2023年6月14日水曜日

論敵の印象が悪くなるように論敵の発言を捏造したり戯画化したりすると、名誉毀損になるよ

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地裁判決だが、元グラビアアイドル/現ライターの石川優実氏とネット論客の青識亜論氏の訴訟で、青識亜論氏に賠償が命じられた*1

問題となったツイートは二つあるのだが、どちらもある話題に対する石川氏の発言を、他の話題に対しての石川氏の意見として紹介するものだ*2。問題ツイートでは、石川氏が性暴力被害者や炎上事件の当事者といった困っている人々を突き放すような発言をしたことになっているので、真に受けると石川氏への印象が悪くなる。虚偽であるので、違法性阻却事由もない。(虚偽の)事実を摘示し、公然と、人の社会的評価を低下させたと言える。

ネット界隈の論争に限らずだが、批判対象の言動を極端なものに表現して紹介していることがよくある。批判対象の主張が混乱しており誤解してしまっている場合もあるが、原文の一部を切り出しているだけだったり、原文で明確に否定していることを肯定しているかのように紹介し、不当な主張だと激しく非難を加えている。しかも同じネタで何年間も繰り返しており*3、傍目には批判対象の印象を悪くし、社会的評価を低下させることが目的のようにさえ感じる。

批判対象の言動を元にしていたとしても、戯画化が過ぎると名誉毀損になる。京都弁護士会館に裸婦画が飾るか否かについて両性の平等に関する委員会の見解を伝えた弁護士について、「「裸婦画はセクハラ」と取り外しを要求した無粋な女性弁護士」と言う見出しの週刊新潮の記事が、芸術性を評価せず、無粋な要求を行っているかのように弁護士を戯画化し、社会的評価を失墜させたとして、名誉毀損であると裁判所に認定された事件がある。

冗談で、よく話しているアカウントの発言を捏造したり、戯画化したりしているのを見かけることはあるが、あくまで冗談を言い合える間柄だから許されており、喧嘩腰に議論している関係では受忍範囲とは見なされない。意見が合わない相手だからこそ、誠実に議論をすることを心がける必要がある。

追記(2024/01/27 03:12):青識亜論氏は控訴したが、裁判官から一審判決を踏襲した上に相互に今後言及をしないと言う和解案が出され、受け入れた(青識裁判、勝利解決のご報告 | 石川優実ニュースレター「for myself」)。

追記(2024/04/25 01:17):SARS-CoV-2ワクチンによる不妊は「治験期間が短かったことから現時点でその可能性を完全に否定することは出来ない」ので「「デマ」ではなく「中長期的リスクは全く不明」が正しい」と言う主旨のツイートをした青山まさゆき氏を、「『ワクチンで不妊になる』という最悪のデマをひたすら吹聴」したとツイートした知念実希人医師に、名誉毀損で賠償命令が命じられた(埼玉新聞)。これも論敵の主張を誇大にして非難した例になる。

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