2017年6月24日土曜日

平成27年度年次経済財政報告にある構造失業率推定の説明の誤植

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構造失業率は過去データから推定される有効求人倍率が1のときの失業率と言う説明をしたら、それはおかしいと言う質問をされたが、それを前提に推定されている。

内閣府がやっている教科書的な推定では、UV分析を背景に置いていて*1、t期の失業率=t期の欠員率=t-1期の失業率(t-1期)となるところを長期均衡と見なしている。長期均衡では、失業率の分母である労働人口と欠員率の分母である仕事の口は一致するので、失業率と欠員率が等しくなるには、失業率の分子である求職数と欠員率の分子である求人数が一致する必要がある。求人倍率=求人数/求職数であるので、長期均衡の求人倍率は1となる*2

2017年6月21日水曜日

家畜やペットの数の割りに獣医師が少ない都道府県

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して、地域の獣医師不足の解決策として正当化されるような話をする人が多々いるのだが、そもそも地域の獣医師が相対的に少ない都道府県はどこなのかが分からないので、官邸が出していた都道府県別の獣医師数及び家畜数の資料を使って確認してみた。愛媛を含む四国が、目立って獣医師数が少ないと言うわけでは無いようだ。高知と徳島はマシな方である。

2017年6月20日火曜日

人々が実際に持つ倫理を考える「モラルの起源」

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倫理学と言えば、特定の倫理や道徳が持つ特徴や欠点を考えたり、特定の倫理や道徳から考えて物事の是非を考えたりと、規範的な議論がされる事が多い。遡れば、利己心から説明できるとしたホッブズや、共感にもとづくとしたヒュームなどの議論もあるわけだが、当時は研究手法が洗練されておらず、倫理や道徳の由来はあれこれ想像するしかなかった。最近は、社会人文科学でも実験が一般化したこともあり、実証的な研究も進んでいるようだ。「モラルの起源」は生物学や心理学の知見から、人々が実際に持っている倫理や道徳がどのようなモノかを紹介した本だ。

2017年6月16日金曜日

獣医学部新設防止は『岩盤規制』だったのか?

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して、安倍総理が「岩盤規制に穴を開けた」と言ったせいか、獣医学部新設防止は『岩盤規制』と言うことになっている。しかし、獣医学部新設防止は、緩和や撤廃が容易にできない規制とは言い難い。法律ではなく文科省の告示で規制されているだけだからだ*1

2017年6月15日木曜日

国家戦略特区諮問会議の有識者議員の証言で出てきた謎

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加計学園の獣医学部新設を巡り、よく分かっていない点が三つある。一つは、官邸が文科省に獣医学部新設を認めるように圧力をかけたのか否かだ。政治主導自体はおかしくないが、官邸は主導した事を否定している。一つは、獣医師需要が減少すると予測されているのに、獣医学部を増やす方向に舵を切った理由。一つは、既存学部が『広域的に存在しない地域』に限定した理由。こういう状況で、6月13日に八田達夫大阪大学名誉教授ら有識者議員が決定の妥当性を主張したのだが、官邸が文科省と折衝していたことが強く示唆する説明であったし、むしろ謎が深まる所があった。

2017年6月13日火曜日

財政政策を緊縮か反緊縮かの一軸で見ることなかれ

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ネット界隈のリフレ派の多くは、財政政策では反緊縮を合言葉にし、増税を嫌っている嫌税派でもある。外国事例や各種文献を持ち出しては、増税忌避を正当化しようとしているのだが、反緊縮を謳っていても反増税とは限らない。財政赤字の縮小ではなく、福祉予算の削減を緊縮と呼ぶことがある。財政政策を一次元では無く二次元で見るようにすると、リフレ派が参照している事例や文献は、リフレ派が求めているものではないことも多い。

2017年6月12日月曜日

獣医学部設置認可に関する安倍総理の介入余地

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部の設置認可に関して、官邸の弁明は奇妙な事だらけだ。報道各社が文科省職員に裏を取っているのに“怪文書”が確認できないと言い張っており、“怪文書”が文科省の文書だと証言する前川元次官の人格を別件を持ち出して非難し、さらに“怪文書”が示唆する獣医学部の設置認可に関して、客観証拠が出ているものに関してすら、官邸が関わった事実を否定しようと躍起になっている。

2017年6月11日日曜日

獣医師の過不足を考えるための数字

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加計学園系列の岡山理科大学の獣医学部を設置認可に関して、獣医師の養成数を抑制するために新設を認めてこなかった*1文科省の方針がおかしいと言う主張を見かける。寡占市場で過少供給になっているので、獣医養成数を増やせと言う論法だ。特に、公務員獣医師、産業獣医師が不足していると言う主張がある。実際、2012年に全国知事会は、獣医養成数の増加を要請している*2。これを無批判に踏襲している人が多いのだが、実際の数字はどうであろうか。

2017年6月8日木曜日

階層移動のマルコフ連鎖モデル

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経済学徒向けの演習問題のものだからだと思うが、階層移動をイメージしたマルコフ連鎖モデルの有向グラフが流れてきた*1。演習問題だけに数値は推定されたものではないと思うが、日本のデータだとどのような値になるか興味を持っていた人もいるようだ。貧困や富裕は経済発展や家族構成によっても水準が変わるので、社会階層を定義するのは厄介なのだが、所得階層の数字は『国民生活基礎調査』で取れるので、数字を推定してみた。右上のグラフがその結果である(クリックで拡大する)。

2017年6月6日火曜日

行政改革に特区制度は必要か?

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現在の日本には構造改革特区、総合特区、国家戦略特区の三種類の特区があるが、民進党がその中の国家戦略特区の廃止を求める方針を明らかにした。これを「硬直した行政を打破しうる国民にとって有益な選択肢が無くなる」と批判している元官僚を見かけたのだが、日本において特区にそういう機能があるかは、しっかり考えた方が良いように思える。新たな行政の硬直化を招く場合もあるし、しっかり規制緩和を行なわずに、特権集団に“お友達”を加えて終わる事もあるからだ。

2017年5月31日水曜日

受動喫煙の害の疫学エビデンスは“事情を考えると”それなりある

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公共の場の間接喫煙対策は臭い煙たいと言う不快感の抑制で正当化しても良いと思っているのだが、どうも健康問題に落とし込まないと気がすまない性癖の人が相当数いる。はっきりしない面があると言われると、ショックのようだ。しかし、そう落ち込む事は無い。計量分析に伴う厄介な状況を認識しつつ疫学分析を見れば、受動喫煙の害のエビデンスはそれなりある。前のエントリーと逆な事を言い出して・・・などとは言わないように。

間接喫煙の発がんリスクは交絡バイアスで説明不可能なぐらい大きいのか?

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喫煙に大きなリスクがあることが分かっているし、動物実験では副流煙の健康被害が示されているので、間接喫煙の発がんリスクがあると見なす事自体は不自然でもないのだが、疫学的な計量分析は信憑性がそう高くない段階で留まっている。また、未知の因子が真の原因であり、間接喫煙はその交絡因子とたまたま相関しているだけと言う疑念は、ランダム化比較実験を行なえない以上、計量的には最後まで残る。

2017年5月29日月曜日

科学的に飲食店内の副流煙が有害と言えるのか?

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飲食店内などを原則禁煙(完全分煙された喫煙室は設置可)にしようとする健康増進法改正案に関して、賛否が色々とあるようだ。この改正の正当化をしたいあまりに、科学的なエビデンスを過剰に喧伝している人々がいるので批判したい。疫学調査から得られた統計は有意性も効果量も弱いものであって、喫煙習慣による発がんリスク上昇を知らなければ、そんなに強い信念を持てない分析結果であるはずだ。

2017年5月28日日曜日

加計学園問題:安倍総理のクローニー・キャピタリズム疑惑

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前川前事務次官の証言により官邸からのトップダウンで、加計学園系列の岡山理科大学が今治市に獣医学部の設置が認可された事が明らかになりつつある加計学園問題だが、何が問題なのか分からないと言う人を少なからず見かける。政治中枢にクローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)が蔓延っている可能性を示唆していることに気づいていないようだ。トップダウンで下した決定に公益性が認めれらなければ、そうである蓋然性はかなり高い。

2017年5月25日木曜日

安倍総理が憲法9条改正で民進党・前原誠司案に乗る

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前々からなのだが、民進党の前原誠司氏は、憲法条文からは自衛隊の位置づけが明確ではないことを指摘しており、前原氏の前にも同様のことを言っていた人はいると思うが、憲法9条に第3項を新設して自衛隊の位置付けを明記するよう主張している。2016年9月4日の民進党代表選におけるNHKの番組における討論でもそう主張していた。2017年5月3日、安倍総理はビデオメッセージでこれを踏襲した案を明らかにした。

2017年5月24日水曜日

ポストモダンはその修辞法と共に消えるべき

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物理学者のアラン・ソーカルがフランス現代思想における数学・科学用語の濫用を荒っぽい方法で批判した後、ポストモダン界隈の仲正昌樹氏がソーカルの批判は枝葉末節で本質的ではないと、ソーカル事件からポストモダン批判をする人々を批判しているそうだ。これに関して批評家の山川賢一氏が、仲正氏のポストモダン擁護を批判している*1

人工知能×布教文学×ポストモダン

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ディープラーニング界隈のエヴァンジェリスト松尾豊氏が「ディープラーニングと進化」と言う計算機工学と生命科学をごっちゃにした怪文書を書いていた。恐らくディープラーニングは素晴らしいという布教文学なのだが、ポストモダン的になっていてちょっとひどい。文意が取れない人も多いだろうが、ハチャメチャぶりを紹介しよう。

2017年5月13日土曜日

労働市場シグナリング仮説と外部効果の推定量

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大学で学んだ事を仕事に活かしているかと聞かれて、答えに詰まる人は多いと思う。高等教育を受けている人の生涯賃金が高い事は分かっているが、医療系専門職などを除けば大学教育が職能を高めているかは明確では無い。

名のある企業家に大学中退者は少なくない。文系どころか理系で研究開発に従事する人で学部の専門とは全く違う事をするケースも数多くある。プログラミングをしていると、大学の教育内容を使っていたりするので職能を高めそうな気はするが、大学に通っていなくても知識として習得できているのも確かである。

2017年5月11日木曜日

“オレの考えた最強の移民政策選手権”だった「移民の経済学」

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移民に関わる政策論争は昔からあるが、未だに議論は尽きていない。欧州では、中東やアフリカからの難民が社会的軋轢を引き起こしているし、中国でも周辺国から単純労働者が流れ込んで問題になっているようで、外国人労働者のポイント制を始めて入国管理を強化しており、日本でも生産年齢人口の減少を背景に、移民受け入れの是非が話されている。しかし、移民政策に関しての基本的知識を持つ人は多くは無い。

2017年4月19日水曜日

航空力学「超」入門

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航空旅客が一般的になって、飛行機が飛ぶことに違和感を感じる人はほとんどいなくなったと思う。しかし、飛行機がどのように飛んでいるのかを知っている人は、そんなにはいないはずだ。航空機の運行に関わらない大半の人に必要性は無いので今後も増えるとは思わないが、手ごろに説明してくれる良い本が出ていた。『航空力学「超」入門』は、副題にある飛行の原理に科学で迫ると言った本では無いが*1、縦士や機関士が使っていそうな単語の意味や、共通理解としていそうな簡単な微積分が入る程度の計算式を*2、図つきで丁寧に説明していく本だ。JALの航空実用辞典と似た内容になっている。

2017年4月15日土曜日

メカニズムデザインによる過剰予約時のやりくり法

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予約していても来ない客がいるため、航空会社は席数よりも多い予約を受け付けており、予約客が多くやってきた場合は、オーバーブッキングとして予約客の(大抵はやんわりとだろうが)搭乗拒否を行なっている。緊急かつ優先的に優待客や従業員を輸送しないといけないときに座席の余裕が無い場合も、同様にオーバーブッキングとして処理が行なわれる。

2017年4月14日金曜日

こども保険は嫌税政権での現実的な妥協案

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公的年金保険料を増額して未就学児の児童手当の上乗せと保育所の拡充を図る「こども保険」だが、保険と言うよりも所得分配政策に近いので、経済学者の島澤諭氏「違和感を感じる」、中田大悟氏が「理解に苦しむ」と批判している一方で、公的年金の賦課方式において子育てをしない家計が出てくるフリーライダー問題を緩和する機能があると、小黒一正氏が『「こども保険」の理論的な整理』でその意義を紹介している。

2017年4月13日木曜日

アサド政権はいまさら毒ガスを使ったのか?

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2017年4月4日、シリア北西部イドリブ県の反政府勢力地域で、アサド政権のシリア政府軍が散布した神経系ガスによって多数の住民が死亡したとされる事件が*1、欧米で非難されている。アサド政権を容認する姿勢を見せてきたトランプ大統領も、6日、シリア政府軍に駆逐艦から巡航ミサイルで攻撃を加えた。しかし、本当にアサド政権が化学兵器を使用したかについて、疑惑の声が上がっている。

2017年4月5日水曜日

21世紀の黒い経営学

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日本人から見ると米国企業の労働生産性や収益率は驚異的なのだが、中身はそんなに良くないかも知れない。どうも古いスタイルの経営学で強調されるような話によって、経営効率が増していると言うわけではないようだ。

2017年4月1日土曜日

米国が北朝鮮への軍事攻撃を避ける理由

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朝鮮戦争の再開につながると、中国人民解放軍が出てくる可能性が高いから。朝鮮戦争から考えると蓋然性は高いのだが、最近、これがすっぽり抜けている朝鮮半島情勢や安全保障の専門家がいる。戦争平和社会学者の北村淳氏の「米国で北朝鮮攻撃が議論の的に、日本は備えを急げ ソウルは火の海に、日本も報復攻撃されることは確実」でもそうなっていたし、フジテレビの3月29日のプライムニュースでも、佐藤正久氏、高永喆氏、渡部恒雄氏と詳しそうな人が出ているのに忘れ去られていた。

人文学は何の役に立つのか?

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個人が学費を払って学ぶ意義は何か、研究・教育に公的補助を与える意義は何かと言う質問に、医歯薬系など技能や資格の習得に直結しない分野の研究・教育者はいつも回答に困っている。もっとも、多額の費用と学習努力が必要な理工学分野の方が深刻で*1、専門的な事を熱心に勉強したいわけではないが、大学卒業資格は欲しいと言う層からの需要で補助金なしに経営が成り立ってしまうので*2、人文学分野の研究・教育者がこの問いに答える意欲は低い。だからと言って、理屈をつけられないわけでもない。

2017年3月29日水曜日

西欧のテロ犠牲者数は減っている

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最近の欧州や米国での自爆テロの報道が目に付くためか、過激派イスラム教徒のおかげで社会が不穏になっているような思う人もいるようだが、少なくとも西ヨーロッパ全体ではそう言うことはないようだ。Chart: Terrorist attack victims in Western Europe | Statista(以下、リンク先にあるグラフ;クリックで拡大)によると、テロによる犠牲者数は減っている。

2017年3月27日月曜日

地下水に関する環境問題が分かる本

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豊洲市場の地下水の汚染が話題なのだが、同種の話を良く知らなかったので手軽なアンチョコとして「地下水の科学」を拝読した。その重要性、構造や性質、利用史、枯渇や汚染やその他環境破壊について網羅的に紹介された本。日本地下水学会が環境問題を取材してきた共同通信社の科学部記者に書かせたもので、環境問題の側面から地下水を捉えたい人に丁度よいバランスになっている。科学とあるが、学問的な話は事細かには書いていない。築地市場移転問題にはほとんど関係が無いが、読んでおいて悪くない一冊。(目次や構成と合致しないが)以下のような話が取り上げられている。ただし、日本はともかく世界はどん詰まり感がかなりあるので、鬱のときは読まない方が良いかも知れない。

2017年3月25日土曜日

森友学園国有地売却不正疑惑を決着に導くための単純な方法

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国有地売却及び小学校の設置認可に政治関与が無かったかが国会で追及されている森友学園問題だが、政治家や財務官僚などに政治関与が無かったか聞いて回ると言う茶番になっている。自ら関与があったと言うはずがなく、もう少し客観的な証拠を固める方が建設的だ。国有地売却価格が適切であったかについてまだ決着がついていないので、そこの関連部分を攻める方が適切であろう。見積もりが不適切である事を証明できれば、官僚の怠惰と政権与党の不監督もしくは政治関与のどちらかがあった事になる。

2017年3月24日金曜日

キミはFTPLが苦手なエコノミストなんだね!

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エコノミストの安達誠司氏が『「シムズ理論」が日本経済のデフレ脱却に有効である理由』と言うエッセイを書いているのだが、あまりFTPLを理解していないようなので突っ込んでおきたい。数理モデルを確認せずにその解説文をつなぎ合わせてFTPLを理解しようとして、失敗した気がする。

2017年3月23日木曜日

日銀券が日銀の負債である理由

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昔の紙幣は兌換銀行券と言って、金や銀などの貴金属との交換が保証されたものであったから、中央銀行にとって発行した紙幣が負債であるのは明白であった。一方、現在、日本銀行が出している紙幣は不兌換で、法的に何かの返済義務を負っているわけではないから、その負債性が見えにくくなっている。償還日がない発行済紙幣は、日銀のバランスシートの負債ではなく純資産(資本)に計上すべきと言う声もそこそこ聞かれるぐらいだ。しかし、日銀が状況に応じて日銀券の回収を行なう義務を負っているからこそ、日銀券の価値と機能が維持されている。だから、日銀券はやはり負債と考えるのが適当だ。

2017年3月21日火曜日

豊洲市場の地下水の汚染濃度上昇で、安全なのに政治的に難しくなった築地からの移転

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専門家会議主導による第9回目で異常検知された調査井の再検査によって、豊洲市場の地下水の汚染濃度上昇が確認された。調査井から水を抜き取るパージ後、採水までおく時間を色々ととって確認したところ、採水までの時間が分析結果に与える影響はほとんどない事も確認された。さらに、第8回目までの実施手順について、問題となる部分は無かったと結論された。

2017年3月17日金曜日

安達誠司氏のFTPLが量的緩和無効の根拠にならない論について

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エコノミストの安達誠司氏が「現代ビジネス」で、(1)FTPLは1990年代後半にゼロ金利制約下のインフレ説明用に誕生した、(2)拡張的なモデルまで考えればFTPLは量的緩和無効の根拠にならない、(3)理論的には政府支出の拡大と金融引き締めが無いと破綻しないと色々と勘違いしたかうがった話をしており、(4)FTPLを「机上の空論」としている人々の根拠についても把握できていないようなので指摘しておきたい。

2017年3月13日月曜日

崔順実ゲート事件の隠蔽と捜査非協力が弾劾理由

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3月10日に朴槿恵大統領が弾劾となり罷免された。正直、意外な面もあるのだが*1、裁判官8人全員の賛成であるので、韓国の基準では朴槿恵大統領が重大な違反を犯したのは自明なのであろう。憲法裁判所がどのような事実認定を行い、それがどの法令に違反したと認定したのかが気になるので判決文を探してみたら、意外な方向から弾劾理由をつけていた。

2017年3月11日土曜日

貯蓄で国債はファイナンスされていないと言うMMT信者の議論の問題点

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非主流派経済学と言えばマルクス経済学を想像する人が多いと思うが、最近はMMT:Modern Monetary Theoryと言うものが出てきた。数理モデルや計量分析に頼らず、文化人類学の知見を断片的に取り入れて教条的な議論を展開しているようなのだが*1、その信奉者が民間貯蓄で国債はファイナンスされていないので、民間貯蓄が少なくなっても財政破綻しないと言い出している。高齢化で貯蓄が減少して国債消化が不可能になると言うマクロ経済学者の警鐘に納得がいかないらしい。名目上は破綻しないのはそうであろうが、高インフレを招く理屈はあるので、その論理を整理してみよう。

2017年3月7日火曜日

豊洲市場の地下水のベンゼン濃度急上昇をどう捉えるべきか?

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9回目の地下水のモニタリング調査で、ベンゼン濃度が環境基準の79倍まで急上昇した理由について、あれこれ憶測が飛んでいる。9回目の調査業者が不適切な調査を行なったので異常値が出た、8回目までの調査業者(複数)が不適切で汚染を見過ごしていたなどと色々と言われている。

さて、賑やかで楽しい事になっているが、9回目が適切だったと主張するのは無理筋なようだ。他の数字とつき合わせると9回目の結果が極めて異常であり、証言から9回目は東京都も業者も調査精度を最優先にして仕事をしようとはしていなかった事がわかる。再調査でびっくりする可能性が無いわけではないが、今の数字自体は無価値に近い。

東京都がしっかり地下水の調査を監督していなかったと言う批判はあると思うが、豊洲移転の是非を決めるような材料ではない。そもそも食材の安全性や市場関係者の健康に影響が無い地下水の汚染をそう気にする必要はないので、事態の混乱だけが気になるわけだが。

2017年3月5日日曜日

言葉が通じても話は通じない・英米編

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京都の婉曲的な言い回しを理解できない他地域の人は多いとされるが、こういう事は日本語に限った話ではない。英米でも言葉が通じても話は通じないとされていて、致命的な問題を引き起こすときがある。朝鮮戦争のときに、連合国側で英国将校が英国流の控えめな表現で戦況不利を米軍の上官に伝えた所、増援もされず撤退許可も降りず、健闘したもののほとんど捕縛された逸話がよく知られている*1が、他にも色々とあるのであろう。定期的に英米の言い回しの相違のリストを見かける。昨日も一つ流れてきた*2

2017年3月3日金曜日

不変量とはなにか―現代数学のこころ

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結局は証明しないと始まらない数学は、一般書の題材に向かない分野であると思う。最後はやはり「教科書を読め」になってしまうのだが、それでも何だか面白い紹介本はある。2002年に出た「不変量とはなにか―現代数学のこころ」もそういう類の本で、2013年にちくま学芸文庫で「不変量と対称性」と書名を少し変えて改訂新版が出ている。偶然、古い版を手にとったのだが、内容はそうは変わらないと思うので紹介したい。有名な定理の名前を掲げているわけではないのだが、数歩先の数学の切り口が見えるワクワク感がある中身だと思う。

2017年2月28日火曜日

徴税権の資産価値が750兆円?

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衆議院の公聴会に高橋洋一氏の説明を批判した『財政再建は完了していない。』と言うエントリーの「徴税権が750兆円?」と言う部分について。750兆円と言う評価額も怪しいと言う指摘はその通りなのだが、会計の原則に反している方を忘れてはいけない。

フィリップスカーブは成り立つとは限りません

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広く知られる雇用/経済成長率とインフレ率のトレードオフの関係だが、不適切なマクロ金融政策であっさり壊れることが知られている(Lucas Islands Model)。また、そこそこ適切なマクロ金融政策をとっていても、観察されなくなる事もある。少なくとも、イギリスのデータを見ても成り立っている気配は無い。2011年にVAT税率引き上げがあるとは言え、トレードオフの関係は見られない。

2017年2月27日月曜日

リフレ派が非ケインズ効果を主張する

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嫌いなモノに片っ端から文句をつけると、整合性が取れなくなることはある。そういう事例をちょっと見かけたので、指摘しておきたい。学術分野の人や文筆活動をしている人が言っているのはなく、他の仕事をしている人のツイートなのでちょっと意地悪なのだが、陥りやすい所であるので。さて、問題のツイートを見てみよう。

インフレが消費を喚起するとは限らない

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日本でマクロ金融に興味がある人にはほぼ常識でも、ネット界隈では意外に知られていない故事がある。物価上昇率が高いと買いだめなどで消費(性向)が上昇すると思われているのだが、実際のところそうとは限らない。

実際、オイルショックのときには、低所得者層を中心に消費が抑制された。古賀・藤中・原(1977)は、「(23.2%と昭和25年(1950年)以降最高のインフレ率の)昭和49年の実質所得の低下期において,勤労者家計の消費性向が低下し,貯蓄率がますます高まる」と指摘し、さらに「消費性向の低下は低所得層ほど大幅」としている。

2017年2月23日木曜日

移民政策に関して上野千鶴子を批判する北田暁大の作文が

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社会学者の北田暁大氏が、昔の指導教官の上野千鶴子氏を批判している。社会学者の師弟対決なんて「ママ、あれなに?」「ダメよ、見ちゃダメ」案件なのではあるが、上野氏はきっと全スルーして対決にならないので、論点が錯乱している文章に文句をつけたい。つまり、低賃金外国人労働者に「家事/ケア労働」を任せ、日本人女性に高度技能職に就いてもらうことで、経済成長率を引き上げるべきだと考えているのであれば、どこかにはっきり書いて頂きたい。多文化主義が受け入れられない事による、移民増加による社会的不公正と抑圧と治安悪化は、北田氏が念頭に置いている政策の障害であって、北田氏が推進したい政策ではない。目的を隠して、目的に障害が無いことだけ主張し続けても、意味不明である。

2017年2月22日水曜日

シムズ式脱デフレ策に乗るべきか?

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インフレ目標達成までの消費税増税延期をすべきと言うシムズ式脱デフレ策が、マクロ金融政策に興味がある人々の間で話題になっており、国会質問でも言及されていた*1。日銀が国債の4割以上を買い占めるという大規模な量的緩和にも関わらず、未だにインフレ目標に未達の現状から、一部の量的緩和信奉者以外には金融政策の限界についてコンセンサスがあるようだ。消去法でシムズ式脱デフレ策は有力なデフレ対策になるわけだが、今から乗るべきかと言うと疑問符がつく。

FTPLでも財政破綻はする

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将来的な基礎的財政収支の黒字化を否定する人は少なくない。増税せずに財政赤字を放置してもインフレになるだけなので財政再建不要、日銀が国債を買って通貨供給すれば財政再建は完了などと言うような主張を聞いたことがある人は多いと思う。最近、こういう事を言ってきた人がFTPLに言及しているのを見かけるのだが、FTPLは彼らの説の強化には使えない。何か勘違いしているようだ。この理論、最後はあっさり財政破綻する。政府余剰の割引現在価値がマイナスになったらゲームオーバーで、幾ら物価が上がっても均衡しない。

2017年2月20日月曜日

世界はデフレでも成長している

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国際決済銀行(BIS)のペーパーで、歴史的には世界はデフレでも成長している事を説明しているモノ*1が流れていたのだが、この世の問題を全てデフレに帰着しがちな人に読ませたいものとなっていた。1870年から2013年までの38の国と地域を対象にした分析を行い、大恐慌を除けば消費者物価の下落は経済成長に影響を与えているのか怪しい一方、資産価格の下落は影響を与えていると言えるそうだ。このペーパーを読む限り、そう頑張って脱デフレをする必要は無さそうである。

2017年2月16日木曜日

FTPLでは量的緩和の効果は否定されている

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ネット界隈のリフレ派で、FTPLとリフレーション政策の中核である量的緩和が親和的だと言い出している人がいる。FTPLを使ってインフレ誘導ができると聞いて、インフレ誘導策であるはずの量的緩和と方向が同じと発想したのだと思うのだが、FTPLの代表的論文にある数式を確認すると、そこでは量的緩和の効果は否定されている。

2017年2月15日水曜日

消費増税後も家計消費はある意味低迷していなかった

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ネット界隈ではもちろん、メディアにおいても2014年の消費増税後に消費低迷が言わるようになって久しい。家計調査や商業動態統計では確かに低迷しているし、半年前までのGDP統計でも家計消費支出は低迷していた。しかし、増税による不景気が生じたはずなのに完全失業率は低下していき、雇用者報酬も増加した*1。消費と雇用に齟齬が生じていたわけで、これが一つの謎であった。だが、少子高齢化で医療や介護サービスへの需要が増えている事に気づくと、このパズルはあっさり解ける。

2017年2月13日月曜日

高齢化の影響を除外すれば、日本も成長している

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ネット界隈には今の失業率でも景気が悪いといい続けている人々は相当数いて、最近はその根拠として日本だけ一人あたりでも成長していないような事を言っている。確かにGDP成長率どころか、一人あたりGDP成長率でもぱっとしない数字が出てきているのだが、どちらも少子高齢化の影響を受けている事に気づいていないようだ。かつて白川日銀総裁(当時)が指摘していた事の請け売りだが*1、生産年齢人口一人あたりのGDPで見ると、少なくとも現在の日本経済は悪くは無い。

B/Sが肥大した日銀に可能なインフレの抑え方

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インフレ目標達成まで消費増税先送りと言うシムズ式脱デフレ策に対して、財政政策の拡大によってインフレ加速的な経路に乗ってしまうのでは無いかと危惧が出ている*1。シムズ案ではインフレになったら増税が待っていて、理論的にも経験的にも増税は有効なインフレ抑制策であることから考えると、少し神経質かなと言う気もするが、税制変更には時間がかかるので、一般的な金融政策が麻痺している現状に不安があるのも確かだ。日銀が出来る手を考えてみたい。