ネット界隈では2021年10月31日の第49回衆議院議員総選挙で立憲民主党が公示前から議席を減らしたことに関して、立憲民主党の関係者でもないのに反省会が開かれている。政策にしろ、選挙戦術にしろ、多くは枝野幸男代表に敗因があるとしているのだが、どちらかと言うと、自民党の狡猾さ、菅前総理の辞任と岸田総理の早々の解散を称えるべきだ。
1. 枝野代表の選挙戦術は正解だった
立憲民主党の負けっぷりだが、選挙前ではそこそこ伸ばせそうな世論調査の結果もあったので関係者の落胆が大きいわけだが、歴史的な大敗とは言えない。公示前110議席から小選挙区を16議席失い、比例を2議席増やして、96議席になった。小選挙区は接戦に持ち込めた選挙区が多かったのだが、僅差で敗れたところが多かった。1万票以内で立民・共産が負けた選挙区が32。比例代表は前回選挙よりも票数を減らしているが、議席数が増えたわけで全体としては大きい減少幅ではない。この結果から考えると、日本共産党との選挙協力は機能したし、従来の支持者の中で共産党を嫌う人々が立憲民主党へ投票しなかった事例は少ないと言える*1。
2. 自民党の適切な選挙戦術
直接的な敗因は、菅前総理の辞任と岸田総理の誕生、そしてさっさと解散総選挙を行った岸田総理の判断だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に関して、コミュニケーション能力の不足もあって菅前総理は支持率を落としていた。安倍政権でずっと官房長官を勤めていた菅氏は、立憲民主党が批判してきた安倍元総理の後継者と見做すことができるので、安倍元総理の手法への批判は菅前総理にも概ね当てはまった。しかし、菅総理が辞任をして、安倍色が薄い岸田総理が誕生して安倍–菅政権に対する政権批判が意味が無いものとなってしまった。メディアが自民党総裁選に注目を集めた効果もあって、自民党は劣勢を挽回したわけだ。比例代表の得票数を見ると自民党も落としており、全体としては大きな変化ではないが、小選挙区の接戦区に与えた限界的な効果は大きい。
3. 立憲民主党に内在する問題
立憲民主党に内在する問題ももちろん影響している。
- 1. 支持母体である労働組合の脆弱化と、労働組合の離反
連合会長は選挙結果を見て、立憲民主党と共産党との選挙協力を理由に「連合の組合員の票が行き場を失った。」と述べている。原発反対・再生可能エネルギー推進のエネルギー政策などでの立憲民主党の政策が悪い面もあるのだが、労組の組織力・動員力が低下していることの言い訳の面もある。全トヨタ労働組合連合会が自民党に接近していると報道されているが、力が弱った労組が与党と対立するのが現実的でなくなった面もある。
- 2. ぱっとしないと言うか、訴求力のない政策
有権者が主に関心がある経済や福祉に関して、積極的な提案を一貫性をもって出来ていないので、訴求力が無い。消費税率(一時)引き下げ、年収1000万円程度までの人の所得税を実質免除を打ち出したわけだが、どうせ政権を取れないので無責任に人気を取ろうとしている・・・と揶揄したくなる。
なお、経済や社会保障といった有権者が重視する問題が二の次になって、有権者の関心が薄い環境問題やジェンダー平等を取り上げていると言う批判もあるが、立憲民主党の選挙公約を読むと、明らかに経済や社会保障に重点を置いている。ネット界隈の立憲民主党支持者がジェンダー平等に関心が高いからといって、立憲民主党がジェンダー平等を選挙争点にしようとしているとは言えない*2。
ネット界隈では政策に関して何とかしろって人が多いのだが、支持基盤の強化をあげる人が少ない。
4. 立憲民主党はどうするべきか?
自民党の華麗で狡猾な代表交代劇で沈没してしまった立憲民主党だが、前回2017年の民進党の自滅と違って今後も選挙前に与党が代表を変えてくることはありえる。立憲民主党に内在する問題の解決を図るべきだ。
もちろん、こんなことは枝野代表も分かっていて苦労して来たのだと思う。政策は、無党派層の一般有権者と労働組合の利害が対立があるのは間違いなく、エネルギー政策では明らかだ。支持基盤の強化も、労組の組織力低下は産業構造の変化が寄与している面があり、また労組が努力すべき問題であって、政党が口出すすることはない。しかし、何か突破口がなければ万年野党どころか、党の維持すら難しい。枝野氏が辞任を決意し、代表選の実施が見込まれている立憲民主党ではあるが、この2つの解決を争点に・・・支持母体の弱体化は口にできないか(´・ω・`)ショボーン
1 コメント:
立憲民主党が負けたのは事実なのだが、これには日本維新の会の躍進についても分析が必要だと思います。
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