2013年1月26日土曜日

インフレ目標2%宣言に安倍総裁は喜ぶべき

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

経済評論家やリフレーション政策の推進者が、日銀の物価安定目標に意味が無いと主張している。

日銀文学とも言われて難解な所を揶揄しているのかも知れないが、これは政府と日銀の共同声明の意味を曲解しているように思える。日銀は以下のメッセージは出しているからだ。

日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。

凄く婉曲的だが、日銀の使命である「物価の安定」を達成するインフレ率はCPIで2%と言っている。つまり、今後は2%未満のインフレ率は、安定物価を理由に肯定されないと言う事だ。この基準に立つと、時期尚早と批判されている2006年7月、2007年2月の利上げが行われなかったことになる。

インフレ率2%を達成する施策を日銀は打たないので面従腹背だと言う経済評論家もいるが、これがテイラー・ルールの変更になる事を考えれば、マクロ経済学の文脈では過少評価は出来ないであろう。著名マクロ経済学者のWoodfordが言うように、時期尚早の金利上昇が需要を減らさないことを人々に保証しようとしているわけだ。

1. 日銀と政府の責任が曖昧でも成果はある

冗談交じりに著名マクロ経済学者が、将来インフレ率が上がらないときに日銀と政府が責任の擦り付け合いを始めると予測していたが、それは構わないのでは無いかと思う。

まず、流動性の罠、つまりゼロ金利制約との関係を大雑把に補足しよう。

自然利子率<実質金利=名目金利-期待インフレ率

流動性の罠は自然利子率(均衡実質金利)がマイナスになっている状況で、上のような不等号が成立していると思われている。この不等号を逆向きにしたい。

期待インフレ率は例えば以下のように決まると考えられている。

期待インフレ率={π(インフレ目標, 中央銀行信頼度)+π(現在)+π(過去)}÷3

πはインフレ率を表す関数だ。

ケーガン・モデル的な適応的期待があるので、現在と過去のインフレ率のために最初は低い水準だが、2%のインフレ目標を掲げれば、期待インフレ率が高くなると考えられる。

ここで流動性の罠からの脱出で重要な変数は、(1)中央銀行信頼度、(2)自然利子率、(3)名目金利の三つになる。

  1. 中央銀行が市場から信頼されていないと、中央銀行信頼度が低くなるので、流動性の罠から脱出できない。
  2. 政府の経済政策が不適切で全要素生産性が向上したり生産年齢人口が増えたりしないと、自然利子率が低いままで、流動性の罠から脱出できない。
  3. 中央銀行がインフレを毛嫌いしていると、僅かなインフレの発生でも名目金利を引き上げ、流動性の罠から脱出できない。結果、中央銀行信頼度も低下する。

なかなか流動性の罠から脱出できないときに、政府と日銀が(1)か(2)かで責任を押し付けあうのはあり得る。しかし、インフレ目標2%宣言は(3)は排除したはずだ

2. 政治的成果と認めざるを得ない

安倍総理がインフレ目標政策をどの程度理解しているのかは分からないのだが、喜ぶべき状況ではあると思う。少なくとも選挙民に、有限実行であるように思わせる事が出来た可能性が高いのだから。

0 コメント:

コメントを投稿