「日本の財政関係資料」を眺めると、1991年には36.2%だった国債残高のGDP比は、2014年度には140%を超え、一般会計歳入の43%が公債金に頼っていることが分かる。
これだけで債務増加ペースが深刻な状況であるのが分かるが、純債務のGDP比が低い事を持ち出して、楽観的な見通しと増税の不要を説く人がいる*1。しかも統合政府と言い出し、日銀保有分の国債は無問題のように言い出した。とにかく増税が嫌なのであろうが、おかしな議論になっている。
まず、純債務のGDP比を見ても、その増加ペースが急激なのは変わらない。2008年度に317兆円だった純負債は、2012年度に477兆円になっている。資産が4.6兆円減る一方で、負債が135兆円増えたためだ(平成24年度「国の財務書類」の貸借対照表の概要 : 財務省)。
次に、政府は収益を生まない売却不可能な資産を大量に抱えている事を認識しよう。ダムや道路は資産計上に適さない。国際機関などへの出資金も、売却可能な資産ではない。だから、バランスシートは民間企業のように評価してはいけない。
最後に統合政府だが、政府と日銀のバランスシートを合算処理するならば、日銀の負債(日銀券)を負債計上しないといけない。日銀の資産(保有国債)だけ消滅するのはおかしい。そもそも内国債の最終的な問題は、国債の市中消化が出来ずに日銀が買い取り、通貨量が増大してインフレになることだから、問題解決になっていない。
長期金利は低い水準を維持(厳密にはここ1年間で低下した)しているし、インフレ率も円高と増税の影響を除けばほぼゼロとなっている。今のところは安泰。しかし、今のペースで累積債務と歳入の公債金比率が増加していって、低金利と低インフレを維持できるかは不安がある*2。
*1「[経済]日本のバランスシート、ワインシュタイン、財政問題」
*2日本政府は、かなり長い間、ドーマー条件を満たしていない。社会保障費の増加で、今後も満たす見通しは立っていない。Arai and Ueda(2012)は世代重複モデルを用いたカリブレーションで維持可能な基礎的財政収支の赤字と経済成長率を分析している。Imrohoroglu and Nao Sudo(2011)はOLGでは無いが実質3%成長、消費税15%でも破綻するとしている。
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