2021年11月17日水曜日

『温泉むすめ』は性差別や性搾取とは言えないし、露出度も高くは無いけれども

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地域活性クロスメディアプロジェクト・・・と言われてもなんだか分からないが、温泉地ごとに萌え絵のキャラクターをつくって、それらのキャラクターを使った創作物コンテンツをメディア展開し、観光アピールに役立てようと言うプロジェクト『温泉むすめ』の何人かのキャラクターの設定がけしからんと言うことでネット界隈のフェミニストの非難を浴び、非難されたキャラクター設定が修正され、かつ後援団体が公式ページの一覧から消える事態になった。

1. 性差別や性搾取ではないが、企画運営会社は対応

事の契機となった仁藤夢乃氏は、『温泉むすめ』を性差別・性搾取だと主張しているが、実在人物の被害者はいないので性差別でも性搾取でもない*1。設定にスカートめくりが好きだと書かれただけの架空キャラクターの存在が、子どもの悪戯やセクハラを誘発するとも考えづらく、現実的な害があるとは言えない。仁藤氏の主張自体には説得力はない*2。また、マンガやラノベのキャラ設定としては、よくある程度の話だ。しかし、企画運営している㈱エンバウンドは仁藤氏と追随者の非難の後、迅速に対応をとった。

2. 問題がなければ、ツイフェミの意見は無視されてきている

社会通念上、問題とされる何かがある。それは仁藤夢乃氏の主張とは異なるものであろうが、企業や官庁の広報活動としては無視できないものだ。ツイフェミを怖れたための行為とは言えない。フェミニストが非難を浴びせても、スルーされるときはスルーされてきている。NHK NEWS WEB「まるわかりノーベル賞2018」キズナアイ、2017年のムーニーのユニ・チャームのおむつの広告、2012年の味の素のCM「日本のお母さん」では無視されたし、2020年の「宇崎ちゃんは遊びたい」×献血コラボキャンペーンでも、第1弾の取り下げも変更も行われなかった。

3. 萌え絵を擁護するために必要なこと

ネット界隈の表現の自由戦士の皆さんは仁藤夢乃氏のツイートを非難するのに熱中しているわけだが、目的を達成するのに有効な方法とは思えない。過去の騒動で振り返ると、表現の自由戦士の方が数が多いこともあって、概ね非難が集中して炎上しているのはツイフェミだが、似たような騒動が繰り返されている。企画運営会社が何を考えたかのかを考えてみるべき。

多くの場合、関係各所からの突き上げを怖れたと言うのが実態であろうが、それは何らかの社会規範に反しているので、関係各所が文句を言うと考えたということになる。萌え絵を使ったプロジェクトを擁護したい表現の自由戦士は、『温泉むすめ』を不徳とする社会規範が何かを突き止め、さらにそれが不当で従う必要の無いものだと示して広く考えを広めれば、目的達成となる。日本共産党の言う社会的合意の形成に参加するのは癪かも知れないが、真面目に民主主義をすべし。

検討した結果、本当に『温泉むすめ』はよろしくない女性表現物の可能性もある。『鉄道むすめ』の「駅乃みちか」のスカートが修正され、『ラブライブ!』「高海千歌」のJAなんすんの西浦みかん大使のポスターが撤去されたのは、おそらく作画ミスがあったからだ*3。『碧志摩メグ』の志摩市公認萌えキャラ辞退は、現役の海女の一定数が反対であったためで、当事者が不満に思う要素があったことが原因となる*4。当時のツイフェミの非難はほとんど間違った意見に思えたが、何か問題があると言う一点では、確かに真実も含んでいた。

4. 御当地キャラ適格性審査基準問題

今回は、仁藤氏の非難とは異なり、他の女性表現と比較してエロティックなものとは言えないし、作画ミスも無さそうなので、不徳な性格設定が問題であった蓋然性が高い。問題はプロフィールと言う設定に絞られている。ラノベなどの設定であれば、問題とされないものだ。しかし、ラノベも展開されているが、各地の温泉名を冠したキャラクターである。つまり、セクハラをしてしまったり、犯罪的な不健全性的行為を愉しみにしているとも解釈できるキャラ設定*5は、御当地の代表に相応しいであろうか?*6 — と言うのが解を出さないといけない問いだ。不徳なキャラクターであっても、御当地の宣伝に役立てて問題ないという理屈をつくることができれば、表現の自由戦士の希望に近づくことになる。

*1関連記事:過去のフェミニズムの議論からは、性的モノ化された萌え絵が有害の可能性は低い

*2仁藤夢乃氏が考えるあるべき女性像とかけ離れているのが真の理由ではないかと邪推している(関連記事:ツイフェミは女性の尊厳を毀損していると感じる絵を非難している)。

*3関連記事:駅乃みちかの萌え絵のスカートの描写についてラブライブ!高海千歌のJAなんすんの西浦みかん大使のポスターのスカート描写について

*4色っぽ過ぎる海女キャラ「碧志摩メグ」公認を撤回…海女さん309人署名 作者申し出 三重県志摩市 - 産経ニュース

市によると、今年9月30日に海女の代表24人と、キャラクターの作者でイベント会社「マウスビーチ」(同県四日市市)を運営する浜口喜博さんらが話し合いの場を持ったが、海女さんの約3割が公認取り消しを求めたため対応を検討していた。

*5「小野川小町」のプロフィールの「布団に入ると妄想が爆発して「今日こそは夜這いがあるかも」とドキドキしてしまい、いつも寝不足気味」と言う説明は、夜這いを怖れているとも、夜這いを歓迎しているとも解釈できるのだが、戸締りに注意しているような説明もないし、近年の恋話におけるドキドキは良いことへの期待で用いられていることが多いので、後者に解釈するのが自然に思える。

*6鳥取城跡のマスコットキャラクター「かつ江(渇え)さん」が、「飢餓をちゃかしている」「こういうキャラクターを使うべきではない」という苦情で取り下げになっている(ハフポスト)。夕張メロン熊に匹敵するレベルでエッジのたった良いキャラクターだと思ったのだが、受難者は御当地キャラに相応しくないと考える人々がいたのも確かだ。

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