2013年9月10日火曜日

消費税率の引き上げを止めたい人へ

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安倍総理が消費税率の引き上げ決定を保留していることから、まだ消費税率の引き上げを止められると主張している人々は少なく無いのだが、お気の毒だが分が悪い。

経済的、政治的状況を見るに、外堀は埋められていると言えるであろう。景気は決して悪く無いし、財政状況は間違いなく悪く、歴史的教訓は強い説得力を持たず、与党の政治家に増税派が多い。

1. 景気が悪く無い

景気が悪く無い。2013年7月の完全失業率は3.8%と過去15年間で最も低い数字となった。8月の企業倒産は22年5カ月ぶり低水準となっている(日経)。4~6月期のGDP速報値は情報修正され、年率換算で実質3.6%と高い数字となっており、民間設備投資も増えている(時事ドットコム)。東証一部上場企業の4~6月期の純利益も、2007年に次いで2番目に多く、リーマン・ショック前の水準を回復した(FNN)。ゼロ金利制約下で財政再建は経済に良く無い*1と言っても、これでは説得力が余り無い。

2. 財政状況は悪い

財政状況は悪い。GDP比で224.3%と言う債務残高もさることながら、歳入の半分が国債で賄われている状況で、さらに少子高齢化を背景にした社会保障費の増加から歳出の拡大が予想されている。問題は絶対値ではなく時系列的な状態で、勢い良く上昇していくグラフの伸びは、十分に財政破綻、つまり中央銀行の財政ファイナンスに追い込まれる状態を想像させるものだ(財務省)。2007年に減っているが、上場企業の利益が過去最高を記録する好景気だった。

3. 歴史的教訓は増税延期に説得的では無い

歴史的教訓は増税延期に説得的ではない。1997年に消費税率を5%にしたから不景気になって税収が減ったと言う主張は、所得税・法人税の減税効果を計算すると説得的ではないようだ。1991年度と2009年度で、名目GDPは473.6兆円と474.0兆円でほとんど差が無いのに、国と地方をあわせた一般政府税収は101.0兆円と76.6兆円で大きな差がついている*2事を指摘すると、どうも大半の人は納得してしまう。もっと細かい分析もある*3のだが、これで十分のようだ。

4. 与党の政治家に増税派が多い

政治的にも増税派が多い。与党・自民党の税制調査会では、消費税率引き上げ反対派は出なかった(FNN)。そもそも三党合意で自民党がコミットしている政策であるだけではなく、麻生氏、石破氏、谷垣氏、野田氏など党内で影響力がある議員が、消費税率引き上げを明確に支持している。駆け込み需要の反動対策をどうするのか、財政支出と投資減税のどちらで行くのか議論はありそうだが、安倍総理が延期を決めたら、自民党内から引きずりおろされそうな勢いだ。

5. 増税反対派の戦いはこれからだ

これらの状況を総合して考えるに、安倍総理が何かの理由をつけて消費税率の引き上げを延期するのは不可能に近いと言える。ただし、増税反対派の人々は気を落とすことはない。試算によると財政危機の抑制には消費税率が25%、場合によっては30%が必要とも言われ、まだまだ増税が試みられるはずだからだ。「俺たちの戦いはこれからだ」と捨て台詞を吐いても、嘘にはならないであろう。次回からは一つ一つの税率ではなく、国民負担率を防衛線にした方が良いと思うが。

1 コメント:

ease さんのコメント...

一部では「平成の大増税」と言われているそうですが、
消費税増税は避けられないとのご意見、私も完全同意です。
個人的には、なんとか止めれるものなら止めたいですが、
ここで止めるような政治家は日本には存在しないでしょう。

私は、景気が悪くない、という政府の主張には疑問をもっています。
ご承知のとおり、景気判断のの根拠とされる「完全」失業率は、いわゆる「非自発的パートタイマー」や
求職活動を放棄した「潜在的長期失業者」を全く考慮していない数字です。

特に非自発的パートタイマーに至っては、国はまともな統計を取っていないという状況です。
バーナンキなどは常にこの値を気にかけていることが彼の発言から伺えますが、
安定志向の日本人は、なおさら正社員かパートタイマーかで消費動向が大きく変わるでしょうから
景気を判断するには重要な指針となるはずです。

なのに政治家およびマスコミは、見せかけの「完全」失業率しか見ていないから、
数値が良いのに景気が悪い。だからそれは心の問題だと。
戦前からお得意の精神論で「デフレは心の問題」だと公言しています。

リストラされしかたなくコンビニで働く父親と、そういう人たちから押し出される形で職場が見つからず
求職を諦めた母親が、オリンピックが東京に決まったからと消費を促進するでしょうか?
消費税を上げるということは、彼らの財布を一層引き締めるだけで、おそらく駆け込み需要すらも
ろくに起こらないのではないかと危惧しています。

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