2011年10月6日木曜日

スティーブ・ジョブスの経営を振り返る

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早朝、ジョブスが56歳で逝去した。Apple、NeXT、Pixarと歴史に残る企業を設立した、天才的経営者なのは紹介する必要も無いであろう。しかし、Macintosh、iPod、iPhone、iPadだけをジョブスの経営の結果として紹介すると、人物像を見誤りそうだ。

1. 現在のAppleの製品では、模倣者としての面しか見えない

現在のAppleの売れ線の製品を見ていると、ジョブスが既存の製品やサービスを洗練させるだけの人に思えてしまう。GUIを発明したわけではない。Macintosh以前に、Altoが存在している。デジタルオーディオプレーヤーを発明したわけでもない。iPod以前にMP3プレイヤーは乱立していた。オンライン音楽配信サービスiTunes Storeも、bitmusic(現mora)の後だ。タッチパネルのスマートフォンは、iPhoneより先にW-ZERO3等のWindows Mobile機が存在していた。タブレットPCもiPad以前に存在した。スマートフォンのアプリ販売だって、NTT DoCoMoが先にサービスを開始している。

2. NeXTやPixarでは独創的な技術で粘り強く挑戦していた

ジョブスを考える上では、NeXTやPixarを考える方が興味深いと思う。NeXTのOSであるNEXTSTEPは、今はMacOS XやiOSになっている。ゆえにNEXTSTEPのOS記述言語であるObjective-Cも、同様に今でも使い続けられている。NeXTは商業的に成功したとは言えない。20年以上も成功していない技術を維持し続ける事が、他の企業家にできるであろうか。プログラミング言語の人気ランキングを参照すると、ここ数年でObjective-Cが急激に人気が出てきているが、それでも1位とはずいぶん差がある。1986年から考えると、日の目を見るまで23年かかっている。

Pixarも1986年にジョブスを会長としてスピンアウトした会社だが、初のCG長編アニメーションとなったトイ・ストーリーが公開されたのは1995年だ。NeXTやPixar時代のジョブスに関してはMarket Hackの回顧が興味深い。

3. 選択と集中も得意だった

ジョブスは一方で、プロセッサを乗り換えたり、サーバー製品群を切り捨てたりする事も厭わない。AppleはPowerPCの共同開発会社で何かの権利を保持していたはずだが、あっさりIntel製品に乗り換えたし、サーバー機のXServeはディスコンになったし、iPad原型とも言われるNewtonもそうだし、Appleは自社工場を持たないファブレス企業でもある。ジョブスは「選択と集中」に優れた経営者であったのも間違いない。

4. ジョブスは過少評価されている

ジョブスは、既存の製品やサービスを洗練させるのに長けていたし、時間をかけてテクノロジーを育成できたし、選択と集中にも優れていた。潰れかかったAppleを建て直した事などを考えると、同時代のビル・ゲイツよりも経営者として敏腕だと言えるかも知れない。

長々と書いてきたが、要はMacintosh、iPod、iPhone、iPadでジョブスを評価すると、過少評価になると言うことだ。もっと粘り強く技術育成できることも、もっと選択と集中に優れていることも評価すべきだ。大半の人は正しく評価していると思うが、ここ10年間のAppleとその製品しか見ていない人は、ジョブスを過少評価している気がしてならない。

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