2011年10月25日火曜日

TPPで漁業者は困るのか? ─ 困るわけがない

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非主業稲作農家がTPP参加で廃業に追い込まれる可能性が高い事は以前に解説した(関連記事:TPPに参加反対の『既得権益者』は誰?)が、漁業者にもTPP反対が広がっているようだ(日本海新聞)。しかし、数字的にはTPP参加で水産業が衰退する可能性はほとんど無いと言って良い。

現在の輸入水産物にかけられている関税は9.6%程度しかない。高いもので、イカとクラゲが15%、安いもので甲殻類が4.8%と幅があるが、関税によって内外価格差はほとんど発生していない(輸入統計品目表(実行関税率表)実行関税率表(2011年8月版))。米は402円/kgかかっているが、国内生産者価格が300円/Kg程度なので、輸入すると即競争力が無くなる関税率だ。これに比べれば水産品の関税など誤差に等しい。

輸入額は2010年で13,709億円、輸出額は1,950億円だ(農林水産省)。国内生産高は2009年で14,702億円程度なので、消費における輸入品と国内品は金額的には半々となっている。なお、近年のアジア等での水産品の需要で価格は高騰しており、円高が進まなければ、価格競争の見通しが悪いわけでもない。

TPPに参加すると、一番困るのは農協だ。農家の8割・農業人口の59%を占める非主業農家が廃業に追い込まれるので、一見、非主業農家が困るように思われるかも知れないが、彼らの平均農業所得は約37万円でしかない。主業農家は規模の拡大や、輸入品と競合しない野菜・果物などの園芸作物に転作などで生き残る余地はある。つまり、生活に困るのは顧客の大半を失うかも知れないJAの職員だ。

TPP反対署名1100万超をJAが集めた(TBS)と言うが、JA職員が付き合いのある農業就業人口698万人とその家族を動員すれば、すぐに達成可能な数字でしかない。1976年には489万戸あった農家だが、2009年には170万戸まで減少しており、70歳以上の農業就業者が189万人(全体の27%)だ。今のままでもJAは瓦解するのは目に見えている。必死に組織を維持しようとしても、限界が来ているのは自明だ。

4 コメント:

kiza さんのコメント...

調査不足で「感覚」でしかないのですが、視点がずれていませんか?
現在、漁業権は個人、漁協、漁連にしか免許されず、株式会社は漁業権を取得できない法律になっています。
TPP参加で危惧されるのは、米国が株式会社も漁業権を取得(現保有者から買収)できるようにすることを要求し、日本が拒否できない事態です。(宮城県が検討し、反対されている「特区」と同じ。)
現在の漁業権者はたとえ権利があっても資源が枯渇してしまえば、全てを失う可能性があるため、自ずと「再生可能な量しか取らない、取り過ぎない」自制が働きます。 実際に禁漁期間を設けたり、漁業量の制限をしています。
一方、株式会社の場合、目先の利益の追求の為に「取れるだけ取る」危険性があります。 企業であれば、そこで資源がなくなれば、他の地域に移ってしまえばいいからです。 そうなれば、漁業権を譲渡して雇用関係を結んだ元漁業権者は失業します。(「取り過ぎはいや」と反対しても解雇されるだけでしょう。)
つまり、関税がどうのこうのという問題ではなく、資源が守られて、漁民が永続的に漁業を続けられるかが危惧されるのです。

uncorrelated さんのコメント...

>>kizaさん
コメントありがとうございます。

株式会社の場合でも将来的に操業不能になるような経営は株式価値の低下を招くので、好ましく無いですね。

ただしTPP参加で、資源管理も暗黙のルールから、明示的なルールに行政対応を変えていく必要が出てくるかも知れません。

ARAKAWA さんのコメント...

農業就業人口698万人、70歳以上の農業就業者が189万人
は間違えではないですか?
統計局のホームページによりますと、前者は2895千人、後者は70歳以上ではなく、60歳以上で集計しています。
http://www.stat.go.jp/data/nihon/g1507.htm

uncorrelated さんのコメント...

>>ARAKAWAさん
コメントありがとうございます。2009年のデータで平成21年農業構造動態調査報告書の「農家人口、就業構造 - 年齢別世帯員数」を参照しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001061909

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