2011年10月15日土曜日

デニス・リッチーの死と批評家

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10月13日に、C言語の開発者で、UNIXの共同開発者のデニス・リッチー(Dennis MacAlistair Ritchie)が逝去した(マイコミジャーナル)。80年代以降のコンピューティングの世界に最も大きな影響を与えた一人だ。リッチーが創り出した物は、多くの人々に受け継がれて、多くの派生物を生み出している。社会的影響力で言えば、先日逝去した起業家の比ではない。

C言語とUNIXが、現代社会に与えた影響は計り知れない。UNIXで生まれた概念や機能は、UNIXの亜種であるMacOS Xや、UNIXクローンのLinuxのみならず、MS-DOSやWindows等の他のOSに取り込まれたものも多い。C言語はUNIXやWindowsのシステム記述言語であり、膨大なアプリケーションの記述言語でもある。また、C言語はC++とObjective-Cと言う派生を産み出した。そしてC言語は多くの言語仕様にも影響を与えている。

高速で動く高級言語であるC言語の仕様は“不完全”なものであった。例えば同じint型でも8、16、32bitsシステムでそれぞれ違う有効桁数になる。アプリケーションが使用してはいけないメモリー領域に容易にアクセスできてしまう問題もあった。しかし、このような不完全性はハードウェア資源の利用範囲が広いことも意味し、アセンブラが中心であった世界に、可読性や移植性をもたらす事に成功した。

デニス・リッチーは、現代のソフトウェア・テクノロジーの礎を創り出した人物だが、比較的高齢で亡くなった事もあり、世間的に目立つ人でもなかったためか、その死は、普段からソフトウェア産業の技術革新を批評している人々の注目は浴びなかったようだ。ソフトウェア産業を会社情報の集積としてしか見られない人々は、ソフトウェアの世界で何が偉業か、何が文化なのかも分かっていないのであろう。そういう人々のソフトウェア産業の批評に全く価値があるようには、全くもって思えない。

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