2025年8月24日日曜日

「ガラスの天井」の誤用 — 勝敗の基準が明らかなことには使えません

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将棋の女流棋士がタイトル戦のひとつで順位戦と連動している白玲はくれい戦で5期タイトルをとったら棋士になれる制度に関して、「ガラスの天井」と言う言い回しの誤用が多く観察された。

ガラスの天井は役員への昇進など、その条件が不明瞭なときに使うもので、将棋のプロ棋士編入試験のように合格条件と、それを満たしているか否かの判定が明確な場合は、使えない。目に見える壁で、透明とは言えないからだ。

米国連邦ガラスの天井委員会(The United States Federal Glass Ceiling Commission; 1991年–1996年)の定義を見ても"the unseen, yet unbreachable barrier that keeps minorities and women from rising to the upper rungs of the corporate ladder, regardless of their qualifications or achievements(拙訳:資格もしくは実績に関わらず、まだ破られていないマイノリティと女性が出世階段の上層に登ることを阻む見えない障壁)"となっており、実績と資格が足りない場合には使うことは不適当だ。

日本将棋連盟前会長の羽生善治氏がインタビューで「あと一歩」の意味で「ガラスの天井」と言う言葉を使ったため、フリーダムな用法がされてしまった気がするのだが、棋士編入試験は規準が明確であるため、これまで女流棋士が棋士になれなったのは「ガラスの天井」があったためとは言えない。

なお一部界隈で女性優遇だと噴きあがっていたが、フリークラスに編入になるし、男性棋士との対戦が有利になるわけではない。フリークラスから順位戦に入ることができるかで、実力が試されることになる。棋士編入試験は3勝で突破で、女流棋士は2勝までは達成している。3勝して突破して欲しかった感はあるのだが、それほどの優遇と言うわけではない。

追記(2025/08/26 05:43):得票数と言う勝敗規準が明確な大統領選挙などでも使われていると言う指摘があったが、個々の有権者の投票基準は明確ではない。

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