2012年4月26日木曜日

結婚市場の失敗?

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シノドスで社会学者の筒井淳也氏が少子化の原因を、女性が結婚しようにも(安定した将来を期待できる)相手がいないために婚姻率が低下したためだと主張している。男性の所得で家計を支えようとする社会制度と、近年の男性の経済状態の悪化を理由にしたいらしいが、マクロ統計と数字があわない。

女性の社会進出による養育と仕事の両立が可能になって来ていると言う指摘は、第4回全国家庭動向調査によると出産後の再就業率が74.6%に達するので異論は無い。未婚率が1970年代から上昇しているのは確かだ(図録▽未婚率の推移)。日本の特殊出生率はオイルショック後の1970年代後半から低下傾向が始まるのも確かだ(内閣府)。しかし、非正規雇用が急激に増えたのは2002年以降で、未婚率の上昇と特殊出生率の低下とは時期があわない。

統計から考えると、筒井氏の主張は受け入れ難い。『この事実は山田昌弘氏を含む一部論者のあいだでは意識されてきたし、かなり信頼性の高い全国調査データを使った実証研究によっても支持されている』とあるので、何か根拠はあるのだと思うが、残念ながら文献が明示されていないのでそれを確認する事はできなかった。

また、筒井氏の指摘は収入を見ているものの、支出や価格を見ていないので違和感がある。2007年の都道府県別データで出生率決定要因を分析すると、賃金や非正規雇用率と言うよりは、養育費(正確には住居費や娯楽費)の影響が強いので、無視して良い要因だとも思えない。社会学者の間では家計の経済状況を体系的に考察する習慣が無いのであろうか。

結婚市場の失敗と言うと、お見合いの減少を恋愛結婚で埋められていないと言う話や、今は性的パートナーを確保するのに結婚は不要になったと言う話もある。筒井氏も『人びとが思い描く結婚のかたちは「フルタイム夫婦」あるいは「フルタイム男性との結婚」であり、そこにミスマッチが生じる』と指摘しているので、そちらの方に研究が進んでいくのかも知れない。理想を捨て、現実に生きよと言うだけだが。

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