シドニー・スウィーニーを起用したアパレルブランドアメリカンイーグルの広告が議論になっていた。共和党員などの右派が、ポリコレにうるさいウォーキズムにかぶれた左派進歩派が熱心に非難していると非難し、民主党が支持されなくなったのは云々と我田引水をしている人々が観測されていた。
だが、どうも極端な意見を代表と看做す詭弁が駆使されていただけのようだ。誇大広告論法。Tweet Binder社のデータを使ったNY Times誌の分析によると、右派が騒ぎ出すまで、話題の広告に言及したツイートは数千件で、そのうち否定的なものは1割未満であった。右派の政治家とメディアが進歩派の問題意見として吹聴し出してから、炎上が拡大した。しかし、民主党議員で話題の広告を非難していた人は確認されていない。逆に、非難にあたらないと言っていた人はいる*1。
完全な藁人形論法ではなく、火元はある。"She has good jeans like she has good GENES! hahahaha like in a nazi way!!(拙訳:彼女が良い遺伝子を持っているように、彼女は良いジーンズを持っている!はははは、ナチスのやり方のようだ!!)というツイートが発端だ。しかし、ツイートをした人は共和党やトランプ政権を批判してきてはいるが、左派進歩派を代表する人物では無さそうだ。なお、ツイートをした人も右派が民主党が禁じてきたと主張しているメリークリスマスを言っていた*2。
ある程度大きな集団には、奇人も入り込むし、極端な意見が発せられてくる。とくに政治思想の場合は、組織としての見解はない。左派進歩派と言っても、それは入会手続きも誓約書も無い非組織の集団に過ぎない。左派進歩派に分類されている人が、保守を自認していることすらある。左派進歩派らしい集団の中から、極端な人の極端な意見を探せば、大抵何か出てくる蓋然性が高い。共和党は今回の左派進歩派批判の手法を幾らでも繰り返せると評されていた。
日本でも影響力が小さそうな匿名アカウントのオモシロ意見をリベラルやフェミニストの代表の意見として批評している人々がいる。最近はフォロワー数5未満の釣りアカウントに群がっている事例もあり、池の鯉より知能が無さそうな趣を呈している。フェミニストに限って言えば、本流のジェンダー学者を含む代表的なオピニオン・リーダーの意見の方が極端だったりするので、そっちを非難したほうがよいと思うのだが。
追記(2025/08/12 11:04):右派の炎上批判から本当に炎上してしまったようで、キャンペーン開始後、客足が前年比で落ちており、同業他社と比較しても悪いと報じられている(Foot traffic down 9% at American Eagle after Sydney Sweeney ad)。
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