2010年12月24日金曜日

日本航空のリストラが進展し、従業員の整理解雇に入る

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前に8月中旬までのJALリストラの進展をまとめたが、その後もリストラの進捗は進んでいる。債権者との協議が続いていた更生計画案が提出・承認され、方向性を変えるような大きな動きは無いが、人員整理も早期退職募集から従業員の整理解雇が行われており、労使間の対立は深まっている。

1. 更生計画案がまとまる

8月30日にJALと管財人の企業再生支援機構が、公的支援を受けて再生を図る更生計画案を東京地裁に提出。計画案では、内外計45路線を廃止。今年度中に、グループ全体の3分の1に当たる約1万6000人を削減。11年3月期に641億円の営業利益を計上、248億円の資産超過を見込み、2013年1月までに再上場目指す(時事ドットコム)。11月30日に東京地裁は計画案を認可(asahi.com)。

2. 従業員の削減で混乱

方向性は変わっていないとは言え、雇用関係に以下のような混乱は見られた。収益への影響を最低限にとどめつつ人員整理を行う努力の結果だとは思うが、倫理的な批判は避けられ無いものもある。

2.1. 早期退職募集は成功せず
早期退職募集は目標には達しなかった読売。結局、最大で250人を対象に整理解雇を計画(asahi.com)し、12月9日に正式に約200人の整理解雇を発表した。既に何年も前から、ANAと比較するとJALの対偶は悪いが、新興航空会社よりは待遇はまだ良く、従業員は容易には希望退職には応じられなかったようだ。12月2日がスカイマークがJAL退職者の募集を行ったが、パイロットでJAL時代の三分の一以下の給与であり、待遇はかなり悪い。
2.2. 早期退職の勧告方法が批判される
50歳以上や病気欠勤が多いパイロットに、白紙の月間乗務スケジュールを渡して個別に呼び出し、乗務から外すことを通告した上で自主的な退職を迫っていることが報道される(asahi.com)。10月28日には客室乗務員にも同様の行為が行われていたと報道される(asahi.com)。整理解雇は会社側が不利なため早期退職に誘導しようという経営努力ではあるが、適法行為なのかは議論が残りそうだ。
2.3. JEX内定取消し問題
JALエクスプレス(JEX)内定取消し問題が発生。パイロット採用であったのを、地上職契約社員や客室乗務員での採用に変更すると一方的に通知する。親会社と子会社で雇用方針の認識があって無かったのか、早期退職募集の失敗の影響を受けたのかは不明だが、経営不振の状態でパイロット採用を安易に行った批判は受けそうだ。なお、事実上の内定取り消しだが、JAL側は内定取り消しを認めていない。

3. 労働組合の活動が活発化

日本航空乗員組合と日本航空キャビンクルーユニオンが、整理解雇の無効を訴え、日本政府への指導・勧告を求める緊急要請書を国際労働機関(ILO)に提出している。また、整理解雇が行われた場合は、訴訟も検討しているようだ(読売)。ただしストライキ等の強行手段は計画したものの、世間の理解が得られないとして回避する方向になった。

4. 過剰な資産評価が発覚する

JALはB747型機の簿価が高いと批判を受けていたが、和歌山県にある社宅の評価額についても、問題が指摘された。バブル崩壊の評価損を未だに計上していなかったためだが、経営危機の会社の資産額が、いかに把握しづらいかが分かる例となってしまった。

5. 資産整理は進んでいる

8月20日にB747-400型機を年度内に全て売却する方針が報道され(MONEYzine)、旧型中型機であるMD-81型機が、三沢発羽田行きのJAL1226便で退役(asahi.com地平線の向こうへ)した。

また子会社の整理も、交渉に時間がかかっていた機内食会社ティエフケー(千葉県成田市)の売却も発表され、概ね完了となっている。

6. 経営のスリム化は色々と試みられている

もちろんサンパウロ ─ 成田線の廃止(asahi.com)など、路線の整理は進んでいる。航空会社が収益を維持するためには路線整理は欠かせない。ただし、静岡県と訴訟になる(asahi.com)など、地方との軋轢は増している。

また、160人乗り以下の機材の国内線で客室乗務員が機内清掃をするようになり(asahi.com)があり、一部の国内線と国際線でゲート受付も行うようだ(読売)。客室乗務員を有効に使って、トータルの人件費を抑制する狙いだと思われる。

7. 経営環境は今後とも厳しい

航空会社は、他社にコスト競争力で差をつける事が難しい。機材も燃料も空港も共通であり、規模生産性が働く部分が少ないからだ。路線も排他的ではないため、競争が激しい。

世界の航空会社を見渡すまでもなく、日本で一定規模の旅客機を運航しているANA以外の航空会社、JAL、スカイマーク、スターフライヤー、AIR DOは何らかの債務不履行を一度は起こしている。労働コストの安いLCCでさえ経営環境は厳しいので、労働組合が強いJALは、コスト面からは今後も厳しい状況が続くと考えられる。もちろん高付加価値なサービスを提供できるかが問題になるが、大きく価格差をつけられるようなサービスは容易には考えにくい。

航空業界全体を見ても、原油高から航空燃料は上昇しており、航空料金の引き上げと旅客量の縮小は不可避となっている。欧州での景気の冷え込みもあり、国際航空運送協会の収益予想も楽観的とは言えない(IATA)。

JALのリストラ自体は進んでいるが、経営環境は今後とも厳しい。このまま順調に復活を果たすかは、予断を許さない状況なのは変わらない。

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