2012年3月30日金曜日

日本が3%のインフレ課税を狙うべき5つの理由

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消費税の税率を上げるか否かで論戦が繰り広げられているが、関連しているのにほとんど触れられていない単語がある。インフレ課税だ。実質成長がゼロであっても、インフレには政府債務を実質的に削減する効果がある。

経済評論家はリフレ派とシバキ派(構造改革派)に分かれるようだが、どちらもインフレ課税にはほとんど言及しない。フィッシャー方程式からインフレになったら(国債の)名目金利が上昇すると思い込んでいるからだ。

しかし、良く考えると国債の名目金利ではフィッシャー方程式が成立しない可能性が高く、緩やかなインフレなら金融システムへの影響も考えなくて済み、成長戦略も必要が無い。日本が3%のインフレ課税を狙うべき5つの理由を上げてみた。

理由(1) 自然利子率がマイナス

生産年齢人口の減少が、日本経済に与える影響は大きい。これは日銀の金融政策を批判するノーベル賞経済学者のクルッグマンも認めるところだ。そして余剰資本が出来るため、資本の限界生産性が低下し、利子率が低下している。

ここ10年間の年平均労働人口増加率が-0.569%から考えると、自然利子率はマイナス0.5%ぐらいあってもおかしくない。消費者物価指数は10年間で-3%なのでインフレ率はほぼ0%なのだが、これが年1%ぐらいになっても、名目金利に与える影響はほとんど無いであろう。

理由(2) 国債に代わる金融商品は無い

金融機関には自己資本比率規制があるのだが、これにはリスクウェイトと言う概念がある。企業貸付は100%、国債は0%となる。預金を大量に集めて融資を行うと自己資本比率規制に触れる可能性があるが、国債につぎ込む分には問題が無い。つまり、国債に代わる金融商品は無い。国債は現金と同等リスクで、僅かながら利子がつく唯一の金融資産だ。金利がインフレ率未満でも、保有し続ける理由がある。

理由(3) 日銀が名目金利を誘導できる

日銀は国債を買う事により、名目金利を低く誘導できる。だからフィッシャー方程式は、日銀が低利で国債を買い続けている以上は成立せず、さらに日銀は満期まで保有しておけば資金繰りで破綻はしない(関連記事:日銀がリフレーション政策を嫌がる理由)。インフレ加速の可能性はあるが、国債に関してはフィッシャー方程式が成立しないように政策誘導する事も難しくない。

理由(4) 低インフレならば金融システムへの影響は限定的

インフレになったら金融システムが打撃を受けると思うかも知れないが、3%程度ならばデメリットは少ない。昔は日本ももっとインフレ率が高い時代が続いていた事を思い出そう。

補足すると名目金利を抑えておけば、民間銀行のB/Sが瞬間的に毀損する事も無い。運用資金の8割を国債に投入しているゆうちょ銀行は、他の銀行と比較して預金金利を低くせざるをえなくなるので打撃を受けるかも知れないが、ゆうちょ銀行が破綻した所で民間企業に融資等を行っていないから連鎖倒産などの信用不安は起きない。それに田舎でゆうちょ銀行しか貯蓄手段が無い人は、ゆうちょ銀行を使い続けるしか無いであろう。

理由(5) 成長戦略が不要

インフレ課税には実質成長は必要が無いので、成長戦略とかは考えなくて良い。はっきり言えばインフレ課税は形を変えた富裕税であって、国債保有者を狙いうちにした不公平な税だ。成長戦略と言うと取らぬ狸の皮算用になりがちだが、インフレ課税の被害者はかなり明確である。

本当にそうなるか疑問かも知れないが、経験則から4%程度のインフレ率までならば、名目GDP成長率と長期金利のギャップはインフレ率とともに拡大していく傾向がある(関連記事:緩やかなインフレは財政負担?)。

補足: インフレ率3%である理由

3%で無ければいけない明確な根拠はないが、インフレを引き起こすのには、需給が逼迫する必要がある。するとインフレ加速失業率(日本は2~3%?)のときのインフレ率を目標にしないとインフレにならない。このときのインフレ率が3%弱程度なので、3%とした(「2%じゃ不十分」NAIRUの推計-結果は3.62~3.76%)。

まとめ

何とかインフレ率を引き起こせば、後はどうにかなる。インフレ加速が心配かも知れないが、インフレ率3%を超えたら消費税率を20%にするトリガー条項付立法を行っても良いし、ちょっと柔軟な発想をすれば良いだけであろう(関連記事:日銀がリフレーション政策を嫌がる理由)。

どうやって3%のインフレ率を引き起こすかが問題になるが、日銀が3%のターゲットレートを宣言して、長期国債を積極的に購入してみる事を提唱したい。流動性の罠にあるときには、単なる量的緩和に効果が無い事は分かっているので、思い切った政策が必要だ。

なお3%のインフレ率と1%の名目金利を維持できれば、25年ぐらいで累積財政赤字のGDP比は半減する。逆に言えば、マイナスインフレ率と1%の名目金利があると、累積財政赤字のGDP比は増えていく。もしかしたらデフレで最も影響を受けていたのは、財政問題なのかも知れない。

1 コメント:

Chiznops さんのコメント...

インフレ率は、お金や国債への人気投票だと思っています。日本の過去20年間のように、株や土地への投資がマイナスの場合、預金や国債へ資金が流れてデフレになるのは仕方がありません。国債は、過去20年間で最もリターン率の高い投資でした。日本が再び経済成長を始めて株などへの投資がリターンを伴うようになれば、現金の人気が相対的に下がって成長率に見合ったインフレは起こります。しかし、経済成長のないインフレを狙うと言うことは、お金や国債に対しての信用を人為的に下げることと同義です。信用を3%だけ下げることが可能でしょうか?マーケット心理は非線形的に動きますので、コントロールすることは大変難しい。お金や国債への信用を人為的に下げた場合、資本逃避がポジティブフィードバックになって、さらに信用低下を加速させるような事態は容易に想像できます。ここぞとばかりに外資も売り崩してくるでしょうし。国債バブル崩壊のXデーに向けて着々と準備をしていると思いますよ、機関投資家は。

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