2013年8月23日金曜日

もっと経済数学を

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ノーベル賞経済学者のクルッグマンが、経済数学は費用対効果が悪いと言うBryan Caplanジョージメイソン大学教授の主張を真っ向から否定している(NYTimes.com)。スタージョンの法則の通り9割の議論はカスだが、数理経済モデルなしではカスの比率が9割よりもっと上がるそうだ。大雑把に、以下のような事を言っている。

例えば産業育成のための保護貿易は以前から主張されてきた。しかし経済数学を使った新しい貿易理論(New Trade Theory)では、保護貿易は輸出側だけではなく輸入側にも利益があり、自由貿易を強化する事が示される。数理モデル化される前までは、Bela Balassaなどの少数の人々しか、この事を理解していなかった。

マクロ経済モデルでも、経済数学を使わないで議論する人々は「政府債務は金利を引き上げ、より高い金利は民間投資を減らすので、不況時の政府歳出の増加は実際に縮小的である」などと言い出しがちだ。そして、これに自己矛盾のバカ話だと経済数学無しで説明するのは、困難である。ケインズも「一般理論」で経済数学を使っていたら、もっと分かりやすい話になった事であろう。

過剰で誤った経済数学が氾濫しているし、モデルだけで物事を考えてモデルの想定外の事が盲点になる癖もある。過剰な数学は批判するべきだし、難しい数学を高品質の証拠と見なす風潮は戒めないといけない。しかし、数学とモデル無しの経済学を多く見てきたが、ロクなもんでは無かった。

もはや数理経済モデル無しの経済学は考えづらい時代なのだが、米国でこういう議論があるのは面白い。研究としては計量分析や実験の比率が高まってきているので、流行では無くなって来ているのであろうけれども。

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