2011年4月14日木曜日

JBPRESSの現場自衛官の声にある疑問

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JBPRESSに「災害派遣、現場自衛官から上がる悲痛な声」という、“現役自衛官・藤井源太郎”氏の書いた記事が掲載されている。

内容が真実であれば、政府の災害対策に問題があると言う事になるが、文面を読む限りは詐称を疑いたくなる内容だ。

1.“現役自衛官・藤井源太郎”氏の記事の内容

記事の内容を列挙すると、以下のようなものだ。一見すると、なるほど、ありそうな話である。

  1. 被災地(三陸海岸?)の治安が悪化している。窃盗行為が多数。
  2. 活動に必要な物資が不足している。抗生物質、ヨウ化カリウム、携帯無線機、懐中電灯、重機、放射線防護服。
  3. 交代部隊が確保できていない。
  4. 人員移送に問題。陸路で東北と九州を何度も往復する自衛隊員もいる。
  5. 装備品が役立っていない。原発敷地内のがれき除去用の74式戦車は役立っていない。
  6. 自衛隊に災害救助の予算はほとんどない。
  7. 「トモダチ作戦」の費用は半分以上が我が国負担になる。

2. 内容が拡散している

しかし、三陸海岸で不明者の捜索や瓦礫撤去をしている部隊と、福島第一原発で活動を行っている部隊の話と、自衛隊の予算に関する話が同時に語られている。藤井源太郎氏の役職が想像がつかない。

被災地の瓦礫の撤去で装備や機材が不足しているという話なら理解できる。原発災害に対応する装備品がそもそも無いという話なら理解できる。しかし、この二つを同時に展開した上に、任務的には心配しなくていい治安や予算の話が混じっている。どのような立場で、何を関心にもって書いた文章なのか疑問を感じざるを得ない。

3. 内容の真偽や一貫性に疑問

内容にも幾つか疑問がある。内容については、そのうち報道などから真偽がはっきりすると思うが、現場を知る現役自衛官と言う割りには不用意な印象を受ける。陸自と海自の話が両方あるので、少なくとも職務で知りえた情報だけを記載していないのは確かだ。

  1. ヨウ化カリウムの不足が示されているが、ヨウ化カリウムは連続して服用できないため、不足が大きな問題になるか疑問だ。
  2. 「トモダチ作戦」の費用に関して、報道と一致しない説明である(読売新聞)。
  3. (藤井氏曰く)無線機が不足している状態で、無線周波数の割当が必要としている。無線機が無ければ、周波数が割り当てられても使えない。
  4. 放射線防護服の調達を訴えているが、福島第一で不足していると報道は無い。
  5. 防犯目的で74式戦車を照明に使えとあるが、74式戦車は原発構内に2両しか展開されていない。また、警察ではなく自衛隊が治安維持を行うのが当然としている。
  6. 自衛隊の任務ではないのに、防犯への関心が高い。
  7. 唐突に、米空軍の投入機材の話が出てくる。

4. “現役自衛官・藤井源太郎”氏の立ち位置が分からない文章

全般的に、報道や噂で伝わってくる被災地や福島第一原発での話と政府予算の話を、政権批判のためにまとめたジャーナリスティックな文章に感じる。文体が、自衛隊関係の話を書いた人気ブログ『リアリズムと防衛を学ぶ』に似ている点も気になっていて、その愛読者が妄想を書いているのではないかと疑っている。

匿名や偽名の現役自衛官が、現場の問題を訴えかける ─ これは、特段、問題は無い。軍事作戦ではないので、機密事項は無いからだ。しかし、もし現役自衛官を装ったジャーナリストが政治目的のために作文をしているとすれば、倫理的には大きな問題であろう。

JBPRESSは真実を知るのだと思うが、著者プロフィールには現役自衛官とだけ書かれており、略歴については陸・海・空のどこに所属しているのかも記載されていない。本当に現役自衛官が書いているのかも知れないが、信じるのはやめておいた方が良さそうだ。

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