2017年8月18日金曜日

ピンカーは近代哲学ではなくポストモダニストを含む現代のブランク・スレート信奉者を非難している

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ポモ好きの思想史研究者・仲正昌樹氏が、『ピンカーが(「人間の本性を考える」で)哲学における「ブランクスレート」説として念頭に置いているのは、“ポストモダン”ではなく、イギリス経験論に代表される近代哲学全般』と主張していたので検証してみたのだが*2、イギリス経験論自体は肯定もしていないが、批判もほとんどしていない。ピンカーが熱心に批判しているのは、彼らの説を極度に単純化した後の世代の心理学者・社会学者・思想家、特に20世紀以降に新たな科学的知見を政治的に拒絶した人々であって、近代哲学全般を批判していると言うのは勘違いに思える。また、デリダなどポストモダニストへの言及もそれなりの分量、ある。

2017年8月16日水曜日

地下鉄の科学 - トンネル構造から車両のしくみまで

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地下鉄は現代的な大都市には必ずある身近な交通機関なのだが、公共交通機関の中では地味な扱いである。地下だけに写真も撮りづらいから撮り鉄も被写体としづらいようだし、路線網だけに狭いスポットから全体を見渡せるわけでもないので、巨大建造物が大好きな30代以降の自称少年/少女も、わざわざ地下鉄を見に行こうとは行かないようだ。しかし、列車を地下に走らせるには穴を掘らないといけないし、視界が悪く密閉されているので運行上の危険も増す。少し知識を深めると、面白みが出てくるかも知れない。

2017年8月13日日曜日

政党観の前に“リベラル”の意味が世代ごとに異なる

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2017年8月11日の読売新聞の『政党観 世代で「断層」』と言う記事が話題になっていた*1。曰く、若年世代にとっては公明・共産が「保守」で、維新が「リベラル」であるそうだ。これは高知大学の遠藤晶久氏と読売新聞の共同調査なのだが、予備調査として行なわれたアンケート調査*2の結果を見る限り、かなり危ういものとなっている。集計データしか示されていないのではっきりは言えないが、政党観の前に“リベラル”の意味が世代ごとに異なる可能性が高い。

三浦瑠麗っち、政治家の質を見ると戦前回帰はあり得ないよ

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お茶の間で人気の国際政治学者・三浦瑠麗氏が、8月12日の東京新聞のインタビュー記事で、「国家観・歴史観を持ち、理念を掲げられる日本人が育たなくなっている」から、「(戦前)を全て否定するのは一面的で、過去を見誤っています」と主張している。戦史をしていた人なのに、第二次世界大戦の敗北が無かったことになっていて興味深い。戦前の政治家や軍部は、勝てないケンカを売って祖国を焼け野原にしたわけで、碌な国家観・歴史観・理念を持っていなかったとしか言いようが無く、意味不明である。

2017年8月11日金曜日

内閣を支持する/しない理由は大した情報にならない

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世論調査で安倍内閣の支持率が急落し、特に首相への信頼が急落していることが注目されている。調査結果なのでアレコレ言及したくなるのだが、どういう意味を持っているのかは判然としない。そこで、支持/不支持理由の内訳の変化の傾向と、それが内閣支持率にどの程度の影響を与えるのかを過去13年間のデータから計量的に確認してみたのだが、支持/不支持率を変化させる隠れた“要因”はほぼ一つであり、支持/不支持理由の“変化”は内閣支持率に大きな影響を及ぼしていなかった。

2017年8月6日日曜日

計量分析をすると、首相辞任のトリガーは内閣不支持率

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何かと話題の安倍内閣の支持率だが、韓国政治が専門の木村幹氏が『近年の政治状況において重要な「内閣支持率-与党支持率」はまだ16%以上のマージンを持っているので、与党内の反発により政権がゆらぐ状況ではない』と言う話をされていて、その指標が重要なのは本当かと思って検証したらそうでもなかったので報告したい。大半の人には「知っている」と言われそうなのだが、近年のデータを見る限り、首相辞任のトリガーは内閣不支持率だ。

2017年7月26日水曜日

完全失業率の上昇は、内閣支持率を低下させるか?

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産経新聞の『【田村秀男の日曜経済講座】内閣支持率は失業率次第 警戒すべきは緊縮財政勢力』なる記事で、内閣支持率の前年同期からの差分が完全失業率によって決定されるような主張がされていた。低い失業率を維持したら内閣支持率がいつか100%を超える事になってしまうので、明らかに不適切な統計処理を行なっているわけだが、好景気・高雇用ならば内閣支持率が高くなり、選挙で与党が有利であるのはよく耳にする風聞である。この法則に、どの程度の根拠があるのであろうか。計量的に検証してみよう。

2017年7月24日月曜日

ネット世論調査は回答者数が多くても、標本の偏りが激しい

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最近の安倍内閣の支持率急落を受けて、ネット界隈の安倍総理のファンが回答者数が多いネット世論調査ではもっと支持率が高いので、新聞社や通信社などが行なっている世論調査の結果がおかしいと言い出している。ちょっと前までは、アンチ安倍の人々が世論調査の数字を疑っていた。しかし、社会調査法のイロハで教わる事だが、明らかにネット世論調査の方がおかしいので、もっとそれらしい他の陰謀論を考えて欲しい。

2017年7月22日土曜日

為末大は努力信奉者ではあるが、優生思想の信者とは言えない

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自己啓発が好きな人々に信奉者が多い元陸上競技選手の為末大氏のあるツイートが、優生思想だと非難されていた。「一定数以上、価値を生み出す人がいなくなった国家は力を失いますので…それを回避する程度には私たちは頑張るべき」と言うツイートが、価値を産み出さない人が国家に不要と捉えられ、それが優生思想に思えるらしい。しかし、為末氏の主張と優生思想はかなりの相違がある。

2017年7月17日月曜日

多元的貧困の四次元ベン図

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東京財団税・社会保障調査会に『貧困率は低下したけれど… 「多元的貧困」アプローチの試み』と言う小塩隆士一橋大学教授のエッセイが出ていて、多元的貧困をベン図的な図を用いて説明していた。貧困を考えるときは所得だけではなく、教育や健康やセーフティ・ネットについても考慮する必要があると言う話で、その概念自体は貧困問題では常識的な話なのだが、以下のベン図的な図が気になった。

2017年7月14日金曜日

連合の残業代ゼロ法修正案は固定残業代制度と比較すべし

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関係団体で話を聞いていないと混乱が広がっているようなのだが、日本版ホワイトカラー・エグゼンプション、高年収人材の残業手当てを無しにする「高度プロフェッショナル制度」だが、連合が条件付容認に転向したと報じられている。反対から突然の条件付賛成に移ってネット界隈でも困惑が生じているようなのだが、連合が労働者を裏切ったと言う前に、現在既にある残業代ゼロ制度と連合案を比較してみよう。労働条件の悪化はもたらさない事がわかるはずだ。

2017年7月9日日曜日

りふれ派は肥満が増えていることに気づかない

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マルクス経済学者の松尾匡氏の2012年のウェブページの記事を真に受けているりふれ派のツイート*1のリツイートが伸びていた。注目されている主張は、1995年以降、エネルギー摂取量が減っているのは経済的事情が理由だと言うものだが、ちょっと論が粗い。生活スタイルの変化、高齢化の影響、さらに調査データにかかるバイアスを見落としている。

2017年7月7日金曜日

野田元総理「松尾貴史さん、私、当時は浪人中で、国会で質問できませんでした」

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記憶違いで意図せずデマを流してしまう事もある。文筆活動をしている人でも確認を怠るとそうなるし、コラムニストの松尾貴史氏も例外では無い。『野田佳彦氏は橋本龍太郎総理(当時)に向かって、本会議で「風邪を引いていた日本経済を消費税増税で肺炎にさせてしまった」と責めていた』とツイートしていたのだが、誤りである。野田佳彦氏は1996年から2000年までは落選のため国会議員では無い一方、橋本内閣は1998年7月までなので、消費増税後に国会で野田氏が橋本総理(当時)に質問をすることはできなかった。

2017年7月4日火曜日

加計学園問題の未確認・未弁解事項の整理

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臨時国家の開催がいるのか、野党4党が当初求めていた閉会中審査で済むのかはさておき、加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して政府の未確認・未弁解事項の整理しておきたい。未解明事項ではないから悪しからず。

  1. 「広域的」が意味するところで政府答弁に一貫性が無い
  2. 京都産業大学のための「関係省庁等からのヒアリング」が行なわれていない
  3. 既存獣医師養成課程は“国際水準”に永久に至らないのか?
  4. 今後の既存獣医師養成課程の新設における政府方針

安倍晋三@都議選前「(公明党が敵に回ってしまったのは残念ですが)公明党抜きの単独で勝利するいい機会(だと思って開き直りましょう)」

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今を遡ること6ヶ月弱、2017年3月14日に、安倍総理が自民党総裁として二階俊博幹事長と会談し、『地域政党「都民ファーストの会」と公明党が候補者を相互推薦する選挙協力に関し、「公明党抜きの単独で勝利するいい機会だ」と述べ』たことを、ひっぱり出してきて、「ここまで啖呵を切った安倍首相が、都議選後にテレビカメラの前で正式に敗戦の弁すら述べないのは、卑怯」と言っているのだが、無理がある批判である。

ネトウヨ「反対するなら対案を出せ」民進党「出していますよ」

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ネット界隈の安倍総理のファンが「反対するなら対案を出せ」と民進党にケチをつけているのを見かけることがある。現状維持も対案ではあるが、共通認識として解決しなければいけない問題があったときに、対案がないのに反対だけ連呼されても困るのは確かだ。民進党が何でも反対だけしているのであれば、やはり政権担当能力は無いと見なすしか無いであろう。しかし報道もされているわけだが、民進党は重要法案に反対するときには対案を出している。

2017年7月3日月曜日

東京都議会自民党の重鎮である内田茂氏の非協力的な態度を思い出そう

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2017年7月の都議選は小池百合子都知事率いる都民ファーストの会の圧勝、自民党の大敗に終わった。各種報道と政治家等のコメントを見ると最近の国政が自民党支持率を下げ、都民ファーストの会が受け皿になったと考えている。また、政策や実績が考慮されなかったと嘆いている人もいる*1。これらの見解は本当であろうか。1月からの投票先意向を見ると、都民ファーストの会の支持率は2月が42.3%とピークで、選挙直前は32.2%まで落ちてきていた*2

2017年6月30日金曜日

原田泰日銀審議委員のナチスの経済政策の政治効果の認識でおかしいところ

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リフレ派(だったはずの)原田泰日銀審議委員が都内の後援会で述べた、ナチス・ドイツの経済政策の政治効果についての持論が取り上げられている*1。以前から繰り返している「インフレもデフレも悪いが、デフレの方がより悪い」*2と言う二元論的リフレ派論法の一つだ。色々と問題があるのだが、ネット界隈のリフレ派には「原田発言のどこが問題なのか全くわからない」と言い出す人がいるので、分かりやすい問題点を指摘しよう。ヒットラーは雇用改善の前に独裁体制を確立している。

2017年6月29日木曜日

車椅子での航空機の搭乗に便利そうなモノ

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航空会社が準備をするから事前に連絡してくれと言っているのを招致で、あえて断り無く車椅子で突撃しては航空会社の不備を洗い出す活動家に格安航空会社(LCC)のバニラエアが“被害”にあったようだ*1

非常時のために身障者の搭乗数とその配置を調整したり、ボーディング・ブリッジを使わせてもらえないか空港と交渉したりするので*2、事前に連絡を入れるぐらい航空会社に気を使っても良いと思うのだが、飛行中に健常者に怪我や病気が生じることもあるわけで、アシストストレッチャーや階段昇降機がすぐに手配できないのも問題だ。そもそも何で階段などを使っているのであろうか?

2017年6月27日火曜日

国家戦略特区諮問会議の民間議員は、参入規制の撤廃か緩和にしか興味が無い

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加計学園系列の岡山理科大学の今治市の獣医学部の設置に関して「有識者議員による国家戦略特区に関する記者ブリーフィング」が行なわれ、民間の有識者議員がその正当性を説明していた話を確認してみたのだが、選ばれている有識者議員はミクロ経済学の教科書的に寡占市場をより競争的にすることにだけ問題関心があり、獣医師養成カリキュラムや感染症の水際対策、獣医師偏在問題にはほとんどない事が分かった。

2017年6月26日月曜日

「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と言う条件を、京都産業大学が満たしていたとして

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ネット界隈の安倍総理の支持者たちが、毎日新聞や朝日新聞が報じて来た、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と言う条件によって、京都産業大学が獣医学部新設を断念した言う話が、虚偽であると主張している。

2017年6月13日に国家戦略特区諮問会議の有識者議員が「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と言う条件で、京都府と京都産業大学の提案は対象外になっていないと証言したこと、『広域的に存在しない地域』と言う条件が出た後も一校限りという条件が公知されるまでは京都産業大学の活動が継続している事が挙げられている理由だ。

米海兵隊オスプレイの佐賀空港移転案と辺野古移設の無矛盾性

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外務省と防衛省が偽の米軍からの説明を造り上げ、普天間基地から徳之島への米軍基地移転を目指していた鳩山由紀夫元首相を、従来路線の辺野古移設に戻したとする説をジャーナリストの田中龍作氏が主張していたのを真に受けている人がいたので、この陰謀論の問題点を指摘しておきたい。問題の説明が正しいとすると、安部政権の米海兵隊オスプレイの佐賀空港移転案も無理になると言うのがロジックなのだが、航空機の機種ごとに後続距離が異なることを見落としている。

2017年6月24日土曜日

平成27年度年次経済財政報告にある構造失業率推定の説明の誤植

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構造失業率は過去データから推定される有効求人倍率が1のときの失業率と言う説明をしたら、それはおかしいと言う質問をされたが、それを前提に推定されている。

内閣府がやっている教科書的な推定では、UV分析を背景に置いていて*1、t期の失業率=t期の欠員率=t-1期の失業率(t-1期)となるところを長期均衡と見なしている。長期均衡では、失業率の分母である労働人口と欠員率の分母である仕事の口は一致するので、失業率と欠員率が等しくなるには、失業率の分子である求職数と欠員率の分子である求人数が一致する必要がある。求人倍率=求人数/求職数であるので、長期均衡の求人倍率は1となる*2

2017年6月21日水曜日

家畜やペットの数の割りに獣医師が少ない都道府県

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して、地域の獣医師不足の解決策として正当化されるような話をする人が多々いるのだが、そもそも地域の獣医師が相対的に少ない都道府県はどこなのかが分からないので、官邸が出していた都道府県別の獣医師数及び家畜数の資料を使って確認してみた。愛媛を含む四国が、目立って獣医師数が少ないと言うわけでは無いようだ。高知と徳島はマシな方である。

2017年6月20日火曜日

人々が実際に持つ倫理を考える「モラルの起源」

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倫理学と言えば、特定の倫理や道徳が持つ特徴や欠点を考えたり、特定の倫理や道徳から考えて物事の是非を考えたりと、規範的な議論がされる事が多い。遡れば、利己心から説明できるとしたホッブズや、共感にもとづくとしたヒュームなどの議論もあるわけだが、当時は研究手法が洗練されておらず、倫理や道徳の由来はあれこれ想像するしかなかった。最近は、社会人文科学でも実験が一般化したこともあり、実証的な研究も進んでいるようだ。「モラルの起源」は生物学や心理学の知見から、人々が実際に持っている倫理や道徳がどのようなモノかを紹介した本だ。

2017年6月16日金曜日

獣医学部新設防止は『岩盤規制』だったのか?

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して、安倍総理が「岩盤規制に穴を開けた」と言ったせいか、獣医学部新設防止は『岩盤規制』と言うことになっている。しかし、獣医学部新設防止は、緩和や撤廃が容易にできない規制とは言い難い。法律ではなく文科省の告示で規制されているだけだからだ*1

2017年6月15日木曜日

国家戦略特区諮問会議の有識者議員の証言で出てきた謎

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加計学園の獣医学部新設を巡り、よく分かっていない点が三つある。一つは、官邸が文科省に獣医学部新設を認めるように圧力をかけたのか否かだ。政治主導自体はおかしくないが、官邸は主導した事を否定している。一つは、獣医師需要が減少すると予測されているのに、獣医学部を増やす方向に舵を切った理由。一つは、既存学部が『広域的に存在しない地域』に限定した理由。こういう状況で、6月13日に八田達夫大阪大学名誉教授ら有識者議員が決定の妥当性を主張したのだが、官邸が文科省と折衝していたことが強く示唆する説明であったし、むしろ謎が深まる所があった。

2017年6月13日火曜日

財政政策を緊縮か反緊縮かの一軸で見ることなかれ

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ネット界隈のリフレ派の多くは、財政政策では反緊縮を合言葉にし、増税を嫌っている嫌税派でもある。外国事例や各種文献を持ち出しては、増税忌避を正当化しようとしているのだが、反緊縮を謳っていても反増税とは限らない。財政赤字の縮小ではなく、福祉予算の削減を緊縮と呼ぶことがある。財政政策を一次元では無く二次元で見るようにすると、リフレ派が参照している事例や文献は、リフレ派が求めているものではないことも多い。

2017年6月12日月曜日

獣医学部設置認可に関する安倍総理の介入余地

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して、官邸の弁明は奇妙な事だらけだ。報道各社が文科省職員に裏を取っているのに“怪文書”が確認できないと言い張っており、“怪文書”が文科省の文書だと証言する前川元次官の人格を別件を持ち出して非難し、さらに“怪文書”が示唆する獣医学部の設置認可に関して、客観証拠が出ているものに関してすら、官邸が関わった事実を否定しようと躍起になっている。

2017年6月11日日曜日

獣医師の過不足を考えるための数字

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部を設置認可に関して、獣医師の養成数を抑制するために新設を認めてこなかった*1文科省の方針がおかしいと言う主張を見かける。寡占市場で過少供給になっているので、獣医養成数を増やせと言う論法だ。特に、公務員獣医師、産業獣医師が不足していると言う主張がある。実際、2012年に全国知事会は、獣医養成数の増加を要請している*2。これを無批判に踏襲している人が多いのだが、実際の数字はどうであろうか。

2017年6月8日木曜日

階層移動のマルコフ連鎖モデル

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経済学徒向けの演習問題のものだからだと思うが、階層移動をイメージしたマルコフ連鎖モデルの有向グラフが流れてきた*1。演習問題だけに数値は推定されたものではないと思うが、日本のデータだとどのような値になるか興味を持っていた人もいるようだ。貧困や富裕は経済発展や家族構成によっても水準が変わるので、社会階層を定義するのは厄介なのだが、所得階層の数字は『国民生活基礎調査』で取れるので、数字を推定してみた。右上のグラフがその結果である(クリックで拡大する)。

2017年6月6日火曜日

行政改革に特区制度は必要か?

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現在の日本には構造改革特区、総合特区、国家戦略特区の三種類の特区があるが、民進党がその中の国家戦略特区の廃止を求める方針を明らかにした。これを「硬直した行政を打破しうる国民にとって有益な選択肢が無くなる」と批判している元官僚を見かけたのだが、日本において特区にそういう機能があるかは、しっかり考えた方が良いように思える。新たな行政の硬直化を招く場合もあるし、しっかり規制緩和を行なわずに、特権集団に“お友達”を加えて終わる事もあるからだ。

2017年5月31日水曜日

受動喫煙の害の疫学エビデンスは“事情を考えると”それなりある

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公共の場の間接喫煙対策は臭い煙たいと言う不快感の抑制で正当化しても良いと思っているのだが、どうも健康問題に落とし込まないと気がすまない性癖の人が相当数いる。はっきりしない面があると言われると、ショックのようだ。しかし、そう落ち込む事は無い。計量分析に伴う厄介な状況を認識しつつ疫学分析を見れば、受動喫煙の害のエビデンスはそれなりある。前のエントリーと逆な事を言い出して・・・などとは言わないように。

間接喫煙の発がんリスクは交絡バイアスで説明不可能なぐらい大きいのか?

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喫煙に大きなリスクがあることが分かっているし、動物実験では副流煙の健康被害が示されているので、間接喫煙の発がんリスクがあると見なす事自体は不自然でもないのだが、疫学的な計量分析は信憑性がそう高くない段階で留まっている。また、未知の因子が真の原因であり、間接喫煙はその交絡因子とたまたま相関しているだけと言う疑念は、ランダム化比較実験を行なえない以上、計量的には最後まで残る。

2017年5月29日月曜日

科学的に飲食店内の副流煙が有害と言えるのか?

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飲食店内などを原則禁煙(完全分煙された喫煙室は設置可)にしようとする健康増進法改正案に関して、賛否が色々とあるようだ。この改正の正当化をしたいあまりに、科学的なエビデンスを過剰に喧伝している人々がいるので批判したい。疫学調査から得られた統計は有意性も効果量も弱いものであって、喫煙習慣による発がんリスク上昇を知らなければ、そんなに強い信念を持てない分析結果であるはずだ。

2017年5月28日日曜日

加計学園問題:安倍総理のクローニー・キャピタリズム疑惑

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前川前事務次官の証言により官邸からのトップダウンで、加計学園系列の岡山理科大学が今治市に獣医学部の設置が認可された事が明らかになりつつある加計学園問題だが、何が問題なのか分からないと言う人を少なからず見かける。政治中枢にクローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)が蔓延っている可能性を示唆していることに気づいていないようだ。トップダウンで下した決定に公益性が認めれらなければ、そうである蓋然性はかなり高い。

2017年5月25日木曜日

安倍総理が憲法9条改正で民進党・前原誠司案に乗る

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前々からなのだが、民進党の前原誠司氏は、憲法条文からは自衛隊の位置づけが明確ではないことを指摘しており、前原氏の前にも同様のことを言っていた人はいると思うが、憲法9条に第3項を新設して自衛隊の位置付けを明記するよう主張している。2016年9月4日の民進党代表選におけるNHKの番組における討論でもそう主張していた。2017年5月3日、安倍総理はビデオメッセージでこれを踏襲した案を明らかにした。

2017年5月24日水曜日

ポストモダンはその修辞法と共に消えるべき

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物理学者のアラン・ソーカルがフランス現代思想における数学・科学用語の濫用を荒っぽい方法で批判した後、ポストモダン界隈の仲正昌樹氏がソーカルの批判は枝葉末節で本質的ではないと、ソーカル事件からポストモダン批判をする人々を批判しているそうだ。これに関して批評家の山川賢一氏が、仲正氏のポストモダン擁護を批判している*1

人工知能×布教文学×ポストモダン

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ディープラーニング界隈のエヴァンジェリスト松尾豊氏が「ディープラーニングと進化」と言う計算機工学と生命科学をごっちゃにした怪文書を書いていた。恐らくディープラーニングは素晴らしいという布教文学なのだが、ポストモダン的になっていてちょっとひどい。文意が取れない人も多いだろうが、ハチャメチャぶりを紹介しよう。

2017年5月13日土曜日

労働市場シグナリング仮説と外部効果の推定量

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大学で学んだ事を仕事に活かしているかと聞かれて、答えに詰まる人は多いと思う。高等教育を受けている人の生涯賃金が高い事は分かっているが、医療系専門職などを除けば大学教育が職能を高めているかは明確では無い。

名のある企業家に大学中退者は少なくない。文系どころか理系で研究開発に従事する人で学部の専門とは全く違う事をするケースも数多くある。プログラミングをしていると、大学の教育内容を使っていたりするので職能を高めそうな気はするが、大学に通っていなくても知識として習得できているのも確かである。

2017年5月11日木曜日

“オレの考えた最強の移民政策選手権”だった「移民の経済学」

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移民に関わる政策論争は昔からあるが、未だに議論は尽きていない。欧州では、中東やアフリカからの難民が社会的軋轢を引き起こしているし、中国でも周辺国から単純労働者が流れ込んで問題になっているようで、外国人労働者のポイント制を始めて入国管理を強化しており、日本でも生産年齢人口の減少を背景に、移民受け入れの是非が話されている。しかし、移民政策に関しての基本的知識を持つ人は多くは無い。

2017年4月19日水曜日

航空力学「超」入門

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航空旅客が一般的になって、飛行機が飛ぶことに違和感を感じる人はほとんどいなくなったと思う。しかし、飛行機がどのように飛んでいるのかを知っている人は、そんなにはいないはずだ。航空機の運行に関わらない大半の人に必要性は無いので今後も増えるとは思わないが、手ごろに説明してくれる良い本が出ていた。『航空力学「超」入門』は、副題にある飛行の原理に科学で迫ると言った本では無いが*1、縦士や機関士が使っていそうな単語の意味や、共通理解としていそうな簡単な微積分が入る程度の計算式を*2、図つきで丁寧に説明していく本だ。JALの航空実用辞典と似た内容になっている。

2017年4月15日土曜日

メカニズムデザインによる過剰予約時のやりくり法

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予約していても来ない客がいるため、航空会社は席数よりも多い予約を受け付けており、予約客が多くやってきた場合は、オーバーブッキングとして予約客の(大抵はやんわりとだろうが)搭乗拒否を行なっている。緊急かつ優先的に優待客や従業員を輸送しないといけないときに座席の余裕が無い場合も、同様にオーバーブッキングとして処理が行なわれる。

2017年4月14日金曜日

こども保険は嫌税政権での現実的な妥協案

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公的年金保険料を増額して未就学児の児童手当の上乗せと保育所の拡充を図る「こども保険」だが、保険と言うよりも所得分配政策に近いので、経済学者の島澤諭氏「違和感を感じる」、中田大悟氏が「理解に苦しむ」と批判している一方で、公的年金の賦課方式において子育てをしない家計が出てくるフリーライダー問題を緩和する機能があると、小黒一正氏が『「こども保険」の理論的な整理』でその意義を紹介している。

2017年4月13日木曜日

アサド政権はいまさら毒ガスを使ったのか?

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2017年4月4日、シリア北西部イドリブ県の反政府勢力地域で、アサド政権のシリア政府軍が散布した神経系ガスによって多数の住民が死亡したとされる事件が*1、欧米で非難されている。アサド政権を容認する姿勢を見せてきたトランプ大統領も、6日、シリア政府軍に駆逐艦から巡航ミサイルで攻撃を加えた。しかし、本当にアサド政権が化学兵器を使用したかについて、疑惑の声が上がっている。

2017年4月5日水曜日

21世紀の黒い経営学

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日本人から見ると米国企業の労働生産性や収益率は驚異的なのだが、中身はそんなに良くないかも知れない。どうも古いスタイルの経営学で強調されるような話によって、経営効率が増していると言うわけではないようだ。

2017年4月1日土曜日

米国が北朝鮮への軍事攻撃を避ける理由

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朝鮮戦争の再開につながると、中国人民解放軍が出てくる可能性が高いから。朝鮮戦争から考えると蓋然性は高いのだが、最近、これがすっぽり抜けている朝鮮半島情勢や安全保障の専門家がいる。戦争平和社会学者の北村淳氏の「米国で北朝鮮攻撃が議論の的に、日本は備えを急げ ソウルは火の海に、日本も報復攻撃されることは確実」でもそうなっていたし、フジテレビの3月29日のプライムニュースでも、佐藤正久氏、高永喆氏、渡部恒雄氏と詳しそうな人が出ているのに忘れ去られていた。

人文学は何の役に立つのか?

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個人が学費を払って学ぶ意義は何か、研究・教育に公的補助を与える意義は何かと言う質問に、医歯薬系など技能や資格の習得に直結しない分野の研究・教育者はいつも回答に困っている。もっとも、多額の費用と学習努力が必要な理工学分野の方が深刻で*1、専門的な事を熱心に勉強したいわけではないが、大学卒業資格は欲しいと言う層からの需要で補助金なしに経営が成り立ってしまうので*2、人文学分野の研究・教育者がこの問いに答える意欲は低い。だからと言って、理屈をつけられないわけでもない。

2017年3月29日水曜日

西欧のテロ犠牲者数は減っている

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最近の欧州や米国での自爆テロの報道が目に付くためか、過激派イスラム教徒のおかげで社会が不穏になっているような思う人もいるようだが、少なくとも西ヨーロッパ全体ではそう言うことはないようだ。Chart: Terrorist attack victims in Western Europe | Statista(以下、リンク先にあるグラフ;クリックで拡大)によると、テロによる犠牲者数は減っている。

2017年3月27日月曜日

地下水に関する環境問題が分かる本

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豊洲市場の地下水の汚染が話題なのだが、同種の話を良く知らなかったので手軽なアンチョコとして「地下水の科学」を拝読した。その重要性、構造や性質、利用史、枯渇や汚染やその他環境破壊について網羅的に紹介された本。日本地下水学会が環境問題を取材してきた共同通信社の科学部記者に書かせたもので、環境問題の側面から地下水を捉えたい人に丁度よいバランスになっている。科学とあるが、学問的な話は事細かには書いていない。築地市場移転問題にはほとんど関係が無いが、読んでおいて悪くない一冊。(目次や構成と合致しないが)以下のような話が取り上げられている。ただし、日本はともかく世界はどん詰まり感がかなりあるので、鬱のときは読まない方が良いかも知れない。