2015年1月10日土曜日

アベノミクスはいつから始まっているのか?

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前のエントリーに関して、2012年11月以降の銀行貸出量の変化はアベノミクスによるものだと言う反論が来た。株価や為替レートと異なり、銀行貸出量は投機的な変化はしない事を見落としているようだ。いつもリフレ派の誰かが主張しているように、金融政策が効果を持つには時間がかかる*1

2012年11月14日に解散が決定するが、黒田バズーカこと異次元緩和が決定されたのが4月4日になる。第二次安倍内閣として初めての編成した予算の執行も、4月以降になる。2013年3月まではアベノミクスの効果ではないと考えるべきであろう。為替の変化が投資を促進したと言う主張も、瞬間的に投資を増やすのは困難であるから、一ヶ月後に銀行融資が増えた理由にはならない*2

なお、反論エントリーに「法定準備預金がギリギリしかなければ、ちょっとした経済ショックで法定準備率を下回ってしまうので、怖くてなかなか貸出できない」とあるのだが、高度成長期を含めてゼロ金利になる前はギリギリしか日銀準備預金に積んでいなかったから。超過準備(≒ブタ積み)は今から見れば、ほとんどゼロ。銀行貸出量の変化の説明といい、想像力を働かせすぎかも知れない。また、「何やら勝手に線を引いて」ともあるが、回帰直線なので勝手に引いているわけではないから。

2011年から貸出量が増えた理由が気になるらしいので、最後に一つ見るべき指標を提示したい。民間企業設備投資が2010年第2四半期から上昇に転じている。完全失業率や有効求人倍率も、2010年ごろから改善している。アベノミクスが始まる前から経済状況は変化していた。目立った景気対策は無かったと記憶している。多かれ少なかれ経済にはショックを自然解消する機能があると言うことであろう。

追記(2015/01/11 03:42):金融政策の効果に時間がかかると言う部分に対して、コメント欄でhimaginary氏がある論文の「過去の金融緩和局面で、上位業態の中小非製造業向け貸出が景気先行的に増加した」と言う部分を引用して反論(?)しているのだが、その論文で主張されているのは金融緩和→貸出増加→景気改善であって、問題エントリーが主張する金融緩和前の貸出増加ではないと思われるので意図が理解できない。また他の研究、例えばBarnanke and Blinder(1992)を見てみると、金融政策(金利の変動)は半年ぐらい経たないと融資に影響しないようだ。

追記(2015/01/11 05:18):反論エントリーが出ていて、スルーしようかと思ったのだが、himaginary氏がつっ込めと言うので問題点を指摘したい。反論エントリーでは、期待インフレ率が上がり、実質金利が下がったので、銀行貸出が増えたと主張している。期待インフレ率の代理変数のBEIの変化を確認していないようだ(BEIの推移 | 日本相互証券株式会社)。上昇していくのは2月以降。

仮に2013年2月以降をアベノミクスの効果としても、2011年6月から2013年1月までを見ても銀行貸出量は増えている事実は変わらない。先行研究を見る限り金利が変化して融資が増えるまで半年ぐらいのラグはありそうだし、消費税の影響でBEIが上がった部分もあるのにも注意するべきだし、物価連動債の供給が止まっているのでBEI自体の信頼性がイマイチと言う話もあって、そもそも解釈が難しい指標なわけだが。

追記(2015/01/12 11:21):2011年の融資拡大は、震災による原発停止による電気・ガス・熱供給・水道業への融資増加が主ではないかと言う指摘があった。2010年12月から2013年12月の貸出先別貸出金を確認したところ、確かに2010年-2011年は、2012年-2013年と比較して、同項目の増加が1.4兆円ぐらい多い。しかし2011年-2012年は824億円まで縮小するので、アベノミクス以前に銀行貸出が増えていたと言う論点には影響しない。

*1効果が見えるまで2年も3年もかかるものではないと思うが。

*2もし為替に対して迅速に反応して投資が増えるのであれば、これだけの円安であれば既にもっと投資が増えていそうである。

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