2013年4月8日月曜日

パズル的に読める『離散数学「数え上げ理論」』

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少し前にタイムラインで話題になっていたので、『離散数学「数え上げ理論」』を拝読した。数学畑の人らしく丁寧に書かれた説明と、単純ゆえに興味深い問いが並ぶパズル的な本だ。複雑な計算は無いので、紙と鉛筆なども要らないと思う。賢く場合分けを数える方法の本。

構成は、大きく二つに分けてあり、第一部で数え上げ問題を、第二部で数え上げ理論となっている。基礎的な知識を第一部で、理論的な議論を第二部に配置しているようだ。例えば第一部の第5章でフィボナッチ数列が出てきて、その閉じた数を表すビネの公式が、第二部の第7章で差分方程式を使って、第8章では母関数を使って証明される。

良い意味で、第一部と第二部で内容が大きく異なるわけではない。第一部も第二部も、プレゼント交換で自分のプレゼントが当たる確率のような具体的な問題を提示し、それを抽象化していく方法で議論が進んでいく。説明は丁寧で、式の展開は過剰なぐらいだ。ただし第9章のNクイーン問題は、群論の紹介なのだと思う。天下り的にフロベニウスの定理が出てくる。また、第8章の最後の「自然数のk乗和と母関数」も導出無く利用される公式が三本があるので、無理やり感が少しある。

パズル本的な面白さがある一方で、読みづらさはほとんど無い。分割数、フィボナッチ数列、カラタン数、二項分布を知らない人には娯楽教養本になるし、プログラマだったら総当たりしなくても計算が出来るケースの勉強になるかも知れない。個人的には第一部のmCnの問題で分からないモノと言うか間違えたものがあり、脆弱な知識を固めるのに役立ったと思っている。包除原理などをはじめ、そもそも知らないことも多かった。プレゼント交換で、誰かが自分のプレゼントに当たる確率は5人のときは約64%と叫んでもモテるようにはならないと思うが。

文系だと数学の知識が微分積分や線形代数に偏り勝ちで、非常に単純な事をやっているにしろ、離散数学には良く知らないので面白さがある。娯楽として楽しめると思うので、失恋や離婚したときや、仕事で失敗したときなど、ちょっとお酒が欲しいときに文系の人に読んで欲しい。たぶん、酒代の節約になるし、肝臓にもいいし、良く寝られる。

そう言えば、P.154のイラストがシュールで頭から離れない。

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