2014年4月10日木曜日

ミルカ様が狂人風の「数学ガール/ガロア理論」

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ふと軽い読み物が欲しくなって「数学ガール/ガロア理論」を手にとって見た。期待通りに軽い感じなのだが、方程式の解の公式が存在できる条件を示したガロア理論の概要だけを知りたい人には良い本になっていると思う。また、私のように群論をちょっとだけ勉強した人には、復習教材として良いかも知れない。もちろん群論やガロア理論に興味をかきたててくれる一冊であるから、本格的な数学書を読む前の前菜としてもお勧めできる。

1. 数学の部分

ページ数は454ページとあるのだが、式の展開と図が豊富なので厚さの割りには手軽に読める。文章自体に大きな混乱は見られない。

構成は練られていると思う。群があみだクジから説明されていくのは、多面体群から説明する良くある方法よりは作業量的にとっつきやすいかも知れない。ケーリーグラフが多用されており、直観的な理解がしやすいように工夫されている。線形空間で添加体と拡大次数を説明したあとに、角の三等分の問題で具体的な応用事例の説明になっているのは、読みやすいし、後に繋がる展開だと思う。三次方程式の解の公式導出から、ラグランジュ・リゾルベントの説明につなげているのはお約束だと思うが、その後に平易な二次方程式でその理解を確認するのは悪く無いと思う。色々な前提知識を記述した後に、最後の章でガロア理論の部分に入る。

ガロア理論の部分は、補題と定理を具体例をあげて説明することで紹介されており、証明は与えられていない。ここをガチガチに行うと、もはや一般書ではなくなるのであろう。ただ十分に紹介されている印象は得たので、本書に飽き足らない人は「ガロア理論の頂を踏む」に突撃されたい。粗を探すとガロア4次方程式までが何故解けるのかはガロア群の分解で丁寧に記述されているが、5次のところは天下りな気がしなくも無く、P.414で説明無しに唐突に交代群が用いられているので、群論の知識が何も無い人が読んでいると記号に困惑するかも知れない。ここは脚注でも加筆説明して欲しい所。

現時点で9箇所のerrataが出ているから、初版本を借りてきて読む初学者は注意する必要があるようだが、群論やガロア理論に興味をかきたててくれる一冊だと思う。

2. 小説の部分

小説部分はやはり気になる所が多い。文学的に想像力を誘導する何かが欠けている気がするし、また伏線がはられていないので登場人物の行動に唐突感がある。小説なんて良く考えれば現実感の無い描写の集合なわけだが、本書は現実感を持たせようと言う努力は放棄しているようだ。具体的に見ていこう。

ミルカは「饒舌才媛」と言う設定なようだが、「僕」が「饒舌才媛」と何度も繰り返し形容し続ける以外にそれをあらわす描写が無い。確かに先生役なので台詞は長いが、語尾は短いし、無駄な形容は少ない。「僕」や他の登場人物が延々と続くミルカの話に辟易するような描写も見られない。

テトラも「元気少女」言う設定なのは良いとして、主人公が「元気少女」と形容し続ける以外に描写の方法は無いものか。「両手を顔の前でぶんぶん振った」「じたばたする」のような動作が大きい事を示す描写があるのだが、漫画やアニメのキャラクターの表現を描写している気がして来る。元気な割りにはあっさり拗ねるし。

後輩のテトラとキャラクターの被る従妹のユーリに至っては中学生設定のはずだが、「~にゃ」「~にゃい」と言う語尾を多用するのだが、Twitterでそういう発言をしているジャーナリストの江川紹子氏を思い出し、むしろ中年女性に思えてくる。アニメの絵ではないのに、高校生のリサの髪の色が「赤」は無いわ。おばさんやん。

場面の描写も薄い感じがする。「僕」に「ちょっと幻想的だ。」だと言わせても、それが単なる反射光とだけ形容されていたりする。また、「僕たちはそんな時間を─かけがえのない時間を楽しむ」とリアルタイムに未来から振り返った自分を考える高校生の「僕」に、やはり違和感を感じざるをえない。

最後の方でガロアの生涯に関して感情的になるミルカが描写されるわけだが、ミルカがガロアを敬愛して止まないという前フリが不足しているので強い唐突感がある。ただの危ない人に思えてしまう。むしろ狂人。天才ぶりを称えるときに高揚しているような表現が欲しいところであった。

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