2019年12月31日火曜日

非理系の人にオススメできる電気のポピュラーサイエンス本『電磁気学のABC』

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電気なくして生活が成り立たたず、マンガやアニメを見ると電気を使って戦うキャラクターが数多くいる現代社会、電気について教科書をガリガリ読むほどでは無い程度に緩く興味関心を持っている人は多いと思う。そういう初学者未満の人々向けの本と言うのは質と量のバランスが難しいのだが、『電磁気学のABC』は迷うことなく(非理系の人に)オススメできる本だ。

本書は、簡素な電気回路とその性質の最低限の説明や、電磁気学の応用などの紹介もあるのだが、全体としては歴史的な実験とその発見を追いかけることにより、電気や磁気の性質と、そして電場や磁場といった考え方が必要になる理由を解明していく構成になっている。観察された現象を、遠隔力と近接力(場の理論)の二つの方法でどう説明できるかと言うアプローチで考えていくので、全体像がはっきりと提示される。コンデンサーとコイル、その二つでつくる共振回路の説明をしてから、反射板で定常波をつくって電波を検知するヘルツの実験に入るように、説明の順序に混乱は無い。最終的に、ファラデーが思いついて、マクスウェルが考えを発展し、ヘルツが示したと言う話になるので、科学史の本と言ってもよいかも知れない。内容的には高校物理の範囲になると思うが、教科書的な網羅性は感じず副読本としてもよさそうである。細かいところもほぼ粗は無さそうであった*1

高校の内容でも電磁気学を把握するには、ごりごりと計算問題を解いて理論の使い方や癖を学ぶ必要があると思うが、とりあえず概観を知りたい人には最適な一冊になっていると思う。最初は情報量が多いとおぼれてしまう人も多いであろうが、その心配は無い。同じブルーバックスの同じテーマの『ひとりで学べる電磁気学』の内容をそろそろ完全に忘れた頃*2なので記憶の掘り起こしのために手にとってみたのだが、最初にこちらを読めばよかった感がかなりあった*3

*1ただし、リニアモーターカーのガイドウェイにある地上コイルは、車両の地上高が上下したときだけではなく、車両が上を移動するだけでも帯電するのでは無いか気になった。

*2関連記事:ぐぐれば「ひとりで学べる電磁気学」の本

*3ちょっとおいていかれるぐらいの本の方が学習には良いかも知れないので、意欲的な人は難解な方を読むのも悪くないかもしれない。実際、あちこちの大学のレジュメを読んで考えることに(ry

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