2023年6月11日日曜日

埼玉県営公園プールでの水着グラビア撮影会の中止は、行政の怠慢の結果

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埼玉県営公園での水着グラビア撮影会の突然の中止をめぐって、ネット界隈の表現規制反対派である表現の自由戦士の皆さんの間で、日本共産党を非難する声が高まっている*1。しかし、責任者は共産党ではないし、共産党の主張と中止理由は異なる蓋然性が高い。公明党あたりから文句が出てもおかしくない問題が水着グラビア撮影会には今まであり、結局はそれが中止の最大の理由だと考えられる。

1. 共産党には決定権はない

指定管理者である埼玉県公園緑地協会に決定権がある事項であり、埼玉県議会定数93議席に占める共産党の議席数は3だ。議員連とは言え、要望を出すことしかできない。そして、既に多方面から批判されているように、共産党の要望は都市公園法第1条に反するという、抽象的で具体性がないものでしかない。共産党の中止要請は、しらこばと水上公園で開催される(共産党の基準で)卑猥な撮影会に言及していると考えられ、川越水上公園については言及がないが、両公園のプールが一律に中止になった。もともと水着グラビア撮影会が中止される方向にあったか、他に大きな理由が見つかったかの蓋然性が高い。

2. プール運営者に後ろめたいところがある

埼玉県営公園プールでの水着グラビア撮影会は毎年多数おこなわれているのだが、ハミ乳やTバック状態の水着も見られた。猥褻とは思わないという主張も多いが、一般にプールで着られるような水着ではなく、露出過多という指摘は免れない*2。さらに、女子中学生、女子高校生も被写体として参加していることが確認できる。埼玉県営公園以外の南関東のプールでは、既に水着グラビア撮影会が禁止になっているところが多い。

埼玉県青少年健全育成条例では、平成30年9月の自民党県議団からの撮影会などを規制する提案によって、専ら客に異性の姿態を見せる役務を提供する営業は有害業務とされており、埼玉県と同様の条例のある愛知県では女子高生を使った水着の撮影会が摘発された*3。さらに中学生を用いる場合は、さらに労働基準法第56条違反になりうる*4。本当に条例や法令違反になるかはさておき、未成年者のモデル起用は、共産党以外からも、よくない事だと考えられている。

大野もとひろ埼玉県知事はツイートで、過去の撮影会の参加者のネット投稿内容等から、主催者が許可条件に反する行為を行っていたことが判明したため、埼玉県公園緑地協会は今後撮影会は許可しないこととしたと説明している。具体的な違反行為が明示されているわけではないので、公序良俗に反するので利用条件に反すると考えているぐらいの情報しかないが*5

3. 埼玉県公園緑地協会の立場

水着グラビア撮影会の直前に一律に一方的に利用許可を取り消した埼玉県公園緑地協会の決定は、主催者、参加者、関連業者に、経済的被害を及ぼすことはほぼ確実で、横暴とも言える*6。行政訴訟の可能性すらある。それでも強行したということは、法令違反が行われている可能性を考慮したと考えるべきだ。共産党の「性の商品化」に反対する主張を、埼玉県や埼玉県公園緑地協会を受け入れたことを示すコメントも無い。

水着グラビア撮影会ではなく未成年者を排除すればすむ話だが、水着グラビア撮影会を残す限りは追求してくる人々は出るので、未成年者を排除しても何年間も黙認してきたのか監督責任を問われる可能性がある。少数野党に問われるだけならば問題はないが、与党も未成年者の水着グラビア撮影会に理解があるわけではない。そうなると、水着グラビア撮影会の主催者も、未成年者を利用してきたことの責任を問われる。水着グラビア撮影会自体を潰して、さらなる追求の可能性を封じるのが、保身のために取りうる最善手。

行政が意識して実行したかは分からないが、水着グラビア撮影会は今のところ彼らの保身にとって正解であった。共産党の皆さんは勝利宣言をして満足だし、乱暴に水着グラビア撮影会を中止した責任追及は共産党の皆さんに向かっている。埼玉県営公園から水着グラビア撮影会がなくなる直接の理由は、条例を制定した2018年から未成年モデルの排除をしてこなかったことであって、共産党が難癖をつけたからではないはずなのだが。

*1埼玉県営公園での水着グラビア撮影会(未成年女子もモデルとして参加)の是非 - Togetter

*2もちろん社会慣行よりも露出過多で何か問題があるのかは自明ではない。

*3<JKビジネス>愛知で「水着撮影会」摘発――女子高生アイドルの水着写真は大丈夫? - 弁護士ドットコム

撮影会の会場がプールなので条例が言及する店舗型と派遣型のどちらにも当てはまらないという主張もあるのだが、愛知県の担当者の説明ではアイドルのイベントでも対象になるとしており東京都では主催者が所有や管理をしない撮影スタジオでの事件が摘発されている(←東京都では店舗型と派遣型の区分けは特定異性接客営業等の規制に関する条例に記載されており、さらに届出の義務が課せられている)ので、撮影会の会場がプールであることで規制が回避されるとは考えずらい。

JKビジネスを対象としており、アイドル事務所には適用されないと言う主張もあるのだが、アイドル事務所がJKビジネスをしたら適法になるとは思えないので、撮影会主催者の性質で規制が変わることは考えづらい。

*4女子中学生にギャラが発生している場合、児童の健康及び福祉に有害である場合、行政官庁(所轄の労働基準監督署長)の許可、学校長の証明書、親権者の同意書をとっていない場合は違法となる。

*5大学ミスコンの性暴力事件のような具体的な問題が発覚したわけではないので、撮影会の水着モデルから女子中学生、女子高生を排除してこなかった人々が多数いるし、水着も過激なものが散見されるし、このままだと何をやりだすか分からないからリスクオフをしておこうと言う曖昧で総合的な判断が、各所で働いているかも知れない。

*66団体で6回の水着グラビア撮影会が予定されていたが、すべての団体が未成年モデルを起用していたわけでは無いそうだ。

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