2007年に登場してから好調な販売数量の拡大を続けているApple社のiPhoneだが、Androidの躍進によって販売増を続けながらも市場支配力を低下させる状況が続いている。Apple社は大成功の中でAndroid端末メーカーの中に徐々に埋没して行っており、10月4日(日本時間で10月5日早朝)のiPhone 5/4Sのリリースで状況を打開できるかが注目される。
1. 市場シェア獲得競争に敗れつつある
Appleはシェアよりもブランド力を重視しているからと主張する人は多いが、Apple自体はシェアを重視している。2010年10月18日の決算報告で、Apple社のスティーブ・ジョブス氏はiPhonesの販売数がRIM Blackberryを上回ったことに言及しており、またジョブス氏の言葉で『分断化』されたAndroidよりは、iOS(iPhone/iPad)の方が支持されると言っている(Infostand海外ITトピックス)。明らかに市場シェアを意識した発言だ。
市場シェアを意識するのは、スマートフォンがアプリケーション・プラットフォームだからだ。インストール・ベースが多い端末の方が、ソフトハウスから見ると収益性が見込める。しかし、iPhoneユーザーの方がアプリの購入意欲が高いわけだが、既にAndroidの方が利用者数が倍近くになっており(comScore)、多勢に無勢になりつつあるのは間違いない。
OS | 2011年3月 | 2011年6月 | 増減 |
---|---|---|---|
Google Android | 34.7% | 40.1% | 5.4 |
Apple iOS | 25.5% | 26.6% | 1.1 |
RIM BlackBerry | 27.1% | 23.4% | -3.7 |
Microsoft WM/WP7 | 7.5% | 5.8% | -1.7 |
Symbian | 2.3% | 2.0% | -0.3 |
AndroidとiPhone(iOS端末)の市場シェアの逆転は2012年~2013年だと思われていたが、販売シェアが2010年に、利用者数が2011年に逆転した。また、2011年第2四半期のSymiban端末を含むスマートフォン市場では、Appleのシェアは19.1%を占めたが、Android端末メーカーの一つであるSamsungは16.2%に迫っている(IDC)。特許訴訟によりSamsung(場合によってはApple)の販売停止が広範囲に広がる可能性もあるが、プラットフォーム競争に敗れつつあるばかりか、スマートフォン製造メーカーとしての地位も揺らぎつつある。
2011第2四半期 | 2010第2四半期 | 出荷量増 | |
---|---|---|---|
Apple | 19.1% | 13.0% | 141.7% |
Samsung | 16.2% | 5.6% | 380.6% |
Nokia | 15.7% | 37.3% | -30.4% |
RIM | 11.6% | 17.4% | 10.7% |
HTC | 11.0% | 6.8% | 165.9% |
その他 | 26.4% | 19.9% | 119.5% |
2. マーケティングの失敗史に残りかねない
iPhoneの販売数から考えて意外に思えるであろうが、過去3年間のApple社のマーケティングは、失敗事例として記憶されるかも知れない。噂ではキックバックやノルマを要求することで取扱い通信事業者が限定され販売網が小さくなり、在庫リスクを縮小する為に機種バリエーションを限定してきたが、シェア獲得競争と考える上ではマイナスの戦略であるのは明らかだ。
2月からVerizon Wirelessでの取り扱いが開始されており、KDDI auの取扱いもほぼ確実視されている事から、通信事業者は拡大する方向に転じたようだ。機種バリエーションも、現在までは新旧と通信方式(GSM、W-CDMA、CDMA2000)と白黒の違いしかなかったが、廉価、もしくは小型の派正製品が発売されるかも知れない。新機種で市場シェア獲得競争で盛り返せる可能性は少なく無いが、昨年のiPhone 4はAndroid端末の勢いを止めることができなかった。次のiPhoneがAndroidを止める事ができるほど魅力的な製品になるかは、予断を許さない。
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