2011年7月20日水曜日

電力自由化について知っておくべき7つのこと

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福島第一原発の災害・事故から電力会社への不信感が増したためか、送発電分離による電力自由化を期待する風潮が徐々に出てきたように思える。しかし、電力自由化の効果については、整理されて考えられているように思えない。

電力自由化で電力料金が劇的に下がる、再生可能エネルギー促進法で電力自由化が阻害される、電力自由化で脱原発が促進されると言った諸説だが、良く考えてみると説得的ではない。その理由となる、電力自由化について知っておくべきことをまとめてみた。

1. 電力自由化について知っておくべき7つのこと

1.1. 電力自由化よりも発電方法で電力価格は決まる

電力価格の大半は、発電方法によって決定される。イギリスとドイツは電力自由化が進んでおり、フランスは事実上の国営一社の体制だが、2010年上半期の1kWhの電力価格は€0.1380、€0.1370、€0.0971となっている(電力自由化の成果と課題Eurostat)。つまり非電力自由化国のフランスが安い。もちろん電力自由化で高くなるわけでもなく、電力自由化の進んだフィンランドは€0.1026だ。廉価な原子力や水力が多い場合は、電力料金が安くなる傾向が強い。

1.2. 電力自由化で電力料金はある程度安くなる

同じ発電源の比率であれば、電力自由化で電力料金は安くなる傾向があることが、ダラス連銀のディスカッション・ペーパー内の計量分析で指摘されている(関連記事:米国は電力小売市場自由化で、電力価格が下がった)。つまり、脱原発のコスト高は相殺できないであろうが、電力自由化で電力料金は安くなると考えて良いであろう。

1.3. 全量固定買取制度(FIT)は電力自由化と共存できる

電力自由化国で行われているので、出来ないわけが無い。FITの再生可能エネルギー購入資金は、費用負担調整機関が拠出する。費用負担調整機関は、電力需要化にサーチャージとして購入費用を転嫁する(経済産業省)。電力会社は事務手続きを代行するのだが、素通りするのであまり関係ない。送電会社と発電会社が分離してもメカニズム的には問題は無い。

1.4. 東京電力救済案は電力自由化の阻害にならない

東京電力が送電会社と発電会社に解体されるとき、その負債も解体される事になる。現行案では原発事故被害者と接するのは東京電力となっているので窓口が拡散される恐れもあるが、送電会社が引き継げばいいだけだ。賠償支払いのための特別目的事業体(SPV)を設立し、そこに処理を引き継がせる方法もあるし、何も大きな問題にはならない。

1.5. 政府が売買条件に口を挟むのは自由化ではない

託送料金やインバランス料金を見直すべきだと言う主張もあるが、電力自由化では発電会社と送電会社の交渉力で決定される事になる。送電会社が競争的であれば発電会社に有利になるであろうが、強い必要性から決定されている条件であれば、完全競争でも覆せない。電力自由化とは政府ではなく市場が売買条件をコントロールすると言う事だ。

1.6. 電力自由化は脱原発を約束しない

電力自由化国である米国、英国、フィンランドにも原発はあるし、米国や英国では新規設置計画が持ち上がっており、フィンランドでは電力自由化後に着工がされている(関連記事:電力自由化で原子力発電所は無くなる?)。福島第一原発の災害・事故後も建設計画は保持される見込みだ。

1.7. 電力自由化は再生可能エネルギーにはマイナス

発電コストが高く、電圧や電流が不安定で、需要追随運転のできない再生可能エネルギーは現在は商品価値が低い。台風が来ると風力発電は機能停止に追い込まれ、太陽光発電は大きく発電量を低下させる。電力自由化をすれば、一定割合の再生可能エネルギーの利用義務化制度(RPS)やFITを準備しないと再生可能エネルギーは市場から駆逐される。

2. 政財界が電力自由化への関心が弱い理由

脱原発にも、再生可能エネルギー促進にも、電力料金大幅値下げにもならないと聞けば大半の人は電力自由化に興味を無くすと思う。政財界の大半の反応が薄いのは、そういう理由であると思われる。停電などが多発し電力の品質が下がると言う説もある(毎日jp)ので、少なくとも慎重になるのはやむを得ない。

電力会社が得ているであろう独占利潤を排除できるのと、立法無しによる政治的な影響を排除することができるので、市場の透明性を確保するために電力自由化はすべきであろうとは思う。しかし、原発行政の組織再編など他の懸案事項に国会のリソースを割り当てる必要もある。電力自由化は懸案事項を解決するものでは無いから、国会議員の関心を引くかは良く分からない。

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