2012年11月26日月曜日

景気対策なんて意味がない?

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ゼロかイチかの議論は、デジタル世代の高齢者の特徴なのかも知れない。経済評論家の池田信夫氏が『インフレ目標を「景気対策」と考えている人がいるようだが、それは間違いだ』と主張している(BLOGOS)。流動性の罠にはまっているのに?(関連記事:池田信夫の錯乱 ─ デフレの弊害はあるの無いの?

ノーベル賞経済学者のクルッグマンのIt's ba+k!論文は、現在の通貨供給量を増やしても意味が無いとき、将来の通貨供給量を増やす約束として、インフレ目標政策が景気対策になる事を主張している(関連記事:クルッグマン論文を使って、池田信夫を応援する)。Eggertsson and Woodford(2003)は、これを経済学的により厳密に分析している。

「短期的な景気対策は無意味だ」と主張もしているが、Bernanke and Gertler(1989)やKiyotaki and Moore(1997)ではマクロ経済ショックが長引く理由を動学的一般均衡モデルで説明し、景気対策の必要性を議論している(関連記事:マクロ経済ショックが長引くある理由)。

これらの論文は全て動学モデルだし、クルッグマンのそれ以外は一般均衡モデルとなっている。他にも流動性の罠からの脱出方法として、消費税を段階的に上げていくモデル(Correia et al.(2011))や、財政政策を用いるべきだと言うモデル(Correia, Farhi, Nicolini and Teles(2011))も開発されている。初歩的なIS-LM分析だけが、景気対策の有効性を示すわけではない。また、今の日本は流動性の罠にあるのは明らかなので、そこからの脱出は意味がある。

問題はインフレ目標政策ではなく、その導入に伴い「無制限に緩和をしていく」事が、現在の量的緩和を意味する限りは効果が無さそう*1で、かつある種のリスクをもつと言う事だ(関連記事:日銀がリフレーション政策を嫌がる理由)。特に日銀法の改正などを伴う場合は、将来に波乱が起きるかも知れない(関連記事:政治がインフレ目標値を定めてはいけない理由)。

*1理論的に示される流動性の罠から脱出方法と外れているように見える。ただし、Negro, Eggertsson, Ferrero and Kiyotaki(2009)は意味があると指摘しているが、札割れにより量的緩和の拡大が困難な現在の日本の状況を説明するものかは議論の余地があるであろう。

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