2025年8月31日日曜日

文系全員にデータサイエンスを学んで欲しい文科省だが

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

文部科学省は大学の文系学部でデータサイエンスや人工知能(AI)の必修化を促進する」と言う話が報じられていた。今から5年以上前、2019年3月27日に、「文系や理系を問わず全大学生がAIの初級教育を受けるよう大学に要請」という報道があったが、今回はモデルケースとなるカリキュラムの開発が具体的な施策として入った。

大学の文系学部にデータサイエンス教育を要請してきたが、対応してもらえなかったようだ。その分野の専門知を諦めてデータサイエンスを教えると言うのに抵抗がありそうであるし、社会科学系ならばまだしも、人文系の学部の大学教員の専門知識はデータサイエンスに遠いことが多く、社会科学でも人文科学でも学生の多くは数理的な話やプログラミングは得意ではない。文科省は「モデル校を5校選び、教員の人件費やサーバーなどの整備費としてそれぞれ1億円程度を支援する計画」だそうだが、この厳しい状況で何ができるのか模索することになる。

中等教育を緩くして、高等教育の底上げをしようと言うのは無理がある。大学の学部でデータサイエンスの必修化をする前に、高校で微分積分と線形代数の必修化をして頂きたい*1。そんな気持ちを押し殺して何ができるか考えてみたのだが、合計16単位ぐらいで平均的な理工系の学生よりも(計算能力を除いて*2)高い統計リテラシーを教育できそうだ*3。文科省の話では、半期の2単位の科目の場合、講義が30時間、自習が60時間が目安なので、講義で240時間、自習が480時間ぐらいである*4

データサイエンスのブームは終わっている*5ので、産業政策としてはいまさら感があるのだが、科学はもちろん商業や経済や政治など多くの分野で何かと統計を作成し参照する現代社会だ。データ分析を専業としない市民データサイエンティスト(Citizen Data Scientists)の量産が、完全に無駄と言う事は無い。新卒はキーボードを叩いて計算できるだけで助かるという声もある。文章をしっかり読み書きでき、倫理学などの人文知をしっかり叩き込まれた人材も社会に寄与すると思うので、人文系までデータサイエンスに傾斜していて良いのかは分からないが。

*1逆に数学Ⅰから統計・統計は除外しても良いし、統計学的仮説検定は説明に無理が出ているので無くすべき。

*2学部一般教養の微分積分と線形代数の計算問題ぐらいは解けるようにはなると思うが、大学入試の難易度の高い問題を解けるようにはならない。

*3疫学分野などは例外になるが、多くの理工系学生の統計学の知識は、ラボで取得した実験データの解析のための範囲に留まることが多い。また、伝統的に理工系で実践されてきた統計解析の一部には悪癖と言えるようなものもある。それを忘れた理工系の大学教員が社会データに関して頓珍漢なことを言っていることがある。

*4微分積分/線形代数/統計学/R実習/実験データ/社会調査法/パネルデータ/時系列データの16単位。建前上は12.5%、(数理統計学的な話を真面目に入れると)実質的に半分ぐらいの学習時間を持っていかれそうだが。

*52022年頃から、統計学の博士号を持つような超高度人材か、システムに実装できるシステムエンジニア以外のゼネラリスト的なデータサイエンティストへの需要は落ちていると言われている。アメリカでは顕著でも、日本ではまだまだと言う可能性もあるが、風聞では後を追っているようだ。

0 コメント:

コメントを投稿