2018年11月3日土曜日

朝日新聞で紹介されたネット右翼の実態調査に関して注意すべきこと

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大阪大学の辻大介氏へのインタビュー記事が朝日新聞に掲載されていて*1、ネトウヨの皆様がどういう存在なのか論じているのだが、そこの操作的定義に注意すべきことが幾つかあるので指摘しておきたい。厳しい判定基準のためにネトウヨを自認する人すら漏れる可能性があるし、65歳以上を調べていないため高齢者の動向は追いきれていない。

記事よりも詳しい説明がある辻(2017)を参照してみたのだが、韓国・中国に親しみを感じるか5段階評価での質問に、「あまり感じない」「まったく感じない」と評価し、かつ閣僚の靖国神社への参拝、憲法9条第1項及び第2項の改正賛成、かつ小中学校の式典での国旗掲揚・国歌斉唱に賛成、かつ小中学校での愛国心教育に賛成、かつブログのコメント欄やTwitterなどのSNSで政治や社会問題に関して意見を書き込んだものを、ネトウヨと定義している。2007年調査では中韓への否定的態度は36.6%が、2014年では62.7%に大きく増加しているわけだが、この厳しい判定基準のためにネトウヨは大して増えていない(1.3%→1.8%)と言うことになっている。

「特定の年齢層や年収レベルとの関連性は見えなかった」も調査方法の問題である可能性がある。2007年は20~44歳の男女を対象で、2014年は20~59歳を対象(それぞれマクロミルに依頼)、2017年は辻(2018)*2を見るに16~64歳を対象(NTTコム・リサーチに依頼)となっており、65歳以上を調べていない。ネトウヨさんの言説をよくみると、古臭い固定観念に縛られていることが多く、高齢者が予想されると言うか、先日の弁護士懲戒請求騒動による話でも、高齢者が多々いたことが指摘されているわけで、64歳以下のデータでは不十分な検証であろう。

支持政党や投票行動、デモ参加などを聞いていないようなので、この辻流ネット右翼の政治的傾向は分からない。

*1「ネット右翼」イメージと異なる実態 研究者から警鐘:朝日新聞デジタル

*2この論文自体はネット右翼を分析したものではなく、ネット利用が外国人排斥感情と外国人肯定感情という相反する傾向の人を増やす一方、これらの感情が強い人がネット利用を増やす傾向が無いことを確認したものである。なお、インターネットのパネル調査に言う限界はあり、連立方程式のそれぞれの式の誤差項の相関が無さそうで、かつ線形モデルを推定しているのに何故か完全情報最尤法を用いてはいるが、内生性については、弱相関テスト、過剰識別テスト、頑強性テストが行なわれ注意深く制御されており、特に分析結果に影響する大きな問題は無いように思え、メディアが個々に与える影響に関する先行研究とも概ね整合的な結論を導きだしている。

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