2012年11月13日火曜日

大学の数は減らすべき? ─ 韓国の事情から考える

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大学進学率は向上しているものの、少子化もあって、大学の数が多すぎると言う認識は強くあるようだ。アンケート調査では大学の数を減らすべきだと考えている人は多い*1

実際に昨今の無名大学は学生を確保するのが難しいのか、出稼ぎ目的の留学生に依存して問題になるケースもあった。山口福祉文化大の東京サテライトは、授業料の未納や授業への欠席が続いた110人を除籍処分にしたが、そのうち70人は行方不明、在籍者606名のうち605名が留学生だったと言う(読売新聞)。

しかし、関西学院大学社会学部教授の金明秀氏が、日本の大学進学率が韓国などと比較して低いと知ったら、世論も変わると主張している。事実誤認があるような気がしてならない。

まず、制度上の問題だが、韓国では専門学校で教える内容も短期大学で教えているため、統計上は韓国の方が大学進学率が高くなってしまう。次に、韓国の大学進学率は3年連続で落ち込み72.5%になっている(中央日報)ので、日本の大学・専門学校進学率75%と比較すると実はまだ低い。

韓国の大学進学率は近年に急激に向上したのだが、大卒者の就職率は2012年で59.5%と低い水準になっており、就職できた人も海外に出る人が多いようだ(図録▽大学進学率の国際比較, 中央日報)。リーマンショック後に、大学進学率が急激に低下しているのは、社会が必要とするよりも教育資本が大きすぎた為とも言えなくもない。

何はともあれ韓国の事例を持ち出しても、現在の日本の大学数適正議論には影響は無いであろう。教育投資が過剰だと、やはり弊害が発生するようにしか思えないからだ。

なお、大学は教育機関であると同時に研究機関でもあり、大学あたりの学生数や教職員数を増減する選択肢もあるため、学生数や進学率だけで適正数を議論するのは妥当ではない。また政府規制で教育サービスの量を決めるべきのか、参入退出の自由な自由競争で決めるべきのかも、議論の余地はあるように思われる。

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