2015年1月11日日曜日

生産年齢人口から「失われた20年」を振り返る

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「失われた20年」と言うバブル崩壊後の日本経済の低成長を表す言葉がある。これを「他の国は成長し続けているのに、日本は成長なし」などと大げさに表現している人は良く見かける。GDP成長率で見ると、確かに低成長だ。しかし、少子高齢化と言う要因を考慮すると「失われた20年」の存在から疑わしいものになる。生産年齢人口あたりの成長率や就業率を見てみよう。

1. 日本は先進国の中では高い率で成長している

21世紀に入ってから日本の生産年齢人口あたりの成長率は高い。下は白川元日銀総裁が作成した資料にあったグラフだが、実質GDP成長率が低い一方で、生産年齢人口あたりの成長率が高い事を端的に示している。

2. 生産年齢人口の減少は942万人と少なく無い

多少の生産年齢人口の減少ぐらい、女性の労働参加率の上昇や技術進歩で相殺できたはずだ言う人も多いので、ダメ押しになるが、どれぐらいの規模か確認しておこう。ピークの1995年から、2014年は生産年齢人口が942万人減っている。率にして10.8%の減少だ。生産年齢人口には病人や生徒や学生も含まれるし、専業主婦が外部労働可能とも限らないので、全員が働けるわけではない。だから生産年齢人口の減少は、労働供給の減少になる。女性の労働参加率も上昇しているのだが、補い切るには至っていない。就業者数も385万人、減少している。

3. 生産年齢人口一人あたり成長率の低迷と回復

成長に低迷期が無かったわけではない。成長率は1998年から2000年は低迷している。不良債権問題やアジア金融危機などが問題になったのはこの頃だ。この低迷期があるので、その遅れた分だけ成長が速い面もある。ノーベル賞経済学者のクルッグマンが1993年から米国と欧州と日本を比較していたが、それだと2013年になってようやく同じ水準となっている。

4. 労働参加率の低下と回復、そして上昇

低成長は雇用の悪化をもたらしがちだ。労働参加率は1998年から2002年まで低下しており、1997年の水準を超えるのは2006年になってからだ。しかし、ここ2年間はとても高い水準まで上昇している。この指標を見ると「失われた7年間」は確かにあったように思えるが、20年は誇張としか言いようが無い。

5. 男女別労働参加率を見ると違いがある

雇用の増加は、実は女性の労働参加の高まりに支えられている。男性の労働参加率が90年代前半の水準に戻るのはようやく2007年であり、さらにリーマンショック後の落ち込みから未だ回復仕切れていない一方で、女性の労働参加率は2004年から高まってきている。25から54歳では、米国を超えたそうだ(NY Times)。男性視点からは、失われた17年に感じるかも知れない。

6. 雇用形態の変化が大きい

非正規雇用の増加も雇用回復を感じさせない点であろう。生産年齢人口の減少が雇用形態にどう影響しているかは明白ではないが、非正規雇用に適用しやすい女性の労働参加が非正規雇用率を引き上げている面もあるであろうし、後進を管理する仕事が減っていることから、正規雇用の一つの機能である管理職へのニーズは減っているのも理由としてあるだろう。正規雇用であっても万年平社員(もしくは部下の無い役職者)は増えているはずだ。

7. 人口動態の変化は念頭に置いておく必要がある

「失われた20年」を振り返ると、生産年齢人口の減少とそれに対応しようとする社会変化の影響が甚大である事が分かる。各種経済指標の判断では、人口動態の変化を常に加味していく必要がある。加味した場合の日本経済のパフォーマンスは、改善の余地があるかは別として、全体としては悪く無い。マクロ経済政策でさらなる改善の余地が無いとは言えないが、高度成長期のような経済成長は不可能に思える。

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