部屋を片付けていたら「理系のためのサバイバル英語入門」が発掘されたのだが、読んだ記憶が無かったので読んでみた。
本書は、どちらかと言えば物理・化学(分子生物学を含む)分野を志す大学生のための論文執筆と学会報告のためのガイドラインで、トレーニングのための英語教材では無い。関連はしているが独立した、5人の著者の理系英語ノウハウに関するエッセイが収録されている。
1. 分野ごとに必要とされる英語は異なる
こういう学習ガイドライン本は、ある程度の重要性を持っている。英文学だけを読んでいる人が、以下のような数式を発音できるかと言うと、そうでは無い。同じ英語でも分野ごとに方向性は異なるわけだ。
本書の各部の終わりにあるコラム、「読めないんだなー,これが」を読むと、読み方が分かるようになる*1。
2. 理系英語の色々な側面
第1部が掴みで、中高の英語では内容的に不十分である事を示し、学術論文の投稿のやり取りの英語が説明される。理系英語の問題を解かせているが、単語は理系なのであろうが、表現部分はそうでもない。
第2部が学術論文における英語表現と、学術論文の構成が説明される。恐らく具体例と対象読者は笑えないユーモアとして、巻末に英語の学術論文の形式を、英語の学術論文の形式による説明がつけられている。
第3部が学会報告やワークショップで苦労すると言う話と、それは回避不能と言う心構えが述べられる。具体的な対策がサバイバル秘伝として5つ、仲良し秘伝として7つ挙げられており、多少は学術分野の国際交流の雰囲気が分かる読み物となっている。
第4部で、理系英語に限らないとは思うが、カタカナ英語と英語に違いがあることが説明される。なお化学分野では、学会ガイドラインがあって弱い法則があるようだ。クロスワード・パズルもついているが、理系英語との関連はよく分からない。
第5部は(内容はもっともなのかも知れないが)自己啓発セミナー的な内容になっている。ただし第7章以降のワトソンとクリックの二重螺旋のDNA構造に関する論文の紹介は、論文の読み込み方として興味深い。
3. 古い本なので、時代の変化を感じる
全般としてみると、有益な記述はなお多いと思う。ただし、細かい点では21世紀的ではない。オンライン検索が可能になって、辞書を引いても専門用語が載っていない事で苦労する事は減ったし、スペル・ミスもスペル・チェッカーでだいぶ減らせる時代になった。本書が書かれた1996年にはほぼ無かった、ウェブで見られる映像音声付の英語教材*2は、現在では利用を奨励されるべきであろう。
4. 人によっては修業の道かも知れない
ただし学部生だと、読むのは苦労するのではないかと思う所はある。引用されている英文は、平均的な大学生であれば、恐らく辞書を引きながら読むことになる。また、第5部は意識が高すぎて眩しい。私は英英だけでは生活ができません。そもそもサブタイトルの「勝ち抜くための」と言う所が猛禽類で怖い。なよなよした文系で良かった。
*1本書を読まなくても、「数式の読み方」で検索すると、答えに到達できると思われる。
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