2011年3月18日金曜日

柏崎刈羽と福島第二の停止中原子炉は早期に運転を再開すべき

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東京電力の藤本孝副社長は3月17日に会見で、原発の再開無しでは供給能力は4800万kWにとどまり、夏の電力需要最大6400万kWを下回るとの見通しを明らかにした(毎日jp)。休止中の古い火力発電所や、LNGガスタービンを用いた発電所の新設を計画しているようだが、単純に柏崎刈羽原発と福島第二原発の停止中原子炉の早期運転再開を目指すべきであろう。

1. 小規模LNG発電所新設では間に合わない

現在の電力供給能力は3350万kWなので、4800万kWは停止中の火力発電所の送電再開後の値となる。1600万kW分の差を埋めるには、30万kWのLNG発電所を50基以上設置する必要がある。

一方、柏崎刈羽と福島第二の停止中原子炉7基の発電量は770万kWにのぼり、LNG発電所で22箇所分の発電量となる。女川原発も再開されれば、東北電力から東京電力に行える電力融通も多くなるため、電力不足を大幅に緩和できる。

2. 福島第二、女川原発、東通は安全だった

福島第二原発や、女川原発でもトラブルに見舞われているが、既に原子炉冷温停止となり、報道も沈静化している。福島第二では二次冷却系ポンプの故障に見舞われたが、ポンプ車によるバックアップと、ポンプの交換が速やかに終了している。女川原発に異常は無く、東通原発に至っては特に報道も無いようだ。

福島第一とこれらの原発の違いは津波対策の差異であるようだ。海側の低い地点に主要施設が集中していた福島第一と違い、福島第二と女川は陸側に施設を配置していた。海水の取水方式で、福島第二と女川で二次冷却ポンプの被害の有無が決まったようだが、史上最大級の津波に対してはどちらも十分に状況をコントロールできたと言える。

新型の原発は災害対策がしっかりしているという簡単な話だが、福島第一のような災害が起こると、他の原発も一括りに危険視されがちだ。

3. 福島第一以外の災害対応の改善は早期に可能

刻々と状況が変化する福島第一原発の災害の状況だが、そもそも冷却機構の全停止に対する対応が検討されていなかったのが問題のように思える。ハードウェア的には、地震発生後8時間以上は安全性を維持している。つまり、災害対応フローというオペレーションに問題があった。

全交流電源喪失(ステーション・ブラックアウト)、バックアップ発電設備の故障、地震発生5時間後のM/C(分電盤)水没は、かなりの異常事態ではある。機動車両による一次・二次冷却系のバックアップ、高放射線濃度下での災害対応作業の検討が必要だ。

福島第一が作られた1971年には、これらに対応するのは困難であったと思うが、今は2011年だ。電力会社以外の機材の利用も含めて、災害対応フローを練り直すべきであろう。しかし、近年に建設された原子力発電所には、この程度の改善で十分であるように思われる。

4. 福島第一原発には大幅な改修が必要

現在の状況では福島第一原発4~6号機は比較的ダメージが少ないようだが、1~3号機と同様に津波の被害を受けている事から、近代化改修工事が必要ではないかと思われる。海側の津波被害が単一障害点であるのが明確になり、地震と津波の発生が周期的ではなく確率的であることを考慮すると、このまま存続は許されない。

5. 災害対策費用は政府出資で賄える

余談になるが、多額の対策費用が問題になるのであれば、政府出資を行えば良い。

日本にとっての原子力開発は、米国にとってのアポロ計画より重要な施策だ。エネルギー価格高騰と地球温暖化に対抗する最も有効な方法は、原子力開発である事を忘れてはいけない。政府出資を行えば電力会社の政府保有比率が上昇するが、短期的には政府と電力会社双方のバランス・シートが悪化しない利点もある。

6. 「国民感情」や「安全神話」が問題を不透明にする

自民党の谷垣総裁が「原発推進は難しい状況」になったと述べたと報道されている(毎日jp)が、経済的にも環境的にも化石燃料に依存できない状況になっている。確かに日本で最も古い原子力発電所が、日本で最も強い地震で大きな被害を受けたのは確かだ。しかし、原子力開発自体を放棄せざるをえないような、技術的な課題があがったわけではない。一時の国民感情に踊らされるべきではない。

一方で、災害対策が不十分であったのは確かで、その要因は看過できない。「安全神話」というメディアの造語に惑わされたとは思わないが、福島第一原発の問題点を見過ごしていた事実は変わらない。東京電力経営陣の責任は規制当局や株主から問われることになると思うが、電力会社に適切な指導を行えなかった原子力安全・保安院の責任も追求する必要がある。

13 コメント:

al さんのコメント...

福島県民ですが、第一原発の事態が収束していない現状で第二原発の運転再開は容認できるものではありません。第一原発の現状は東電及び政府の対応の遅れから生じたものと認識しております。東電の構造改革が済み、ハード面・ソフト面双方の安全性が確立されてからでなければ、第二原発の運転再開は論外だと思います。

DQN さんのコメント...

この記事もまた、「原発は怖い」という世論にたいする感情的な反発であると感じます。

福島第二に関しての論理はまあいいとしても、

柏崎刈羽原発を再開すべき理由として「福島第二、女川原発、東通が無事だったから」というのは、論理としておかしいと思います。
柏崎刈羽原発を再開すべきというなら、柏崎が安全であることを説明しないといけないのではないでしょうか。
なぜ柏崎について検討もしないで柏崎を再開すべきだと主張できるよのでしょうか。
この記事は初めから結論ありきになっていると思います。
もっというと、世論にたいする天邪鬼的な反発心がこの記事を書かせたのだと思います。

uncorrelated さんのコメント...

>>al さん
コメントありがとうございます。
ハードウェア/ソフトウェアの両面から最検討する必要はあるでしょうね。しかし、原発間で被害程度に差があるため、新型の原発は早期再開が可能だと思います。

>>DQN さん
被害程度の違いから、「新型の原発は災害対策」と推論し、福島第一より新しい柏崎刈羽原発は安全性が高いであろうと結論しました。
なお、このエントリを書いた時点の世論調査の結果などは把握しておりません。原発への賛否、どちらが多いのかは気になりますね。

DQN さんのコメント...

回答ありがとうございます。

柏崎を再開すべきというなら、柏崎の設計や構造の安全性について説明するべきだと思います。

柏崎の中身を検討もしないで、新しい方が安全性が高いだろう、だから運転再開すべきというのは無責任ではないでしょうか?
福島第二と女川が無事だからといって、新しい原発を一括りに安全視してよいものでしょうか?


もう一点。

「福島第一とこれらの原発の違いは津波対策の差異であるようだ。
海側の低い地点に主要施設が集中していた福島第一と違い、福島第二と女川は陸側に施設を配置していた。
海水の取水方式で、福島第二と女川で二次冷却ポンプの被害の有無が決まったようだ」

これは、冷却設備の位置と高低差の違いであって、「新しい方が安全」ということの証明にはなっていないと思います。

「福島第二と女川は陸側に施設を配置していた。だから柏崎は安全だ」という変なロジックになっています。
やはり結論に無理があると思います。

uncorrelated さんのコメント...

>>DQNさん
津波対策の重要性が認識が言われるようになってから建設された女川原発は、津波対策が意識されて、あのような配置になったようです。つまり新しい原発の方が、今回の津波災害を考慮した設計になっていると言う論理展開です。

> 柏崎の中身を検討もしないで、新しい方が安全性が高いだろう、だから運転再開すべきというのは無責任ではないでしょうか?

確かに柏崎刈羽の安全性を、技術的に確認する作業は必要でしょう。
ただし、本稿の主張は「安全対策を施した上で、早期運転再開を目指すべき」というものなので、特に無責任だとは認識していません。

DQN さんのコメント...

回答ありがとうございます。

「柏崎刈羽の安全性を、技術的に確認する作業は必要でしょう。」
「安全対策を施した上で、早期運転再開を目指すべき」

おっしゃるとおり通りですね。
uncorrelatedさんの主張は、

「柏崎刈羽の安全性を早期に確認すべき。その結果、安全なら再開すべきだし、安全でないなら再開すべきではない」ということですよね?
それはよいと思います。

しかし本エントリのタイトルは「柏崎を再開すべき」となっています。
柏崎については理論とデータをもとに考察していなくて、結論だけ飛躍していると思います。

タイトルを、「柏崎が安全なら再開すべき」と修正するべきではないでしょうか?

uncorrelated さんのコメント...

>>DQNさん
確認は必要でしょうが、安全性は問題ないと予想しているので、タイトルはこれで問題ないと考えています。

uncorrelated さんのコメント...

>>DQNさん
福島第一と第二の被害差の分析が出てきたようです。
http://www.asahi.com/national/update/0405/TKY201104050625.html
これで確定だとは思いませんが、ポイントは絞られているみたいですね。

DQN さんのコメント...

他の原発が無事だったのは、運がよかっただけかもしれないですね。
東通原発は安全でしょうか?

http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110409k0000m040115000c.html

廉価の話もそうですが、このブログの一連の記事は「運がよければ」という前提に依存していると思いました。

kiza さんのコメント...

はい、はい、柏崎刈羽原発も津波対策の見直しを行うと発表していますよ。 応急対策として、原子炉建屋等のドアの防水処理をしたそうです。 それで従来3.3mの想定であった津波が7mになっても浸入を防げると発表しています。 津波の威力がこれだけ映像で流れているのに、それを見た上でも「ドアの防水処理」如きで津波に対抗出来ると考えているようでは、「安全対策」など望むべくもありませんね。 東電の考える事など、所詮この程度です。 自然を舐めてます。

uncorrelated さんのコメント...

>>DQN さん
東通は電源車を用意していたみたいですね。あと発電機の故障前に、外部電源は回復したようです。ゆえに、問題は無かったと考えています。

>>kiza さん
コメントありがとうございます。
妥当な対策かは綿密な評価が必要だと思いますが、福島第二と女川の経験から言うと、構造物で浸水に耐えることは可能なようです。

kiza さんのコメント...

http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/info/tohoku/setsumei01/pdf/siryo.pdf

努力の跡は見受けられますが、ちと「かよわい」印象です。
突込みどころは満載ですが、敢えていくつか挙げれば、

a) 中越沖地震で観測されたのは2,000ガルを超えていたはず。
b) 訓練の頻度が少ない。 少なくとも毎週行うべき。
c) 防潮堤、防潮壁が津波に耐える根拠は?
d) 原子炉建屋、タービン建屋内の配管類が無傷であることを想定している?

uncorrelated さんのコメント...

>>kiza さん
お久しぶりです。

(a)に関しては、加速度は予想外でしたが、原発自体に大きな損壊は無く問題は無いと認識しています。

(b)に関してはごもっともですね。色々な想定をした訓練の必要性は、今回の震災での教訓の一つだと思います。

(c)に関しては、実際に福島第二や女川が致命的な損壊なく耐えているので、対策は必要かも知れませんが、安全性確保は可能だと考えています。

(d)に関しては、今の所は配管類に致命的な損壊は無かったと認識しています。福島第一の事故調査結果が待たれますけどね。

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