尖閣諸島中国漁船衝突事件のビデオが流出して、海上保安庁が以前から主張していた中国漁船の行動が衆目にさらされた。違法性や悪質性が確認されただけだが、政府が世論を無視し、根拠が不明な証拠映像の秘匿を行っていたため、菅政権への打撃は大きいようだ。流出事件前後で色々と迷言が飛び出し、ここ二日間は飽きない展開となっている。目に付いたものをまとめてみた。
- 1. 環球時報「(事件前)日本の巡視船の方から中国漁船に衝突した」(産経ニュース)
- 環球時報は人民日報系列の新聞だが、日本関連の報道では反日姿勢を明確にすることで、販売部数を伸ばしているとされる。つまり、中国一般市民に受けのいい記事を書いている。中国製冷凍餃子事件の時も、日本で農薬が混入したと主張していた。事件後にも日中間には「国際法を適用するという考えには全く根拠がない」(レコードチャイナ)」と、国際海事条約を無視することで、中国漁船の行動を全て正当化している。
- 2. 中国市民「映像は日本の俳優が演じているに違いない」(産経ニュース)
- 環球時報の報道と異なるため、ビデオの内容を虚偽だと思い込むようだ。「今は技術が発達しているからたぶんこの映像は偽物でしょう」(日テレNEWS24)と言うものもあった。日本は中国ほどは偽物が出回っていないのだが、疑ってかかるのが中国人らしい。ただし、彼らは中国共産党の報道を正とする習慣があるため、本心から言っているのかは分からない。
- 3. 官邸「衛星通信で飛ばした映像データを北朝鮮に盗まれた」(産経ニュース)
- 暗号衛星通信を傍受・解読できる技術が北朝鮮にあるのか、そして北朝鮮がビデオ映像の流出でメリットがあるのか分からないが、問題の所在が外部にあると思いたいのが分かる発言。捏造と評する中国の一般市民と、民主党に共通点を感じざるをえない。
- 4. 社民党・福島瑞穂党首「(流出前に)車が道路でちょっとコツンとぶつかるような、あてて逃げるという映像だ。」(産経ニュース)
- 両議員は中国漁船と巡視船が偶発的に接触したと説明していたが、ビデオの流出によって明らかな嘘か、判断能力の欠如を疑われる結果になった。なお、流出後の福島党首は、情報統制の問題点と流出犯逮捕の必要性を主張することで、流出前のコメントに対する説明は回避しているようだ。なお、民主党・小林興起議員、社民党・服部良一衆議院議員、新党日本代表・田中康夫議員も同様のコメントを残していた。
- 5. 仙谷由人官房長官「(中国に)しかるべく説明を申し上げることになる」(日経)
- 仙谷官房長官は、何故か中国政府等をさすときに常に敬語である事が疑問に思われている。石原都知事も「これだけ屈辱を味わわされている相手国になんでへりくだった敬語を使うのか。」と批判をしているが、同意する人は多いであろう(産経ニュース)。そもそも情報漏洩は国内問題で、中国に説明する必要があるのかは疑問だ。
- 6. 仙谷由人官房長官「小沢なき後の、なんか、悪い…」(産経ニュース)
- 批判されているのは沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件を発端とする対中外交姿勢であって、仙谷官房長官のキャラクターが小沢一郎氏ほど立っていないのを理解しているのであろうか。
- 7. 鳩山由紀夫前首相「政府にいる人間が政権批判を行う情報クーデターとすれば、政権にとって大変厳しい話だ」(asahi.com)
- 一見まともそうだが、流出犯(sengoku38)が政権批判を行っていると述べている点で、流出犯が愉快犯などでは無く、ビデオ流出事件が政権への打撃になることを認めている。『民主党側は「(流出は)倒閣運動だろう」(幹部)、「政治的テロだ」(中堅)と危機感を強めている』(産経ニュース)そうなので、鳩山氏が民主党議員の総意を代弁しているようだ。
- 8. 原口一博前総務相「役所がやったとすれば、国家に対する反逆に近い」(asahi.com)
- 流出犯は政権への反逆ではあるが、国家に対する反逆ではないと指摘されていた発言。国民の多くと野党が公開を求めていた動画なのだから、国家に対する反逆とは言えない。11月1日の時点の世論調査で78.4%の国民がビデオの全面公開を求めている(産経ニュース)。
- 9. 民主党幹部「徹底して犯人を探し、共犯者、背景も調べるべきだ」と言っている(時事ドットコム)
- 私怨で流出犯追求かと思われている発言。海上保安庁には映像流出を歓迎する電話やメールが寄せられている(日経)し、元内閣安全保障室長佐々淳行氏も「投稿者は愛国心に燃えた憂国の士」だと評している(産経ニュース)し、石原都知事も「結構なことじゃないか」と評している(毎日jp)ぐらいで、犯人追求に国民の関心は無い。
- 10. 海上保安庁幹部「うちから流出したとは考えたくない。犯人捜しのようなことはしたくない」(産経ニュース)
- 隠せない動揺を表している。部下を検挙されたくない気持ちは分かるが、内部犯行だとすると国家公務員法違反は避けられないし、情報管理が適切に行われてきたかは問題になる。現在の民主党や内閣の論調では、もし流出犯が特定されれば、幹部を含めて処分されるのは避けられない。
なお流出動画には、飲酒で酩酊状態であったとされる船長が確保される部分は含まれていない。那覇地検が下した不起訴処分の妥当性を完全に検証するためには、残りの部分も公開する必要があるだろう。
政府は係争中の事件に関する証拠品は公開できないとするが、そもそも不起訴処分で国外退去になっているし、公益上の必要がある場合は公開できることになっており、ロッキード事件で前例もある(日経)。そして、トロール漁船の船長に不利益があるとは思えない。
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