2013年5月24日金曜日

従軍慰安婦問題における日本政府の責任

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日本政府が従軍慰安婦に売春行為を強制したか否かと言う問題で、どうも否定派も肯定派も日本政府の責任について誤解をしているように感じる時がある。

70年代後半から俄かに提起された強制徴収の是非に関わらず、日本政府の責任はある。慰安所エコシステムを作ったことで、非人道的な行為が促進されたと思われるわけで、それは当時の統治者の責任になるわけだ。

1. 両親が娘を売り飛ばしても、日本の責任

実際にあったと思われるケースなのだが、両親が娘を女衒に売り飛ばし*1、女衒が慰安所で娘を働かせた場合を考えて欲しい。当時も人さらいは逮捕されている*2が、このようなケースの大半は取り締まられていたかは分からない。両親も女衒も朝鮮人であったであろうが、旧日本軍がそれを黙認していた場合、共同不法行為が成立してしまう。そうでなくても、生きづらい世の中を創った責任がある。

追記(2013/05/24 14:20):「共同不法行為というか不作為の違法行為(人身売買の幇助)」と言うツッコミが入った。

2. 朝鮮半島の村役場の粗雑な仕事も、日本の責任

さらに、当時の朝鮮半島には「面」と呼ばれる村役場があり、これが官募集を斡旋していたりするのだが、どうも適当な対応が多かったらしく、騙されたと思っている人々は少なく無いようだ*3。この「面」を使って従軍慰安婦の募集を行ったケースは史料からは確認できないらしい*4が、ここで思い違いが発生した事もある。そして、当時の朝鮮半島の行政上の最終責任は、日本にある。

3. 慰安所エコシステムは、日本の責任

上述の人身売買にしろ、もしあったとして村役場の粗雑な仕事にしろ、朝鮮人が主体的に活動していた事になる。しかし、例え日本政府が上述の問題を抑制しようとしていても、そもそも慰安所エコシステムが彼らの活動を活発化させたと言う批判は受ける。特に最近の風潮は、売春婦が身を落とした責任は客にもあると言う事なので、消極的関与と見なされる可能性は高い。

4. 戦争や他国は上手い弁解方法にはならない

戦争に必要だと言う議論は、上手くない。当時と現在とで兵隊の性欲がそう変わるわけでは無いであろうから、現代の軍隊にも必要と言う事になりかねないからだ。慰安所エコシステムが、朝鮮戦争やベトナム戦争にもあったと言う指摘もあるが、全部まとめて批判されるので上手くない。詭弁に思われる事は言わない方がいいであろう。

5. 日本政府の責任を認めた上での議論を

言い逃れ不可能な統治責任があるわけで、これらはむしろ認めた方が良いように思える。村山談話も河野談話も玉虫色なので、撤回する必要は無い。元慰安婦が辛酸を舐めたことを認め、21世紀に人権侵害が無くなるように貢献したいと、安倍総理も2007年のブッシュ大統領との会談後の記者会見で言っている。

6. 政治家が慰安婦問題に踏み込む損得

影響力が強い人は、組織売春だが暴行犯罪ではないと言う主張を、現時点では自重した方がいいであろう。黒白はっきりしないだけで非難する人々も多いし、深入りすると元慰安婦の証言の信憑性と言うセンシティブな問題があるからだ。老い先短い老婆への人格攻撃は、恐らく建設的には見えないので、主張の是非に関わらず誹謗を受ける可能性が少なく無い。

*1芸娼妓契約が合法な時代で、これは違法とは限らない。

*21933年6月30日の東亜日報に誘拐事件が、1938年12月4日に甘言による詐欺事件が報道されている。

*3在日韓国・朝鮮人一世の渡日談でそのような話しがある(在日・強制連行の神話)。

*4朝鮮半島全域に官募集すれば、膨大な書類が「面」に残されたはずではあるが、今のところは発見されていないようだ。

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