいる。断片的に聞いた話で想像を膨らませているのだと思うが、考古学者がどう情報を整理しているのかを確認したいところだ。中橋孝博『日本人の起源 人類誕生から縄文・弥生へ』を拝読してみた。捏造事件などを含む学説の右往左往ぷりを含めて、遺物や人骨の発掘と分析手法がいかに考古学の知見を更新してきたか、そして現在もどういう情報が足りていないか分かる本だった。

2019年5月6日月曜日

平成の間に起きたことを振り返る

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令和になる直前に、平成を総括する行為が行われていた。年号による時代区分に大きな意味は無いと言う主張もあるのだが、1989年1月8日から2019年4月30日の31年強、様々な事件があったし、その時代を生きた人には様々な思い出があるのであろう。追随して、私も振り返ってみたい…と思ったが、無為に生きているので何も思いつかなかった。しかし、平成を振り返れと言う御題をいまさらもらったので、ちょっと考察してみたい。他人事感があるのだが、新興工業国の発展、少子高齢化の深化、情報通信技術の普及の3つが平成という時代に起きた大きな変化だと思う。

2019年5月2日木曜日

計量分析における構造形と誘導形の違い

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社会学者の稲葉振一郎氏の新著「社会学入門・中級編」の構造推定の説明がちょっとおかしいと言う話が流れていたのだが、他の人々も誤解をしていたりするのかなとtwitter検索をしてみたところ、複数の社会学Ph.Dの人が両者の違いについて疑問を呈しているのが観測された。どうも社会学者の間では、よく考えれば当たり前なのだが、構造形と誘導形という単語に馴染みが無いらしい。

2019年5月1日水曜日

人工知能に研究をさせるのは有害だが、人工知能に研究をチェックさせるのは有益

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機械学習やディープラーニングを使った人工知能技術は、工学的に応用すると効果的なことが多い。理学分野でも使われるようになりつつあるのだが、その多くが再現性が無い駄目なパターンを発見したもので科学的に意味が無いものとなっており、何かの運用基準が必要だと指摘されている*1。一方、このような再現性クライシスに、国防高等研究計画局(DARPA)は人工知能で対処しようとしている*2

2019年4月25日木曜日

トルコ経済を見るとMMTの現実説明力が低いことが分かる

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話題の非主流派経済学MMTの信者たちは、彼らの言う主流派マクロ経済学が権威を笠に着てモデルを振り回すだけで、現実経済を説明していないと主張しているのだが、藁人形論法が過ぎて呆れてくる。実証研究は山のようにあるからだ。

素朴なものから難解なものまで、誘導形でも構造形でも計量的な検証は山のように行われている。論文を読まずとも、教科書でモデルの説明の後には実例を紹介していることも多い。そもそも経験則を説明するためにモデルがあるわけで、既存の研究でも大雑把な経験則ぐらいは言える。もちろん上手く説明できない状況もあり、説明力がイマイチのモデルも多くある*1が、こういうのも実証研究をしているから分かってくることだ。

2019年4月24日水曜日

ある社会学者の産婦人科医への罵倒に関して

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社会学者の橋迫瑞穂氏(@_keroko)が、妊娠初期では母親の仕事や運動などが原因で流産することはほとんどなく、妊娠10週未満の流産を防ぐ有効な対策はないので、出血などで病院にいってもその後の経過は変わらないと説明している産婦人科医氏(@syutoken_sanka)を、データの問題と個別の事例は別であり非論理的だと罵っていた*1。医学的にも統計解析の意味でも橋迫氏の方が…な主張に思える。

2019年4月23日火曜日

高校教育で線形代数が復活するかも知れない

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統合イノベーション戦略推進会議の有識者提案を受けて、日経クロステックの浅川直輝氏が日本の数理教育や産学連携の失敗を綴っている*1。高校の学習指導要領から線形代数が消えたことがよく非難されているが、記事にあるように「行列やベクトルの概念を知らない大学初年度の学生に…の原理をどう教えるか」言う問題が生じうる*2ことになっている。

人工知能好き、SF好きは読むしかない「心の進化を解明する」

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時折名前を見かける哲学者デネットさんの集大成と言われる「心の進化を解明する」が話題だったので、半年前に読み始めて何回かの積読ツンドクの末にようやく読了したので紹介したい。大学院で使うような辞書的な教科書に比べれば薄いのではあるがやはり分厚い上に、読み飛ばしたらあかんのだろうなと思っていたら読み進まなかった*1。とは言え、哲学書と言っても常人が読める文章が書いてあるし、訳者も平易な日本語にしてくれているしサポート・ページもあるので、時間さえあれば誰でも読める。