李氏朝鮮の時代、『海東諸国紀』を記した申叔舟は「願わくは国家、日本と和を失うことなかれ」と成宗に残したとされる(邦訳版後書き;p.409)のだが、朝鮮半島では伝統的に地続きの中国によった外交が展開され、対日関係は後回しにされがちだ。
文禄・慶長の役や韓国併合がその結果なのかは定かではないが、強国に挟まれた国が無暗に対決姿勢を取らない方がよいのは確かであろう。しかし、文在寅政権は対日関係を国内世論に劣後させており、日韓請求権協定での合意事項すら守らないと言う暴挙に出ている他、協定に従って徴用工問題に関して仲裁委員会を開いて協議を行うことも返事をしないと言う方法で拒絶、さらに通商関係の協議を一切行わない方針を取ってきており、歴代政権の中でも日韓関係に配慮しない。
そんな中、大韓民国向け輸出管理の運用の見直し案が出て来て、とうとう閣議決定するに至った。韓国をホワイトリスト国*1から外すだけなので、日本の輸出企業が個別輸出許可を取れば従来通りの輸入が可能で、かつ韓国が除外されればアジアにホワイトリスト国は無いので、それで輸出入にほとんど支障がないことが分かっているのに、韓国世論は禁輸措置を食らったかのように騒いでいる*2。本当に輸入した戦略物資を密輸出でもしていたので、個別許可を取るための条件はクリア不能なのか…と思わなくもないぐらいだ。そして、どんな制度変更か熟知している韓国政府も、WTOやASEAN諸国、米国などに働きかけを行っている。アメリカは日韓の言い争いには積極関与して来なかったし、戦略物質の輸出許可の方法に関しては世界貿易機関(WTO)のルールでは各国の裁量となっているし、ASEAN諸国にホワイトリスト国はないので積極的に支持してくれるところはないと言うのもわかっているとは思うが、何かしているように見せないといけないから忙しい。そう、日本に対抗しているように見せないといけない*3。早速、日本の「ホワイト国」除外に断固とした対応取ると表明した。韓国の輸出管理が適切なものだと日本側に理解を求めていく…と言うようなメッセージではなく、かなりの喧嘩腰。
朝鮮半島の専門とする政治学者である木村幹氏は、日韓関係の重要性を認識できず、世論を変えるようなリーダーシップを持たない文在寅政権が、自ら引き起こしている日韓関係悪化の一方的な被害者として振舞い、韓国世論からの責任追及を避けているとしていた*4が、大韓民国向け輸出管理の運用の見直し案に関しても同様の振る舞いをしていると考えてよいであろう。結局、日本は国際協調路線や対米関係などもあって、韓国に実質的な影響を与えられないと高をくくっているのだと思うが、はたして文在寅政権の思惑通りいくのであろうか。韓国にとって重大な問題が生じても、その頃には文在寅氏の任期は終わっているので、韓国の行く末などどうでもよいのかも知れないが。
*12019年8月2日、輸出管理区分からホワイト国と言う名称はなくなり、4段階のグループ分けになった。
*2まだ個別輸出許可が下りた事例がないと報道されているので、落ち着かないのかも知れない(焦点:韓国半導体業界、輸出規制への対策手詰まりで前途多難 - ロイター)。
*3同時に韓国政府も日本をホワイトリストから除外することを宣言、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)からの離脱を検討することをアナウンスした。なお、GSOMIAからの離脱は何度も検討されていることになっている。
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