2011年3月21日月曜日

菅首相が自民党・谷垣総裁に入閣打診をした理由

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批判的に報道されている菅直人首相の自民党・谷垣総裁への入閣要請だが、その目的については正しく認識されていないように思える(産経ニュース)。首相就任後の言動を見ていれば、自民党に責任を押し付けるためではなく、民主党の方針を転換するのが菅首相の目的だと推測できるからだ。

震災は、菅首相の政治的責任を回避しつつ、民主党マニフェスト撤回の契機になりうる。自民党が与党に参画すれば小沢・鳩山両氏の影響を排除できるであろう。しかし、二大政党制を標榜する政党の政治手法としては、政界史に大きな汚点を残す事になる。むしろ菅首相が民主党から自民党に鞍替えするほうが、政治手法としては妥当だ。

1. 菅首相と谷垣総裁は政策的に近い

菅首相は消費税導入論者であるのは間違いないが、民主党最大『派閥』である小沢一郎議員の周辺は消費税に反対している。また、マニフェストの忠実な実行については否定的であり、鳩山由紀夫前総理などの不評を買っていると噂されている。逆に消費税導入による財政再建を目指す自民党・谷垣総裁と菅首相は、政治的な立場が近い。菅首相、小沢氏、鳩山元首相、谷垣総裁の政治的なポジションが、菅首相の連立構想を読み解く鍵になる。

2. 谷垣総裁は財政支出削減を求めている

自民党は子ども手当などの財政負担の大きい民主党のマニフェストを強く批判しており、消費税導入で菅首相と意見が一致するものの、民主党の多数派と自民党では政策的に一致は見られておらず、歩調を合わせるのが難しい情勢となっている。菅首相のグループは、民主党内では少数派だ。子ども手当の満額支給等は諦めたようだが、まだ民主党はマニフェストの全面的な撤回を受け入れているわけではない。

3. 世論調査でも民主党マニフェストは支持されていない

子ども手当は満額実施で4兆5000億円、高速道路の完全無料化は5000億円弱の財政負担になるため、税制改革(消費税率引き上げ、法人税率引き下げ)で見込まれる税収増分を相殺することが分かっている。民主党がマニフェストを撤回しないと、財政改革にならないという自民党の主張には説得力がある。世論調査でも、これらのマニフェストの実行は支持されていない(読売新聞)。

4. 震災被害は菅首相が与党を説得する機会になる

しかし東北地方太平洋沖地震によって、状況は大きく変化している。

まず、民主党内でも財政支出を削減する必要性が認識されつつあるようだ。与党民主党の岡田幹事長は、「子ども手当とか、高速道路とか、いろんなものを見直すべきであるという主張がある」と述べており(日テレNEWS24)、党内の反応を探っているように思える。

また、マニフェストの全面撤回となっても、政治的責任を問われて解散・総選挙に追い込まれる可能性は低い。マニフェスト作成時と状況が変化したと言えるし、被災地では選挙が不可能だと与野党とも一致した認識になっており、統一地方選の延期特例法案が成立する見通しになっている(毎日jp)。

5. 自民党を取り込み、小沢・鳩山を切り捨てたい菅首相

しかし、小沢・鳩山両氏の影響の強い民主党で、菅首相の方針が浸透する確率は低い。現在の行き詰った政局を打破するために、小沢・鳩山氏に従う議員数よりも多くの議員数を抱える自民党を取り込みたいというのが菅首相の思惑であろう。

民主党マニフェストの全面破棄が可能であれば、自民党も協力するかも知れない。少なくともTPPの参加は世論も賛成しているし、消費税率の切り上げは自民党の方針でもある。

ただし、菅首相が自民党が懐柔する事に成功したとすると、それは間違いなく日本の政界史に汚点を残す事になる。自民党と民主党による二大政党制の放棄になるし、マニフェストの放棄になるからだ。しかし、解散・総選挙の方が自然であるが、震災の影響でそれは選択しづらい状況にある。

6. 菅首相が民主党から自民党に鞍替えすべき

政策的には、菅首相・谷垣総裁 v.s 小沢氏・鳩山元首相なのは間違いない。現在の所属政党では、民主党(菅首相・小沢氏・鳩山元首相) v.s 自民党(谷垣総裁)となっている。大連立が成立すれば、菅首相は与党内で小沢氏・鳩山元首相に対抗できるようになる。しかし、民主党内の反小沢グループが自民党に鞍替えすれば、民主党(小沢氏・鳩山元首相) v.s 自民党(谷垣首相・菅元首相)となり、政策方針と政党が概ね一致する安定状態になる。

首相が政党を鞍替えするのは前例がない事態であろうが、小沢・鳩山両氏の懐柔よりも迅速に実行することができる。菅氏は首相を降りることになると思うが、谷垣総裁が菅氏の政策を遂行してくれる事であろう。そして民主党と自民党が連立することもないので、二大政党制を放棄する事にもならない。菅首相は就任演説で、その政治目標が二大政党制の実現であったと明確に述べている。

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