表現の自由戦士界隈は、フェミ議連の「性犯罪誘発の懸念」*1、社会活動家の仁藤夢乃氏の「性犯罪と本当に地続き」*2を、萌え絵などの愛好者の自尊心を傷つける行為だと、どちらも1年半以上、発言をしたこと自体を非難し続けている。しかし、問題が3つある。
- 誰かが好きな表現物に否定的な言及をすることは、愛好者の自尊心が傷つくものだとしても、評論は言論の自由の範囲内。つまり、愛好者の尊厳を傷つけるとは捉えられていない。傷ついたとしても*3、愛好者は受忍すべきだ。侮辱やヘイトスピーチにはならないし、作品内容に関して虚偽の内容を広めたりしない限りは、名誉毀損にもならない。
- 詭弁を交えて非難を行っている。フェミ議連の「性犯罪誘発の懸念」は、当初、性犯罪を誘発すると断定したと非難されていた。仁藤氏の「性犯罪と本当に地続き」の方は、「少女を性的に消費することはもちろん、スペックを書いて女の子を並べ「選べる」存在として扱うこと」が「性犯罪と本当に地続き」という主張なのだが、「お前が好きな絵は」と議論が極度に省略されていたりする。
- 最後に、フェミ議連と仁藤氏の議論の筋を把握せずに、言葉尻だけを捉えている。フェミ議連は抗議文で、2016年の国連女性差別撤廃委員会の勧告を引いて、女児をエロティックに描くことが有害であると主張した上で、「性犯罪誘発の懸念」があると主張している。批判するならば、勧告の内容を照らし合わせて、勧告の解釈違いを犯しているか、勧告自体がおかしいか言及すべきだ*4。仁藤氏の方は「少女をモノ化している」と、どの観点から地続きと言えるかを明示しているわけで、モノ化ではないと批判するか、モノ化だからといって強く関連するわけではないなどと批判すべきだ。
それなり長い主張の中の一部分の言い回しだけを捉えて、それで傷ついたと非難し続けているわけだから、ヒステリックと言わざるをえない。また、言葉尻をとりあげて論敵の非を責め続けるのは、対話と言うよりも、論敵への憎悪を煽る行為だ*5。こんな非難を一年半も続けている。
追記(2024/04/21 09:20):さらに1年弱経って、表現物に倫理的な瑕疵があると言う非難は、クリエイターが不徳な人物であるという非難と同じだと言う主張がされるようになったが、倫理的なものでも道義的責任はクリエイターが負うべきであるし、何が倫理的な瑕疵にあたるかも、批判やそれへの反論を通して議論していく社会的価値があり、自明な問題以外の指摘を禁じるのも有害だ。また、非難が不当でも賛同者が限られているとクリエイターの不利益は限定的だ。映画『ティファニーで朝食を』が日本人蔑視だと非難されているが、それで監督や演出家が被った被害は聞かない。そもそも「懸念」や「地続き」は断定を避けた表現であり、強い瑕疵を主張していない。
*1関連記事:千葉県松戸市「ご当地VTuber戸定梨香」交通安全PR動画にある乳揺れ問題
*2関連記事:『温泉むすめ』は性差別や性搾取とは言えないし、露出度も高くは無いけれども
*3愛好者の皆さんはクリエイターではないので、自尊心が傷つくというよりは、もっと素朴に腹立たしいという感情ではないであろうか。
*4勧告を確認すると、勧告自体には特段の根拠が示されていないことに気づくと思う。ただし、フェミ議連の議論は概ね性化/ポルノ化批判に沿ったものなので、弱いものでも論拠は用意できる(関連記事:全国フェミニスト議員連盟が「ご当地VTuber戸定梨香」交通安全PR動画で問題にしていること)。断定できるようなものではないが、懸念を表明してはいけないとは言い難い。
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