2023年6月4日日曜日

ウクライナ軍2023年反転攻勢の作戦内容予想

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半年ぐらい前から実施が宣言されている気がするウクライナ軍の反転攻勢だが、ゼレンスキー大統領が準備は完了しているとインタビューで述べた*1。どこに攻めるのかが注目されている。アゾフ海に向かって南進するか、スタロビルスクに向かって東進か、ドニプロ川左岸に渡河作戦か、バフムトで攻囲戦か。ロシアとウクライナのどちらが優勢かの議論も熱く行われている*2。当たる気がさっぱりしないのだが、作戦開始前の予想祭りにのっておきたい。

ウクライナ領からロシア軍を撤退させるか殲滅するのがウクライナの最終的な勝利なので、ロシア軍の補給線を切断して全体的に弱らせる戦略をとる蓋然性が高い。すると、アゾフ海に向かって南進か、スタロビルスクに向かって東進が選択されることになる。ロシア軍の防御が弱く、ウクライナ軍が補給を確保し防空網で被える方が選択されるはずだ。これまでの報道などから予想をすると東進。

南進をすると、鉄道がひかれており物資集積所になる支配地域の街からの距離が長くなる。補給線が長くなる一方、そんなにカバー域が広くない防空網から外れる可能性も高くなる*3。ロシア軍の防御線を突破しても、航空支援を受けたロシア軍の予備兵力が挟撃してくるわけで、南進は占領地域の維持が苦しくなる。また、衛星写真からは、南の防御陣地の方が一見*4、強固だ。

ウクライナが戦術的勝利を収める可能性は高い。ウクライナには欧米からかなりの物資と訓練が提供された精鋭部隊がある一方、ロシア軍の装備の劣化が目立っている。ロシア軍の防衛ラインは800Kmと長い一方で、その兵力は20万人と推測されている。未だに人数で優勢のウクライナ軍に対応して、分散して配置することが強いられている。ロシア兵の皆さん、対戦車砲をもってウクライナの戦車に肉薄するほど士気が高いわけでは無さそうだ。ただし、防空システムの問題があるので、どこまで到達できるかは予想し難い。

東進作戦で拠点になるクピヤンスク(Kupiansk)からスバトボ(Svatove)までは50Km。ここまでは到達でき、維持できる可能性は高い。しかし、スバトボから、モスクワからの物資がほとんど通るスタロビルスク(Starobilsk)まで46Kmあり、到達できても維持できるかは不安がある。スタロビルスクを占拠して、そこから南進してロシア軍の補給路をすべて塞ぐのが夢の展開だが、スバトボからクレミンナ(Kreminna)の占拠に自制し、自走多連装ロケット砲(MLRS)で鉄道輸送を不可能にするぐらいが、堅実な作戦か。ウクライナ支援国は武器や弾薬の増産体制を整えようとしており*5、短期決戦を指向しないようにアドバイスしているはずだ。

このような考察で、ウクライナ軍2023年反転攻勢は、スバトボとその周辺の奪還になると予想した。ロシア軍が防衛線を死守したら、ロシア軍の健闘をひたすら称えて予想をはずしたことを誤魔化し、ウクライナ軍がザポリージャからメリトポリまで160Km、もしくはマウリポリまで300Kmを奪回できたら、ウクライナ軍の健闘をひたすら称えて予想をはずしたことを誤魔化したい。

*1ウクライナ、反転攻勢の準備整った―ゼレンスキー氏=WSJ紙 | Reuters

*2Ukraine has choice of targets as it plots counteroffensive | Ukraine | The Guardian

*3ウクライナ空軍はほぼ壊滅しているし、長距離対空ミサイルS300の残弾は乏しいとされているし、欧米がウクライナに提供した防空システムの射程はそう長くない。携帯式防空ミサイルシステムもあるとは言え、支配地域を拡大すればするほど苦しくなる。

*4二重三重の塹壕や障害物が見られる。ただし、北と南の塹壕がつながっていないなど、二重三重の防衛ラインがどの程度機能しているかは疑義があるようだ。

*5独防衛大手、ウクライナで戦車工場開設の意向 - CNN.co.jp

米軍が日本から火薬の調達検討、ウクライナ向け砲弾用=関係者 | ロイター

独防衛大手、国内に砲弾工場新設 ゲパルト用も製造可 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

EU、弾薬増産に740億円拠出 ウクライナ支援強化 - CNN.co.jp

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