2011年3月11日金曜日

GPSジャマーが社会の脅威となる

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BBCNew Scientistが、GPS応用機器への依存が潜在的な脅威を孕んでいると指摘している。

GPSは衛星測位システムで、身近なところではカー・ナビゲーション・システムで応用されている、アメリカ国防総省が運営するシステムだ。EUや日本も同種のシステムを構築中である。GPS衛星からは、時刻とGPS衛星の位置の情報を含む電波を放出しているので、GPS受信機が3次元測位等により自分の位置を高い精度で計算することができる。

1. GPSは位置情報とともに、時刻同期でも広く利用されている

GPSは地理情報と組み合わせると有用なだけではなく、測位せずとも時刻の同期が簡単にできるため、時分割多重化を用いる携帯電話の基地局などではGPSを利用しており、米軍のGPS応用機器の90%が時刻同期の為だけにGPSを用いている。米国のATMでも、GPSによる時刻同期を行っているものがあるそうだ。

2. GPS装置のバックアップは不十分

しかし、多くの機器ではGPSが利用不能になったときのバックアップ装置が搭載されておらず、GPS衛星からの電波が届かない場合は大きな混乱が発生する。しかも、バックアップ装置が搭載されていても、GPSへの依存が大きくなりすぎて、十分にテストが行われていないケースもある。

2010年に北海で行われた実験では、GPSジャマーの影響下にある船舶は通常のGPSを利用した航法システムが機能不全に陥り、さらにジャイロコンパスを用いたバックアップの航法システムも正常に動作しなったそうだ。

3. 30ドルの装置でGPSをノックアウトできる

僅か30ドルで中国製のGPSジャマーがインターネットで販売されており、悪意を持った人間が、容易にGPSを機能不全に陥らせる事が可能になっている。GPSベースの料金所を誤魔化したり、盗難車の追跡を困難にするのに使われているそうだ。また、大量のGPSジャマーが市中に出回っていることから、NASAが宇宙計画に影響を与えるのではないかと憂慮しているそうだ。国際宇宙ステーションと補給機は、GPSを用いたナビゲーションによりドッキングを行っている。

4. 非合法だが、国家レベルで実行される可能性もある

もちろん、日本で安易にGPSジャマーを用いれば電波法違反となり1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる。しかし、中国は人工衛星を破壊する実験を行っており、これは米軍のGPSスマート爆弾への対抗策だと考えられている(BPnet)。また体制国家の隣国から、GPS妨害行為が行われないとは限らない。

5. 平時に危機に備える必要性

対抗策は自明ではあるが、GPS停止時のバックアップ手段の準備と、システムが連鎖的に停止しないような設計が重要になって来る。この問題に関する英国の調査レポートでは、啓蒙活動や技術開発の政府サポートを提言している。大規模なシステムだけに問題が発生してからでは十分な対応が取れないのは明白だ。日本政府も今から対策をしていく必要があるかもしれない。

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