2011年4月15日金曜日

IPv4アドレス枯渇の影響が出るところ

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事前の予想通りに、JPNICが管理しているIPv4アドレスが枯渇した(JPNIC)。

iDCやISP等が保有するIPアドレスの在庫はまだ残っているため、すぐにではないが、これから徐々に影響が出てくると、技術系のみならず一般誌などでも広く報じられている。

しかし、各メディアで枯渇と影響を報じるものの、具体的に何が問題になるかの説明はほとんど無い。そこで、あまり強い根拠は無いが、現実的にありそうなシナリオを考えてみた。

1. スマートフォンが販売できなくなる?

携帯電話は1億2000万契約近くまで普及しており、その大多数がウェブやメール等のインターネット通信機能を備えるが、意外に携帯電話会社はIPアドレスは利用していない。公表情報からして、NTT DoCoMoで4,352、KDDI auで2472(+PCSV 4824)、Softbank Mobileで192となっており、契約者数からすると極端にIPv4アドレスを利用していない。これはProxy Serverで複数の端末の通信を、一つのIPアドレスで中継しているためだ。

ところが、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンは、PCと変わりの無い通信機能を持つため、この制限されたIPアドレスの利用方法を使う事ができない。一方で、既に出荷台数の50%に迫る勢いになっているスマートフォンは、数年のうちに携帯電話の多数派となると予想されている。6000万台のスマートフォンのうち、10%が通信を行っていれば600万アドレスを消費するが、この量のIPv4アドレスはもう日本には余っていない。

2. モバイルPC接続サービスが新規顧客の受付を停止する?

イーモバイルやWiMAX等のPC接続インターネットサービスが新規顧客の受付を停止かも知れない。スマートフォンと同様に、IPアドレスの利用率が高いためだ。両者は近年、急激に契約者数を伸ばしているため、余分なIPアドレスを多くは保有していないと考えられる。

3. 新規案件のウェブサーバーが立てられなくなる?

iDCが保有しているIPアドレスが枯渇すると、インターネット向けのサーバーを構築できなくなる。既存サーバーからIPアドレスが取り上げられる事は無いと思うが、新規案件は停滞するかも知れない。

幸か不幸か近年はインターネット向けのサービスで廃止になるものも少なく無いが、ブラウザ・ゲームのように拡大傾向の分野もある。大抵のブラウザゲームは、数百から数千単位でユーザーを『ワールド』に分け、『ワールド』ごとにサーバーを用意しているが、今後は新しい『ワールド』が開設されずに、人気のゲームを開始できない待機ゲーマーが増えるかも知れない。

4. どこからIPv6に移行するか?

スマートフォンから移行が進むと考えて良いと思う。

IPv6アドレスを持つ端末に、IPv4アドレスのウェブサーバー等をアクセスさせる事は技術的には可能だ。PPTPやL2TP等のVPNで問題が出るかも知れないが、大抵のユーザーには大きな問題は無い。特にスマートフォンは、携帯電話会社という資本力のある企業が主導権を持つため、積極的な採用に打って出る可能性はある。実際、米Verizon WirelessはLTE端末メーカーにIPv6サポートを義務化している

逆に、すぐにIPv6に移行できないのは、サーバー側だ。大手のサービスは既にIPv6実験を行っている(Yahoo! JapanGoogleBBIXと、ドワンゴ、ミクシィ、ライブドア、楽天)が、主導的な立場を果たす可能性は低い。コンシューマー向けサービスのサイトは、IPv4アドレスを持つクライアントが主なユーザーであるため、IPv4アドレスでないと商売が成り立たない。そして既存サービスを享受しているユーザーには、IPv4から積極的にIPv6に移行する理由が無い。状況が変化すればIPv6対応は迅速に行えるであろうが、IPv6の普及において主導的な役割を果たす可能性は低いであろう。

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