H.264と聞いてピンと来る人は少ないかも知れないが、最近のデジカメやウェブの動画で標準的に使われている動画圧縮形式の事だ。技術的な詳細は省くが、高い圧縮率と、高画質が特徴で、業界標準のMPEG4の一部となっている。しかしGoogleは、H.264がウェブ標準になることには反対のようだ。
1. H.264を捨て、WebMに走るGoogle
2010年5月にGoogleは、WebMという動画圧縮形式をオープンソースとして公開した。これは、On2テクノロジー社を買収して動画圧縮形式VP8と、音声圧縮形式Ogg Vorbis、ファイルコンテナ形式Matroskaをセットにした規格だ。WebMはGoogle Chromeの他、FirefoxやIE9でもサポートが予定されており、業界標準になりつつある状況で、業界標準になりつつある。
さらに驚くべきことに、2011年1月12日に、Google ChromeのHTML5のmovieタグで、H.264のサポートを中止すると発表した。Googleは、H.264がウェブで標準な地位を占めることを避けたいようだ。
2. H.264は、WebMに対して技術的に優位
しかし、WebMには画質という問題が残っている。エンコーダー・ソフトのx264の開発者の弁からすると、WebMのVP8の画質はMPEG2相当ではあるが、H.264よりも劣っている。WebMは、同じオープンソースのOgg Theoraよりは品質が高いが、H.264からすると後退になる。
3. H.264はオープンソース製品では特許料が無償だが、WebMは分からない
確かにH.264は業界団体が作った規格で、各社の特許が組み込まれており、Googleが推進するオープンソース・プロダクトには馴染まない。しかし、2010年8月末にH.264は、無料サイトに限り恒久的に特許料が無償化されている(ITMedia)。
さらにWebMのVP8がH.264で使われている特許を侵害している可能性があり、本当にフリーで使えるかは疑問が持たれている。特許料が無償だと書かれていても、本当にパテント・フリーなのかは分からない状況だ。
4. H.264を捨てWebMに走る事で失われるもの
Firefox用のH.264プラグインをリリースしており、H.264を推進しているマイクロソフトは、H.264の普及率から今回のGoogleの方針に否定的な見解を示している(MSDN Blogs)。技術的、特許的な面からもWebMに大きなアドバンテージがあるとは思えない。
もちろん特許面での問題をクリアできれば、気軽に有料サイトでもWebMを利用することができるし、オープンソース製品の開発に使う事もできる。しかし、エンド・ユーザーから見れば高画質・高圧縮で普及しているフォーマットの方が望ましい。H.265のサポート廃止は、ある側面から見てベストな選択肢を捨てることを意味する。
5. 政治が技術を上回る
WebMを推進するだけではなく、H.264を切り捨てた今回の決定は、HTML5の動画タグが普及する前にWebMを標準にしてしまう算段だとは思うが、上述した通り犠牲にしている面も多い。Google ChromeからH.264を排除するのは、かなり政治的な理由が濃い決定に感じる。
1 コメント:
On2系のエンコーダーは高圧縮でかつなかなかの画質を誇るものであるが、H.264よりもずっとエンコードに時間を要するのが問題点だ。特許の問題が絡むかどうかわからないだけでなく、WebMという規格を誰がそもそも好んで使うのだろうか。
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