2011年10月12日水曜日

年間被曝1mSv~20mSvの発がん確率は1.00064倍~1.0128倍?

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

細野豪志環境相が年間20mSv以上だった除染対象地域を年間1mSv以上に引き上げたことで、除染対象地域が7倍の1万3000平方キロメートルになった事が報道されている(asahi.com)。

自治体からの要望を受けたものだが、政治的な理由でしかなく、あまり合理的な理由は無いようだ。大幅な予算増になる事は間違いなく、細野環境相は国民に、自治体の説得ではなく方針を変換せざるをえない十分な理由を説明する必要がある。

1. 統計的に検定できないレベルの健康被害

まず、年間20mSvと年間1mSvの被曝の危険性を考えてみよう。京都大学の今中哲二氏の表を見る限り、広島・長崎LSSデータでは、被曝量1,000mSvあたり1.44~1.93倍になるようだ。特に100mSv以下の27,789の大きさのサンプルは、係数0.64、標準偏差0.55、p値0.30(片側検定)となっている。統計的有意性がサンプル不足で検出されていないだけで、この係数が正しいと見なす立場を取れば、年間20mSvで発がんリスクは1.0128倍になる。年間1mSvで1.00064倍だ。通常は有意性無しはリスク0と変わらないと解釈するので、これは、かなり安全よりの解釈になる。

国立がん研究センターのサーベイでは、放射線の影響はもっと小さい。年間被曝量が2,000mSvを超えると、発がん率が1.6倍になるそうだ。喫煙の効果に匹敵する。1000~2000mSvだと1.4倍なので、毎日二合以上の飲酒に匹敵する。200~500mSvだと1.16倍で、肥満の1.22倍や、塩分の取りすぎ1.11倍に近い影響だ。100~200mSvだと1.08倍になり、野菜不足の1.06倍に近くなる(産経ニュース)。効果が線形であるとすると、20mSvだと1.006倍だ。

2. 被曝が累積して健康被害を発生させる可能性は低い

次に、今後影響が出る可能性の根拠になる、しきい値なし直線モデル(LNT仮説)を考えてみよう。毎年の放射線の影響が蓄積していくと言う仮説だ。これは、どちらかと言えば懐疑的にとられている(放射線安全研究センター)。生物学的データからは低線領域のLNT仮説は支持されないそうだ。支持されると言う研究は、素人目にも強いバイアスが疑われる(関連記事:ピンクリボンとLNT仮説)。ムラサキツユクサの突然変異からLNT仮説を主張されても、せめてネズミの実験は無いのかと思ってしまう。チェルノブイリ事故後25年が経過しているが、周辺住民の発がんリスクの増加は報告されていない事からも、LNT仮説を前提にすべきかは疑問だ。

3. 除染対象地域の設定に関して説明責任を果たすべき

まとめると、年間20mSv以下の被曝はただちに健康に影響は無いし、影響が確認される可能性は少ないし、影響が確認されても微々たる程度である可能性が高い。政治的問題でもあるので除染対象地域の拡大の是非は純粋に科学的な問題では無いのであろうが、説得力のある説明が欲しいところだ。なおICRPは事故後の回復や復旧の時期等(現存被ばく状況)は、政府が年間1~20mSvで合理的に基準を策定することとしているので、20mSvから1mSvへの引き下げには関係ない。政府が理由を説明する必要がある。

0 コメント:

コメントを投稿