ジェンダー社会学者の千田有紀氏が、現在国会で審議中の「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」(LGBT理解増進法案)では、学校でトランスジェンダーをどう取り扱うのかが焦点で、英国タヴィストック・ジェンダー診療所の事件を参照しつつ、子どもたちが保護者の同意なく誤ってトランスジェンダーだと診断され、不必要に二次成長抑制剤の投与や外科手術を受ける可能性を指摘している*1。
LGBT理解増進法案の第19条が学校教育の場での話になるが、(1)トランスジェンダーをトランスジェンダーだとどう診断/判別すればいいか、(2)保護者が子どもがトランスジェンダーであることを認めない場合はどうするべきか、(3)未成年者への侵襲性、不可逆性が高い「治療」*2を行うべきかと言った論点については、親が理解してくれないと訴える子どもに相談窓口を提供する程度以上の話は出てきそうにない。
第十九条 学校長等は、教職員、児童、生徒、学生その他の関係者に対する性的指向又は性自認に関する理解を深めるための研修の実施及び普及啓発、性的指向又は性自認に関する相談に係る体制の整備その他の性的指向又は性自認を理由とする差別を解消し、及び性的指向又は性自認に係る言動により修学等の環境が害されることのないようにするために必要な措置を講じなければならない。
2 主務大臣は、基本方針に即して、前項の規定に基づき学校長等が講ずべき措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下「学校長等実施指針」という。)を定めるものとする。
3 第十一条第二項から第四項までの規定は、学校長等実施指針について準用する。
相談窓口の他に、トランス女性に女子トイレの利用を認めつつも、女子更衣室の利用は認めず別の部屋を用意するような運用が予想される条文ではあるが、診断や「治療」について親権を制限するような内容は無い。トランスジェンダーに関する調査研究を推進があるので、間接的には診断/判別と「治療」について影響しないとは言えないが、親権の制限や侵襲性、不可逆性が高い「治療」に至るまでは、もっと法案を整備しないといけない一方、政官世論がそれを目指していると考えるべき情報は無い。
*1LGBT法案のもう一つの焦点―学校から医療に送られる子どもたち(千田有紀) - 個人 - Yahoo!ニュース
このエントリー、事実誤認の面がある。報道にあった1000人超は18歳未満の患者の総数で、何千人ものから訴訟される可能性は無く、「1000人単位の集団訴訟へとつながっ」たわけではない。
*2性的違和の解消につながるという意味では治療なのだが、トランスジェンダー怪我や病気の人々ではないことになっているので、治療行為と見なすべきか疑念がある。
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