2011年10月25日火曜日

ミスコンと女性差別と男女格差と貧困と容姿

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ICUのミスコン中止を種にした、小倉秀夫(@Hideo_Ogura)氏と@yamtom氏、@papsjp氏、金明秀(@han_org)氏を中心に、ミスコンと女性差別と男女格差に関する熱い議論が1週間に渡って繰り広げられている(togetther #1#2)。論の主張者は@yamtom氏、@papsjp氏、@han_org氏で、反論者が@Hideo_Ogura氏だ。しかし、主張者の主張が、拡散気味の上に理解不能過ぎて困る。

1. ミスコンが女性差別か?

まず、ミスコンが女性差別かという議論が展開された。しかし、ミスコンが女性差別をもたらす、女性差別がミスコンを開催させていると言う証拠が無い。

女学生の人数からミスコン参加者数は1%にも満たないのは自明で、大半の女性には ─ 参加と言う意味で ─ 関係の無いイベントだ。美人であっても、大半の女学生はミスコンに参加しない。さらにミスコン参加者は美人とも限らないず、勝者が美人とも限らない。ミスコンに勝っても、得られるものがほとんど無い為であろう。

また、女性地位が高い国でもミスコンは開催されていることや、女子大のミスコンの存在も、ミスコンと女性差別の関連を否定している。男女平等度ランキングの上位20か国では、日本と同様に、むしろ一部の国では熱狂的にミスコンが行われている。

ミスコンが問題ならば、AKB48やハロプロのオーディションは問題にならないのかとか、スワジランド王国のリード・ダンスとミスコンを混同していないかとか色々と思うのだが、主張者のコメントは得られなかった。

2. 男女不平等が女性差別を意味するか?

次に、女性差別が男女不平等をもたらしていると言う主張が展開された。これは事実である可能性があるが、データ的には立証できない。男女格差があると言うデータは、女性の選好が雇用形態に影響している可能性があって、因果関係を説明するものではない。

現在の日本では、同じ職種・役職では性別に関係なく、同じ給与・待遇になる。つまり、男女の不平等度は職種・役職で説明されてしまう。女性が特定の職種・役職につきづらい事は否定できないが、男女の選好の違いで、女性が特定の職種・役職につかない傾向があるのかも知れない。結婚や育児を好んで優先する女性が一定数いれば、職種や役職に差が出る。つまり、女性差別が男女不平等を引き起こす事を否定できないが、男女不平等のデータがあるからと言って、即、女性差別があるとは言えない。

なお@han_org氏は計量社会学者のはずだが、@Hideo_Ogura氏にまだこの点のデータを提示していない。

追記(2011/10/27 04:52):別エントリーでこの節に関する議論の補足的説明を行った。

3. 女性の社会的地位向上に容姿を用いるのは不道徳か?

さらに、女性の社会的地位向上に容姿を用いる事の是非の議論が展開されていたのだが、これも論点が不明だ。

雇用者側として女性の容姿に、労働生産性の向上(例えば売上増)や、職場が明るくなるなどの外部経済、それに関連したシグナル(一説には容姿と知能指数に関係があるそうだ!)を認めれば、賃金・待遇が良くなるのは当然の現象だ。容姿と言うよりは、印象の良い人を高く評価することに、経済的合理性があると言ったほうが良いかも知れない。雇用者には賃金・待遇を良くする経済的理由、労働者には賃金・待遇の改善を求める経済的理由がある。

雇用者と労働者の間で利害が一致しているのであるから、周囲の嫉妬を考えなければ特に不道徳とは言えない。もし不道徳だと言える存在があるのであれば、容姿の良い従業員に好印象を覚える消費者と言う事になる。

4. 女性差別が貧困問題を引き起こすか?

最後に、@han_org氏が「反貧困はフェミニズムの主要な課題の一つだと思うが、妄想家の目には入らないらしい」と主張していたのだが、根拠不明だ。一部の途上国の男性は労働意欲が低くケシカランので、家庭内で女性の地位が高い事も多い。The Global Gender Gap Report 2010の男女平等度ランキングで日本は94位なのだが、バングラディッシュは82位、フィリピンは9位だ。一応、全体の傾向を確認するために、CIA World Factbookの貧困ライン以下の人口率と男女平等度指数で回帰分析をしてみたのだが、係数が0.04685でプラスで、t値は0.728、P値は0.468と、関係がある事は自明ではなかった。係数が負で、P値が0.05以下であれば、関係があると言える。

追記(2011/10/25 15:46):@tera_sawa氏に、フェミニストが反貧困にも感心があるだけで、女性差別と貧困問題は別の事象だと指摘して頂いた。

5. まとめ

関連が良く分からない四つの議題が展開されていることが異常なのではあるが、どれも論拠が薄弱なのは奇異としか言いようが無い。「ミスコンが女性差別か」に関しては、反証事例が多すぎる。「男女不平等が女性差別を意味する」に関しては、因果関係を立証するような計量分析が提示されていない。「女性の社会的地位向上に容姿を用いるのは不道徳」と言う主張は、少なくとも雇用者と労働者が不道徳とは言えない。「女性差別が貧困問題を引き起こす」に関しては、全く根拠が不明だ。

近年の日本では、女性も社会進出は可能になったが、社会進出と同時に結婚生活を営むのが難しくなった事が社会問題になっている気がするのだが、ともかくミスコンと女性差別を結びつけるのは無理がありすぎるし、それから派生した議論は理解に苦しむものであった。妄想の中で社会問題を作ってデータも取らずに議論をしている印象がある。論者の中で@han_org氏は社会学者なのだが、社会学では論拠不明な主張を展開できるのであろうか、周囲に疑念をもたらす議論となっている。

4 コメント:

地下猫 さんのコメント...

これは白痴的ですね。

1)
もともとのミスコン反対の声明には、ICUのミッションとミスコンの整合性のなさが指摘されている。AKBなどの芸能における投票が問題視されず、大学のミスコンが問題視されているという、前提が理解できていない。

2)
日本は他の先進国と比較して突出して男女の経済格差が大きい。これを単に雇用選好の問題にすることはできない。

3)
問題とされているのは、男性に比して女性の容姿が与える影響がでかく、ミスコンはそれを助長し容認することにある。問題設定がまるで理解できていない。

4)
まず、書いてある内容が「反貧困もフェミのテーマ」という言明に対する反論にまったくなっていない。ここまで理解力がないというのは驚くべきことだ。「反貧困もフェミの主要な課題」と「差別が一般的な貧困を起こす」が同じ意味を持つと思っているようだが、ほとんど白痴的である。
反差別運動と反貧困が結びつく場合、被差別層の貧困が問題になるということすらわからないらしい。
例えば日本社会における母子家庭と貧困の問題を考えれば良い。性差別と貧困の関連は明らかである。こんな明らかなことがわからないお方も現にいるようだが。

5)
総じて、「字が読めるようになってから他人の前でものを言おうね」としかいいようがない。

uncorrelated さんのコメント...

>>地下猫 さん
コメントありがとうございます。

> もともとのミスコン反対の声明には、ICUのミッションとミスコンの整合性のなさが指摘されている。

他の大学のミスコンは問題ないと言う事ですか?
その場合は、ミスコン自体を女性差別的だとする一連の議論がおかしいことになりますね。

> 日本は他の先進国と比較して突出して男女の経済格差が大きい。

他の先進国と日本の女性の選好が同一だとは限りません。

> ミスコンはそれを助長し容認することにある。

男性の選好を助長する理由も、容認してはいけない理由も一切議論されていませんよね?

> 性差別と貧困の関連は明らかである。

母子家庭と貧困の関係と、性差別と貧困の関係は別の問題ですよね?
性差別があるから母子家庭が困窮しているわけではなく、母子家庭への社会保障が少ないので困窮しやすいのではないでしょうか?

地下猫 さんのコメント...

>他の大学のミスコンは問題ないと言う事ですか?

ICUのミッション「しっかりとした「個』を持ち、真のリーダーシップを発揮し、世界の問題を解決してゆく人材を輩出」と他の大学でのミッションに何の関連性もないとでもお考えなのですか?
そもそも大学とは学問の場ですよ。そこでは基本的に性別も容姿も関係ありません。性別も容姿も関係ない場で、女性だけが容姿で選別されることに問題がないとお考えですか?


>他の先進国と日本の女性の選好が同一だとは限りません。

あのですね、職場における昇進差別に関する数々の裁判例をご存知ないのですか?
仕事を選んだ女性も、昇進における差別が多くあるということは労働関連あるいは性差別関連での基本知識中の基本知識です。こんなことも知らずに人前でとくとくと発言しているのですか?
そもそも女性特有の選好は「ジェンダー」で説明されるのですが、本当になーんにも知らずに発言しているのですね・・・


>男性の選好を助長する理由も、容認してはいけない理由も一切議論されていませんよね?

性別の選好が大学という公的な場で促進されること自体が差別です。
例えば、性的役割分担を公的に促進することは完全な性差別です。
あまりに基本的なことなので、前提とされていたことであり、あなたは自分の無知を恥じて基本的な書籍を読むことからはじめるべきでしょう。


>母子家庭と貧困の関係と、性差別と貧困の関係は別の問題ですよね?

ここから説明しなければいけないとはめまいがします。
一般に女性が実務上の能力でなく容姿で判断されることと、賃金格差との関連が本当に理解出来ないのですか?

uncorrelated さんのコメント...

>>地下猫 さん
再度のコメント、ありがとうございます。

> 性別も容姿も関係ない場で、女性だけが容姿で選別されることに問題がないとお考えですか?

合法的な学生の活動なので、他に社会的影響が無いのであれば、特に何も問題が無いように感じます。

>> 他の先進国と日本の女性の選好が同一だとは限りません。
> あのですね、職場における昇進差別に関する数々の裁判例をご存知ないのですか?

なるほど、昇進制限がされて違法認定された裁判がありましたね。
しかし、現在も過去の傾向が続いている証拠も、それらの違法行為がどの程度の影響を与えているかという実証研究も無いように思えます。

>> 男性の選好を助長する理由も、容認してはいけない理由も一切議論されていませんよね?
> 性別の選好が大学という公的な場で促進されること自体が差別です。
> 例えば、性的役割分担を公的に促進することは完全な性差別です。

ミスコンが性別の選好を助長するような根拠が無いです。
男女格差が無いと言われる国でもミスコンは大々的に行われています。

>> 母子家庭と貧困の関係と、性差別と貧困の関係は別の問題ですよね?
> 一般に女性が実務上の能力でなく容姿で判断されることと、賃金格差との関連が本当に理解出来ないのですか?

実証データにより計量分析が行われていないので、仮説的に示唆されているものの立証されているように思えないと指摘しています。

一つ一つの議論が存在する事は分かるのですが、データ的に因果関係が特定されてはいないのではないかと言うのが、本エントリーで指摘したかったところです。
論を展開するのは簡単ですし、昔から当然のように言われている事があるのも分かるのですが、実際にデータで存在が確認されたのかは、また別の話だと言う事です。

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