90年代には既に、今後のプログラマーは弁護士と相談しながら開発を進めないといけないと言われていて*1、最近のソフトウェア特許紛争の増加はそれを証明しているようだ。
スマートフォン関連の法廷闘争もメディアで報道されており、ここまで一般化してくると経済学者も何か言及したくなるものらしい。ワシントンポスト誌がノーベル賞受賞の経済学者2名のソフトウェア特許に関する意見を紹介している。
結婚の経済学で知られるベッカー氏は、「ソフトウェア特許に関する紛争は、もっとも良く起き、高くつき、非生産的だ。特許機構からの排除は、幾つかのソフトウェアの革新を阻害しうるであろう。しかし、特許権申し立てに関する訴訟費用の抑制は、その費用を経済に補償する以上になるであろう。似たような特許を保有する誰か他の者が訴訟を起こして法廷闘争を行うかもと言う不確実性を消去するであろうことから、幾つかのソフトウェアの革新は促進される。」と指摘している。
メカニズム・デザインのエリック・マスキン氏も同様の意見で、「ソフトウェア産業において、進歩は高度に漸次的であり、進歩は典型的には、それぞれが先行者の上に成り立っている膨大な数の小さな進歩を介している。もし、それら一歩が特許を取れるとすると、特許保有者はライセンス料を設定することで続く発展を効果的な阻止するか、少なくとも遅らせることが可能になる。高度に連続的な革新をともなく産業においては、特許を制約するよりも、特許をまとめて無くす方が望ましいであろう。」と主張している。
Alex Tabarrok氏なども同様の主張しており*2、ソフトウェア以外の特許の存続に関しては経済学者の意見は分かれているものの、ジョージメイソン大学のEli Dourado氏によると、ソフトウェア特許に関しては経済学者の見解は一致しているそうだ。ただし、経済学者の意見は法曹関係者に影響を与えることはできずいて、最近、特許裁判所の裁判長を引退したPaul Michel氏に同誌がインタビューしたところ、ソフトウェアを特例扱いにするのには反対だそうだ。
実は技術的にハードウェアとソフトウェアの区分が難しい時代になっており、フリー・ソフトウェアの教祖リチャード・ストールマン氏が主張するように、“一般的なコンピューター・ハードウェア”でソフトウェア特許の行使を認めない*3方が現実的な気もするが、ソフトウェア特許が社会的余剰を下げている事は広く認識されて来ていることは確かなようだ。
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