2017年2月13日月曜日

B/Sが肥大した日銀に可能なインフレの抑え方

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インフレ目標達成まで消費増税先送りと言うシムズ式脱デフレ策に対して、財政政策の拡大によってインフレ加速的な経路に乗ってしまうのでは無いかと危惧が出ている*1。シムズ案ではインフレになったら増税が待っていて、理論的にも経験的にも増税は有効なインフレ抑制策であることから考えると、少し神経質かなと言う気もするが、税制変更には時間がかかるので、一般的な金融政策が麻痺している現状に不安があるのも確かだ。日銀が出来る手を考えてみたい。

1. 量的緩和で麻痺する金融政策

一般的な金融政策が麻痺している事を、まず確認しておきたい。何が一般的なのかが問題になるが、短期金融市場が発達した経済では、政策金利の上げ下げによって通貨供給量をコントロールし、インフレ抑制に努める事になる。インフレになったら日銀が金利を上げれよいと思うかも知れないが、その時点で量的緩和がされていたら、中央銀行は厄介な状況に立たされる。独立採算のはずの中央銀行の財務悪化が生じるし、さらに通貨の回収が十分に行なえない可能性が出てくるからだ。

2. 売りオペは限界が出る

売りオペを行なう事を考えてみよう。ゼロ金利(=高い債券価格)で購入した債券を、高金利(=低い債券価格)で売り飛ばす事になる。高く買って、安く売るわけだから、中央銀行の財務が悪化する。中央銀行が独立採算である限りは財務的に売りオペに限界が出る。また、中央銀行が損をした分だけ、市中銀行に取りきれないマネタリーベースを残す事になる。中央銀行の債券オペ能力に限界があることが知れ渡ると、貨幣の流通速度が上がりインフレ加速が進んでしまうかも知れない。

3. 自然償還では即効性が無い

売りオペなんかするわけ無いだろうと思った人は多いと思う。確かに、売りオペは諦めて国債買い入れの停止にとどめれば、一時的な評価損はともかくキャッシュフロー的には赤字にならない。しかし、日銀保有国債の平均残期間から考えると即効性に欠ける。2006年に量的緩和を止めたときのマネタリーベースに戻すには、通貨需要の自然増を差し引いても400兆円兆のうち300兆円ぐらい回収する必要があるのだが、平均残存期間は7年以上あるので7年以上かかりそうである。これでは増税が施行されるまでの方がリードタイムが短くなりそうだ。

4. 超過準備に付利をつけると財務悪化

他にも日銀当座預金に付利をつける事がよく示唆されている。しかし、これが機能するかは良く分からない。付利の分だけ金利は上昇するのは確かだ。しかし、付利をつける分だけ中央銀行が損をすることになり、市中銀行にマネタリーベースを残す事になる。これを不安視されて貨幣需要が減ると、高金利でもインフレが進行することになる。なお、400兆円の日銀当座預金に2%の付利を行なえば、日銀は年間8兆円の損失を蒙るわけだが、日銀の2016年上半期の純資産は3兆7675億円である。

5. 法定準備率の爆上げならできる

中央銀行のバランスシートが肥大化していると、金融政策でインフレ抑制策を取るのは不可能に思えてくるが、実は原始的な方法が一つ残されている。法定準備率の引き上げだ。2016年末で日銀当座預金のうち法定準備金は約3%なので、33倍にしたら超過準備を全て法定準備預金額に転換する事ができ、ハイパワード・マネーに不足する金融機関は預金金利や貸出金利の引き上げに走らざるを得なくなる。金利ではなく、ハイパワード・マネー自体を絞るような政策になるので、過去の経験から言えば市場に落ち着きがなくなる事が予想されるが、日銀が出来る最後の手段はコレになると思う。金融機関に強制的に国債を持たせているのと変わらないわけだが。

2 コメント:

boonie さんのコメント...

わかりやすいまとめをいつもありがとうございます。

最後の部分なのですが、法定準備率を大きく引き上げた場合は、国債も最終的には市中金融機関ではなく、日銀に集まらざるをえない気がするのですが、どうでしょうか?

最後の文中の金融機関には日銀も含まれているのでしょうか。

uncorrelated さんのコメント...

>> boonie さん
市中銀行の日銀当座預金に集まることになります。

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