2013年9月8日日曜日

奴隷は仕事をサボらないし、奴隷主の命令も受けないのか?

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経済評論家の池田信夫氏が『「正社員」という奴隷制』と言う論理的に破綻しているエントリーを書いている。濱口氏がつっ込むかなと思っていたら、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の法制史の枕に建設的に活用していた。代わりにボケにつっ込んでみたい。

池田信夫氏の議論の問題は色々とある*1のだが、特に気になるのは池田氏が嫌いな日本型雇用(メンバーシップ型)に奴隷制と言うネガティブな単語を付けようと無理をしていることだ。しかし池田氏の議論では、メンバーシップ型の方が優れている事になっている。

欧米型の雇用契約はプリンシパルとエージェントの主従関係にもとづいているので、主人の目を盗んで怠けるエージェンシー問題が重要だが、日本は仕事に手を抜くと「村八分」になって左遷される長期的関係で強く動機づけられているので、労働者は自発的に長時間労働し、エージェンシー問題はほとんど発生しない。

労働者がサボる事が無いのであれば、生産面から見ると理想的だ。池田信夫氏は「高給を取ってろくに働いてない中高年管理職」が問題だから解雇規制を緩和しろと言っていた*2が、日本型雇用は問題を解決していた!

さらに池田信夫氏は、前段で資本主義は資本家に圧倒的に有利な制度だと主張しつつ、日本型雇用はそうではないとも主張している。

これに対して、日本のメンバーシップ(会員権)型の雇用は、サラリーマン経営者と労働者の共同体であり、彼らに命令する資本家がいない(個人株主の影響力は最小化されている)。

労働者が資本家に無理な命令をされる事も無いのであれば、労働者の権利は守られていると言えるであろう。日本型雇用は、マルクス経済学が主張する資本主義の問題*3を解決していた!

池田信夫氏の議論をまとめると、日本型雇用では労働者は仕事をサボらないし、資本家の命令もほとんど受けない。この日本型雇用の労働者を奴隷と呼ぶには、奴隷は仕事をサボらない*4し、奴隷主の命令も受けない事が前提になる。

*1例えば奴隷制、メンバーシップ、オーナーシップ、日本型雇用、欧米型雇用の使い方を見てみよう。

  1. メンバーシップの反対がオーナーシップ(第一段落)
  2. オーナーシップと奴隷制は同じ(第二段落)
  3. 日本型雇用=メンバーシップ(第四段落)
  4. 日本型雇用は奴隷制(第七段落)

(1)と(2)から、メンバーシップは奴隷制たりえない。しかし、(3)と(4)からメンバーシップは奴隷制と主張している。これは明らかに論理的に破綻している。

*2ノンワーキングリッチと解雇規制ならびに日本的雇用慣行について - Togetter

*3資本家が強い交渉力を持って労働者から搾取すると言うのがマルクス経済学の大雑把な議論だと思うが、池田信夫氏の議論は搾取が命令に置き換わっているだけになっている。一般の経済学的な議論でこれを主張するには、労働市場に雇用主は一つしかいないか、雇用主が結託して独占力を維持していると言う強い仮定が必要になる。

*4一般のプリンシパルとエージェントの議論から言えば、奴隷は頑張って仕事をしても見返りが無いので、見張っていないとサボる。

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