2013年8月21日水曜日

新日鉄住金の訴訟で「法の支配」を語る前に

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経済評論家の池田信夫氏が『新日鉄は「法の支配」を守り抜け』と言っているのだが、韓国司法の意味不明さはともかく、現実とは乖離した妄想になっている*1

韓国の最高裁で新日鉄住金が賠償を命じられても、新日鉄住金は損害賠償を拒否しろと言うものだが、間違いなく韓国の司法システムを拒絶する事になるので、「法の支配」を守ることになるかは分からない。

「政府は韓国政府と国際司法裁判所で争うべきだ」と言っているが、これは日韓請求権並びに経済協力協定の第三条に、日韓で解釈が揉めたときに第三者を含めた仲裁委員会を設置し、その裁定に従うとあるので条約に沿っておらず、「法の支配」と言えるかが良く分からない。

1. 韓国司法の法理について

国家間の条約は最高法規と同等と見なされ、pacta sunt servanda(合意は拘束する)から条約に従うべきだと通常は考える。韓国側の主張は、民族虐殺などの人道に対する不文律の罪はjus cogens(強行規範)として条約やその他の法規に勝ると言う事のようだ。

戦時徴用は日本国内でも行われていたし、韓国相手に侵略戦争をしたわけでもないのだが、「道徳的社会秩序」を理由にした事からすると、韓国では日本は韓国を武力的に侵略し、非人道的な方法で徴用を行い、これはホロコーストと同等の人道に対する罪という事のようだ。

ただし韓国側の法理に関わらず、国際法では日本に理があるように思える。2008年に、1944年6月にナチスドイツ軍がイタリアのトスカーナ地方で行った虐殺に対する賠償請求訴訟でイタリア最高裁はドイツ政府い賠償を命じたが、2012年2月に国際司法裁判所(ICJ)でドイツ側が勝訴して賠償支払い義務の無効が確認されている。

追記(2013/08/21 11:27):韓国側の判決を正確に表現すると、(1)日本による韓国支配は違法な占領に過ぎず強制動員自体が違法で、(2)日韓請求権協定は植民地支配に対する賠償を請求したものではなく強制動員への賠償請求権は残り、(3)韓国政府は国民個人の同意なく個人請求権を条約で消滅させられないと言う事になる(菊池(2012))。(2)から植民地支配に関する損害賠償請求権が請求権に含まれない特別な扱いになっていることが分かるし、(3)は明らかに条約の無効を主張している。

2. 問題の根本は反日教育

韓国国内の史実を曲げた反日教育では、恐らくナチス・ドイツがユダヤ人に行ったような行為を、日本人が朝鮮人に行っていたことになっているのであろう*2。サッカーの試合の横断幕などもそうだが、「韓国児童の反日絵画展」を見ると、反日感情の表現が道徳的に奨励されている世界になっている事が分かる。旭日旗をナチス・ドイツのハーケンクロイツと同等と言い出したのは最近だし、従軍慰安婦問題が大きく取り上げられたのも1980年代以降だ。

3. 妥協による早期決着は考えづらい

こういう事情があるので、日韓の間の問題の政治的解決は安定しないように思える。韓国が専門の政治学者の浅羽祐樹氏は、従軍慰安婦問題に関して『外交敗北に近い現実を直視し、早期の決着を図るのが戦略的な判断』と主張しているが(中国新聞)、1965年につけた外交決着や、1992年に出した譲歩案が国民情緒で解決につながっていない以上、全く説得力が無い提案に思える。韓国に留学していたので、韓国好きなのであろうけれども。

4. 日本政府ができること

直面する問題に対しては、日本政府としては仲裁委員会を設置を要請し、新日鉄住金は賠償支払いを保留するのが妥当であろう。長期的には、韓国人の歴史認識を修正していく必要がある。何らかの方法で史実に向き合ってもらう努力は必要であろう*3。それが可能か否かは分からないが、このまま韓国が過激化していけば軍事的衝突も十分にあり得るし、実際に韓国国内ではそういう論調も少なく無いようだ。

*1なぜか関連してライブドア事件の判決が国民情緒で決まったように断定しているが、過去の事件と比較していくとそのように言える根拠は少ないはずだ(関連記事:僕だけ実刑というのは不公平?ホリエモンの起こした罪が重い5つの理由)。

*2例えば1920~1934年の産米増殖計画で朝鮮人の食料事情が悪化し窮乏したように教えているのだが、実際には人口が急激に増加しており、平均身長がのびている(関連記事:産米増殖計画について、ある社会学者にある二つの誤解)。

*3近年の従軍慰安婦問題や徴用工問題は日本から発生しているので、日本国内の在日韓国・朝鮮人を含む社会学者や歴史学者の情緒的な言動を否定していく作業も、日本政府としては必要なのかも知れない。

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