2011年7月3日日曜日

石炭火力の大気汚染を語る前に知るべき7つのこと

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原発が停止したら石炭火力発電所の稼動が高まり、大気汚染で死亡者数が増加するという主張がある。間違えとは言えないが、因果関係が遠い素人的な意見だ。

米国では大気汚染で年間に10万人の死亡者がおり、そのうち23,600人が石炭火力発電によるものだそうだ(EPI)。米国の石炭火力が大気汚染を引き起こしているのは間違いない。しかし、日本の原発停止が石炭火力の稼動率をあげて大気汚染で死亡者数を増加させると言うのは、以下の理由で適切ではない。

  1. 原発の代替は石炭火力とは限らない。火力発電では現在でもLNGの比重が高いし、LNG火力はエネルギー単価が安く、大気汚染が少なく、出力調整運転が容易だ。石炭火力が主に増える理由がない。
  2. 日本の石炭火力は脱硫装置などの改良によって浄化処理が進んでおり、熱効率も高いので、大気汚染の程度が低い(J-POWER)。
  3. 日米の火力発電所の発電量あたりの汚染は、日本が米国より一桁小さい。硫黄酸化物(SOx)が16.5分の1、窒素酸化物(NOx)が6分の1となっている。石炭火力の比重と浄化処理技術の違いが理由だ。
  4. 日本の大気汚染源で発電所が占める割合が小さい。2005年は硫黄酸化物(SOx)23.78%、窒素酸化物(NOx)12.08%にしか過ぎない。米国では69.79%と19.20%となっている(統計局)。
  5. 日本は経済活動による大気汚染レベルが低い。日本の一人あたりの年間硫黄酸化物(SOx)排出量は5.9Kg、窒素酸化物(NOx)は15.0Kgにしか過ぎない。米国は44.8Kgと57.3Kgである。大気汚染を許容する余地がある。国際比較でもロサンゼルスやニューヨークよりも東京の方が公害程度が低いとされている(総務省 資料28 世界主要都市(20大都市)の大気汚染状況)。
  6. 汚染物質の組成と時間変動から、日本の都市部の主要大気汚染源は自動車だと言える(早川・唐・鳥羽・亀田(2008))。石炭火力が主要な汚染源ではない。
  7. 規制が低い部門こそ、石炭火力より大気汚染の強い原因となる。米国では家畜や農機具が全米最大の大気汚染源だと言う研究もあるし、貨物船の排ガスで6万人の病死者が増えているという研究もある

仮に原発を無くすとしても、なるべく石炭火力の比重をさげてバス、トラック、農場、貨物船の規制を強化すれば、大気汚染は同じか減る事になる。

低レベル放射線が健康に影響があるとも思えないし、今後も原発がエネルギー戦略の中心になると考えてはいるが、無理に原発の代替技術やその支援政策を批判するのは考えものだ。

2001年と比較して、原油で3.5倍、LNGで2倍、石炭で4倍と高騰し、原発は廉価な発電方法になった。地球温暖化ガスも原発は排出しない。そして原発は再生可能エネルギーよりもずっと安定的なエネルギー源だ。原発の必要性を主張するには、この三つで十分だ。原発推進が妥当かどうかは、災害や事故をマネージメントできるかどうかだけにかかっている。大気汚染や採掘事故を持ち出すのは、説得的な主張とは言えない。

2 コメント:

gdgd さんのコメント...

定量的に議論して欲しいし、論理的な議論でない。

2,3,4の理由はほぼ同じで独立なものではない。
「5.日本は経済活動による大気汚染レベルが低い。」
がなぜ石炭火力の稼動率をあげても死亡者数を増加させないとするのか理解できない。
同じような論調で火力発電所を稼働しても死亡者数は増えないとするブログを見たが、そこではほかに大気汚染源があるのだから火力発電所の汚染が増えたところで、死亡者数は増えないはず、と言っていました。ほかに大気汚染源がないから死亡者数が増えないのか、ほかに大気汚染源があるから死亡者数が増えないのか、いずれにせよ、根拠が不明。
「6.都市部の日本において石炭火力が主要な汚染源ではない。」とのことだが、これから石炭火力発電を増やしたら、死亡者数が増えるかどうかに興味があるのに、なぜ増やさない場合のことを議論するのか意味不明。
「7.規制が低い部門こそ、石炭火力より大気汚染の強い原因となる。」も根拠が曖昧。規制が低いのは、ほかにより注意すべき原因があって大気汚染の強い原因ではなかったからではないのか?

uncorrelated さんのコメント...

>> gdgd さん
> 「6.都市部の日本において石炭火力が主要な汚染源ではない。」とのことだが、これから石炭火力発電を増やしたら、死亡者数が増えるかどうかに興味があるのに、なぜ増やさない場合のことを議論するのか意味不明。

(1)で指摘したように主に増設するのはLNG火力だと思われること、石炭火力も(2)と(3)で指摘したように公害になるほどの汚染物質を排出せず、(4)で指摘したように実際に汚染水準が低いことから、(5)~(7)で指摘したように他の汚染源の抑制で影響を相殺できることを指摘しています。

なお、大気汚染もある程度の濃度が無いと影響が出てこないであろうという事は暗黙の前提になっています。

> 「7.規制が低い部門こそ、石炭火力より大気汚染の強い原因となる。」も根拠が曖昧。規制が低いのは、ほかにより注意すべき原因があって大気汚染の強い原因ではなかったからではないのか?

定量的に石炭火力よりも強い汚染原になっていると示されているわけで、データが取りやすい、規制しやすいなどの理由があるのでしょうね。

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