強制性の無い官募集と官斡旋、徴兵と同じく強制の徴用を全部まとめて「徴用」としてしまう語義曖昧論法*1で、新日鉄住金の戦時中の朝鮮人の使用は、徴用でも強制連行でも無い気がするのだが、最高裁にあたる韓国大法院は新日鉄住金に“元徴用工”への損害賠償を命じて、事前の予定通りではあるが、日韓の軋轢がさらに高まっている。
日韓請求権協定の交渉時には徴用工の問題も含めて話し合われていた認識*2の日本政府の態度は強硬だ。河野太郎外相は街頭演説で「1965(昭和40)年に国交を正常化した際に結んだ日韓請求権協定を基に、元徴用工への補償は韓国政府の責任で行うべきだと訴えた」そうだ*3。日本政府の方から、何らかの譲歩を行なう事は無いと思われる。
韓国政府の出方が気になるのだが、大統領府は態度を明らかにせず、積極的に関与しない姿勢を示した*4。韓国政府は、日韓請求権協定で徴用工の請求権に関する問題は外交上解決済みとしてきており、行政と司法の間に深刻な見解の相違が生じている。韓国政府が訴えられているわけではないので、放置しておこうという姿勢なのであろう。2015年の慰安婦問題に関する日韓合意に対してと、同じ態度だ。
俗に言う国民情緒法がある国なので、従来方針を維持するような声明を出して火中の栗を拾うのは危険極まり無い一方、外交上の合意をはっきり反故にする勇気も無いのであろう。調停委員会や国際司法裁判所(ICJ)に大法院の主張を持ち込んで、戦前の日本統治が正当化されるリスクも取れない。一方、元慰安婦や“元徴用工”も高齢で多くは亡くなっており、あと10年もすれば生存者はいなくなる。支援団体も核となる人々がいなくなれば、自然消滅する。
韓国司法の方がやる気を出して、強制執行命令などで韓国政府をつついてくるかも知れないが、韓国政府としては先送りしたまま問題の消滅を願う方針のようだ。漠然とした不満を韓国国民に残す事になる。振り回される事になる日本側にも困惑と先行き不透明感が広がる。何かの方法で決着をつけることを目指す方が、少なくとも気分的には健全であろう。何かしているフリのために、朴槿恵政権時代の告げ口外交のような事をされるよりも、ICJにでも訴えられる方がよほど誠実な態度に思える。
*1官募集に応募したのであれば、自由意志で工場や炭鉱で労働したことになるので、日本政府が強制連行して苦役を負わせたとは言えなくなる。ゆえに、全部まとめて徴用工と呼ぶことで、全部を強制労働の被害者としているように思える。
*2「日韓、徴用工の問題も意識」協定結んだ53年前の事情:朝日新聞デジタル
*3韓国の司法が勝手に日本政府や日本企業に賠償命令を下して、韓国政府が勝手に代行支払いをして終わりにして、日本政府と日本企業の悪逆非道ぶりを一方的に認定する寸劇を繰り返すと言うのは、実は現実的なソリューションではあるものの、慰安婦問題ではこの小細工は取らなかった。
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